保護者対応の失敗はなぜ起こる? シチュエーション別対処法

保護者対応の失敗はなぜ起こる? シチュエーション別対処法

「保護者対応が苦手」「クレームの対処方法が分からない」……
保護者対応って難しいですよね。苦手な保育士も少なくありません。
そこで今回は、保育士の保護者対応のリアルな失敗談からトラブルの原因、シチュエーション別の対処方法を解説します。保育士が保護者対応で心がけるべきポイントをまとめて紹介するので、今後の保護者対応の際の参考として、ぜひチェックしてください。

保護者対応 こんな失敗談

「保護者対応が怖い!」「苦手!」
保育士がそう感じてしまうのは、数々の「失敗した体験」を耳にするからだと思います。
人の振り見て我が振り直せ、なんて言いますけれども、実際に現場で働く保育士による保護者対応の失敗例を5つ紹介しますので、参考にしてくださいね。

保護者対応の失敗例
遅刻を注意したらクレームの電話が!

クラスのSちゃんの登園時間がいつも遅かったので、Sちゃんのお母さんに「もう少し早く登園できませんか?」とたずねたところ、翌日、私宛にクレームの電話がありました。
私は業務中だったので、主任の保育士が対応してくれたのですが、
「こちらは生まれたばかりの下の子の面倒を見ながら、家事に用事に忙しい! もう少しこちらの気持ちを考えてほしい!
と言っていたそうです。

保育士Aさん(保育士2年目/3歳児クラス担当)

Sちゃんが遅刻しがちだったのは、お母さんが下のお子さんのお世話や家事で余裕がなかったからだったようですね。その背景を知らず、保育士側が一方的に要望を伝えてしまったのが、今回のクレームの原因でしょう。

保護者対応の失敗例
言葉の選び方を間違えて反感を買った!

「うちの子、発達が遅れているんでしょうか?」
担当クラスのTちゃんのお母さんから相談を受けました。
Tちゃんは周りの子どもと比較して、成長が緩やかだったので、
「○○ちゃんはほかの子よりも○○が苦手で…」
「早く■■くんみたいに○○できるといいですね」
と言葉がけをしたのですが、あとで「あの言葉は不適切だと思います」と書かれた手紙が。深く反省しました……。

保育士Bさん(保育士1年目/0・1歳児クラス担当)

同じクラスの子どもよりも成長スピードが緩やかだったとしても、ほかの子どもと比較するような発言はNGです。成長スピードには個人差があって当たり前。
今回の場合は「発達が遅れている」という事実よりも、Tちゃんが成長したところを伝えてTちゃんのお母さんを安心させる言葉がけができればよかったですね。

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保護者対応の失敗例
子ども同士のケンカに片方の味方をして

担当するクラスの子どもであるKちゃんがPちゃんにかみついてしまい、双方の保護者に事情を話すことになりました。
私はKちゃんに問題があると思い込んで話してしまったのですが、あとになって、Kちゃんの行動には、Pちゃんにおもちゃを取られたからという理由があることがわかって……
後日、真相を知ったKちゃんのお母さんから、
先におもちゃを取って意地悪をしたのは相手の子どもの方ですよね!
とお怒りの電話をいただいてしまいました。

保育士Cさん(保育士1年目/2歳児担当)

子ども同士のケンカの際、時間の都合で子どもの話をじっくり聞けずに、トラブルの真相をつかみきれないこともあるでしょう。
しかし、保育士は常に中立の立場で状況を把握・分析しなければなりません。
子どもの話を傾聴するとともに、トラブルの根本的な原因や事実をしっかりと保護者に伝えることが大切です。

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子どもがけんかを始めたらどうすればいい?

保育士と保護者のトラブルの根本的な問題とは?

保護者との関係に行き詰まったときは、まずその根本的な原因から探りましょう。
次に解説するのは、保育士と保護者のトラブルの原因、保育士が無意識にしがちなNG行動などです。

保護者トラブルの原因
保育士のコミュニケーション不足

「ある日突然、保護者からクレームの電話が来た」
「保護者から相談してもらえない」
それはコミュニケーション不足が原因なのかもしれません。

保護者が育児や子どもの保育園での生活について困っていても、
「○○先生はあまり話したことがないから、相談しにくい」
と遠慮してしまうことがあります。
その結果、不満を溜めこんである日ついに爆発させたり、担任保育士ではなく主任やベテラン保育士に告げ口したりすることにつながるのです。
毎日、挨拶や世間話だけでも、保護者一人ひとりと会話する習慣を身につけておきましょう。
その小さな積み重ねが、信頼関係を築くきっかけになりますよ!

