子どもがけんかを始めたらどうすればいい?

子どもがけんかを始めたらどうすればいい?

保育園は集団生活のため、子ども同士がけんかをしてしまうこともあります。保育士になりたての方や、新しいクラスを受け持った方などは、けんかの仲裁をうまくできず、悩んでしまうこともあるかもしれません。
今回は、そんなときに参考にしてほしい、子ども同士がけんかしたときの対応のコツです。

基本的に子ども同士のけんかは見守る!

けんかというと、イコール、すぐに止めなくちゃ!と思っていませんか?
けんかはよくない!と決めつけてしまう前に、子どもが社会性を見に付ける上で重要なプロセスだということを知っておきましょう。
相手に自分の気持ちをぶつけたり、話し合ったりすることで、子どもはコミュニケーション能力や「自分で問題を解決していく力」を身につけていきます。
さらに、物事が何でも自分の思い通りになるわけではない、ということを理解することによって、感情をコントロールしたり、妥協点を見つけたり、「情緒面の発達」も見られるようになります。
ですから、子ども同士のけんかは過度に仲介せず、できるだけ見守りましょう。
保育士がすぐにけんかに介入して、無理やり「ごめんね」「いいよ」ときれいに片づけてしまっても、子どもの気持ちは納得していないかもしれません。子どもの成長を妨げてしまうことになりかねないのです。
まずは、子ども同士に話し合う機会を設けて、すぐに駆け付けられる場所で見守りましょう。

保育士が仲裁に入った方がいい場合もある

もちろん、保育士が仲裁に入った方がいい場合もあります。

  • 子ども同士がもみ合いになっている
  • 子どもが保育士へ相談してきた
  • 子どもが泣いている
  • 片方の子どもが一方的に相手の子どもを責めている
  • 子どもが興奮して口調が乱暴になっている

こんな場合は、保育士が仲裁に入らなければなりません。
とくに、子どもがけがをしそうなときは要注意です。
けんかは子どもの成長に必要なことですが、その当人である子どもの身体に危険が及ぶ場合は、話が別です。まずは子どもの安全を確保し、相手を傷つける行為が間違っていることをしっかり伝えましょう。

子ども同士がけんかしたときの対応のコツ

保育士の仲裁が必要なけんかは、すぐに問題を解決するのではなく、以下に説明する一つひとつの手順を丁寧に行いましょう。
それでは、子ども同士のけんかの対応のコツ、全体の流れを解説します!

まずは子どもがけがをしていないか確認

けんかをしている子どもたちの元へ駆けつけたら、まずは二人ともけがをしていないかを確認しましょう。けんかになるとついつい感情的になりますから、手が出てしまうこともあります。子どもがけがをしていたら、子ども同士を引き離し、適切な処置を施しましょう。
けがをした子どもに水道で傷口を洗いに行くよう促したり、傷口に絆創膏を貼ったりして、けがが悪化しないように処置をします。
周りにほかの保育士がいる場合は、けがをした子どもを任せ、自分はけがをさせてしまった子どもの対応に移ってもかまいません。

子どもの気持ちを落ち着かせる

子どもたちの感情が高ぶっていて、冷静に話し合いができない場合は、気持ちを落ち着かせるようにしましょう。興奮したままで話し合いをしても、保育士の言葉が耳に入っていかない可能性があるからです。
子どもの気持ちが落ち着くまで少し待ったり、
「先生来たから大丈夫だよ。ちょっとお話しようか」
と穏やかに声をかけたりしましょう。
ほかの子どもが周りに集まってきている場合は、当事者である子どもを離れた場所へ連れて行った方が、落ち着いて話すことができます。
子どもがなかなか落ち着いてくれない場合は、双方を引き離し、ひとりずつ話を聞くのもいいでしょう。冷静に話し合える環境をうまく作ることができれば、子どもは保育士の言葉を聞き入れてくれるはずです。

両者の話を聞き、情報を整理する

子どもが落ち着いたら、両者の言い分をじっくり聞いて、情報を把握しましょう。
このとき、たとえ一方だけが悪いように見えたとしても、どちらかの肩を持ってしまうのは絶対にNGです。必ず両者の話を聞き、公平な視点で状況を整理しましょう。

ひとりずつ順番に言い分を聞き、「けんかの原因」を探ります。それを聞いていたもう一方の子どもが「違うよ!」などと口を挟んでくることもあるかもしれません。そんなときは、
「今は○○ちゃんが話しているからね。後でちゃんと聞くから待ってね」
とやんわり断りを入れましょう。
両者の意見を聞いたら、
「はじめは○○ちゃんと△△ちゃんは一緒に遊んでいたら、途中で□□ちゃんが別の場所に行っちゃったんだね」
というように、話を要約して子どもに伝えます。
けんかの経緯を分かりやすく言葉にすることで、子どもが状況を理解しやすくなります。