保護者トラブルの原因
保育士の一方的で断言的な発言

「子どもに○○させないでください」
「~してください」
そういう一方的かつ断言的な発言は、控えた方がよいでしょう。
保護者の行動には、さまざまな背景があります。

  • 子どもの送迎が遅れてしまう…育児や家事、仕事に追われて忙しい
  • 子ども自身に身の回りのことをやらせない…保護者がワンオペ育児で心や時間に余裕がなく、子どもの身の回りのことをすべて保護者が代行してしまう
  • 子どもを夜早く寝かせない…退勤時間が遅く、子どもを早く寝かしつけるのが難しい

保育士の言い分が正しかったとしても、保護者の気持ちや背景を考えず、一方的に要望を突き付けるのはNGです。
まずは、保護者から事情を聴いてから「今後どうしていくか」を話し合いましょう。

保護者トラブルの原因
マイナスな言い回しや発言

次のようなマイナスな言い回しや発言も、なるべく避けましょう。

  • ○○ちゃんは発達が遅い
  • ○○ちゃんは今日も~できなかった
  • 今日は珍しくお迎えが早いですね
  • ○○ちゃんはいつも寂しがっています

保育士として、子どもの良いところだけでなく気になる部分も保護者に伝えなければならないこともあると思います。
でも、子どもや保護者を見下すような言い回しや、保護者の気持ちを考えていないような発言をすると、保護者からの信頼を失ってしまうことになりかねません。
「○○ちゃんは、今日、~を頑張っていましたよ!」
というようなできるだけポジティブなニュアンスの言葉や、
「最近、お仕事忙しいようですね。体調いかがですか? 何かあったらご相談くださいね」
というような、保護者を気遣う言葉を心がけてください。

シチュエーション別の保護者対応法

「保護者対応」と一口に言っても、対応方法はシチュエーションによって異なります。
保護者対応に悩む保育士のために、シチュエーション別の対処方法をピックアップしてみました。
それぞれの対処方法のポイントをチェックしていきましょう。

こんなときの保護者対応
子ども同士のケンカのとき

子ども同士がケンカした場合は、次のような手順で対応します。

  1. まずは子どもの安全の確保(必要であれば手当や病院への搬送)
  2. 子どもからトラブルの原因や流れ、動機などを聞く
  3. 子ども同士の和解を促す
  4. トラブルになった子ども2人の保護者に連絡(加害者・被害者の名は明かさない)
  5. ほかの保育士と情報共有

トラブルが複雑化してしまうことを防ぐために、保護者から加害者・被害者の名を聞かれても明かさないのが基本です。
客観的な状況説明をし、トラブルを未然に防げなかったことを謝罪して誠意を見せるのがポイントです。

こんなときの保護者対応
子どものけがや事故にまつわるトラブル

子どものけがや事故にまつわるトラブルの場合は、次のような手順で対応します。

  1. まずは子どもの安全の確保(必要であれば手当や病院への搬送)
  2. 子どもからトラブルの原因や経緯などを聞く
  3. 保護者に連絡、事情を説明
  4. ほかの保育士と情報共有

保育園で子どもがケガをすることは、しょっちゅう起こることで、珍しいことではありません。
でも、子どもがケガを負ってしまったこと、そしてそれを保育士が未然に防げなかったことは事実です。
「子どものケガを100%防ぐことは難しい」という点を伝えながらも、その事実について謝罪しましょう。

こんなときの保護者対応
イベントや行事にまつわるクレーム

「お遊戯会でうちの子どもを主役にしてほしい」
「イベントが地味すぎる」
イベントや行事にまつわるそんなクレームへの対応は、次のような手順で。

  1. 保護者から不満点をヒアリング
  2. 子どもが納得しているかどうか確認
  3. 行事の主旨や、その保護者の子どもの頑張りを伝える
  4. 「今後の参考にさせていただきます」と前向きな一言を添える

イベントや行事にまつわるクレームに対しては、まず、その保護者の子どもが配役やイベント内容に満足しているかどうかを確かめましょう。
子どもが特に不満を抱いていないなら、保護者も納得しやすいはずです。
「保護者の方々に楽しんでもらうために、子どもたちも毎日頑張って練習していますよ」
子どもたちの頑張りをそのように伝えれば、行事に対するマイナス印象を払拭できる可能性もあります。
保護者の意見から吸収できる部分はしっかりと吸収して、「今後の参考にさせていただきます」という前向きなひとことを最後に添えましょう。

保護者と真摯に向き合って信頼関係を築こう!

保護者対応の失敗はなぜ起こる?
保育士にとって、保護者対応は、保護者との信頼を築き上げる大切なプロセスです。
保護者の目線に立ち、できるだけポジティブなニュアンスの言葉で対応していきましょう。
決して「言葉でごまかす」ということを勧めているわけではありません。言葉で適切に伝えることはとても大切だということを忘れないようにしてください。

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