子どもの気持ちを代弁し共感する

けんかの経緯を整理したら、次は両者の気持ちを汲み取り、共感しましょう。
中には、自分の気持ちを言葉で表現するのが苦手だったり、まだコミュケーション能力が発達途中だったりする子どもがいます。
その場合は、保育士が子どもの感情を代弁してください。
「~が嫌だったんだね」
「悲しかったんだね」
これによって、子どものモヤモヤした気持ちが和らぎ、話が伝わりやすくなります。
4~5歳児なら自分の気持ちをある程度言葉で表せるようになっています。
「そのとき、どんな気持ちだった?」
などとたずねて、その後で共感するのもよいでしょう。
お互いの気持ちを子どもが知れば、相手の視点でものごとを考えられるようになります。
相手に対する申し訳なさも生まれるでしょう。

問題点を指摘して、今後どうすべきか問いかける

最後は両者の問題点を指摘し、その後で、「どうすればよかったのか」「これからどうするのか」ということを問いかけます。
「□□ちゃんは○○ちゃんにぶたれて痛かったんだって。人をぶつのはいけないことだよね」
そう声をかけて、子どもが自然に謝れるように促します。
ここでのポイントは、「ほら、謝って!」と強制するのではなく、子どもが自分で謝るのを待つことです。無理やり誤らせても根本的な解決にはなりません。
子どもが謝ることができたら、
「お友達を叩くんじゃなくて、どうすればおもちゃを貸してもらえたと思う?」
「これから、お友達におもちゃを貸してもらえなかったときは、どうしたらいいかな?」
というふうに尋ねましょう。
そうすることで、子どもの「問題を考える力」「解決をする力」が育ちます。
子どもが答えを導けたら
「自分で考えられてえらいね!」
と褒めたり、
「もう同じことはしないようにしようね」
と声をかけ、話し合いを気持ちよく終われるようにしましょう。

子ども同士のけんか、保護者にはどう伝える?

子どもがけんかをしてしまったときは、保護者への連絡が必要です。
保育園によって対応の仕方は異なりますが、連絡帳に書いたり、お迎えのときに伝えたりすることが多いと思います。保育士になりたての方や、保護者との関係性がまだ築けていない保育士は、「どう伝えたらいいか分からない……」と悩んでしまうこともあるかもしれません。
子ども同士がけんかしたときの、保護者への伝え方のポイントも解説しておきますね。

けんかの経緯を詳しく報告

まずは、けんかの経緯を詳しく説明しましょう。けんかの原因、子どもがとった行動、仲直りの有無、話せることはすべて話します。
くわしく経緯を話すことで、保護者の疑問や不安が解消されるからです。
ちょっとした言い合いをする程度で、すでに仲直りをして一緒に遊んでいるような場合は、わざわざ保護者に連絡しなくてもいいケースもあります。保育園によって対応の仕方が異なりますので、迷ったときは先輩保育士に相談してみましょう。

けががあったときは誠意を込めて謝罪する

けんかが原因で子どもがけがをしてしまった場合は、誠意を込めて保護者に謝罪しましょう。基本的に、保育園で起こったことはすべて保育園側の責任になります。
まず子どものけがを未然に防げなかったことに対して謝罪し、「今後、同じようなことが起こらないように改善してまいります」という前向きな言葉を添えましょう。
それがたとえ防ぎようのないことだったとしても、子どもがけがを負ってしまったことには変わりありません。保護者にしっかり謝罪と反省の言葉を伝えれば、真摯な気持ちはきと伝わるはずです。

保護者同士のトラブルを避けるため、相手の子どもの名前は伏せておく

これも保育園によって方針が異なることですが、子ども同士のけんかの際は、相手の子どもの名前は伏せておいた方がいい場合があります。これは、相手の子どもの名前を伝えてしまうと、保護者同士のトラブルに発展する可能性があるからです。「うちの子には、もうあの子を近づけないでください!」というクレームが保育園側に来ることもあります。
もちろん、大きなけがの場合などには伝えるべきですが、基本的には伏せておくことも考えましょう。

けんかは成長に欠かせない「通過点」

子どもの同士のけんかに遭遇すると、ついつい、「どうしよう」「嫌だなあ」というマイナスな印象にとらわれる保育士も多いでしょう。
でも、けんかというのは子どもの成長に欠かせない「通過点」です。
子どもの様子を見守り、必要であれば仲裁に入り、保護者への連絡もしっかり行い、子どもの成長を促していきましょう。

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