テクノロジーは保育の価値に置き換えられるか
たとえば午睡チェックのアプリやシステムがあります。
一般の方は、子どもがお昼寝している時間に休憩すればいいと思うかもしれませんが、0歳児の場合などは5分間隔でつぶさに見ていないといけない。呼吸が止まったりしてしまうので、体がうつ伏せになっていないか、寝返りうっていたら直したり、呼吸バイタルサインを把握したりというチェックを5分ごとにするので、実際には休憩の時間などおいそれととれないわけです。
相模原のぽっかぽっかナーサリー相模原園では、システムを導入して、子どもにIoT機器のセンサーをつけています。
センサーが体の動きやバイタルサインを検知して、タブレット端末にリアルタイムに情報を発信するので、画面を見ていればいいわけです。
すぐさま駆けつけられる体制さえとれれば、これまでの保育の質を保って職員の負荷を軽くできる。よほど通信障害や停電などがないかぎりは正確で有効なようです。
たとえば写真販売などは昔に比べるとシステム導入が進んでいますね。
行事のたびに先生たちが撮った写真の注文を受けて焼き増しして送るのはけっこうな手間でしたが、今ではネットにアップして自動化されています。
それに対して、保護者との連絡帳など記録の多くは手書きで、重複している記録もありますし、定型的なものなら端末でタップしたり、プルダウンで選択するシステムに代えても差し支えないように思います。
結局、保育の質と表裏一体で、経営者の判断次第なんです。ICTを活用したら質が低下すると思っている方もまだ根強くいます。
保育者が子どもと1対1で温かく関わる手作り環境が絶対、という保護者の要求は根強い。保護者へのお便りも「やはり手書きの温もりが」「手書きのよさが」というのが始まって、なかなか進みません。
しかし、少なくとも安全安心が確保されていれば、四六時中、子どもと直接関わる必要はないかもしれません。
いくら子どもと向き合っていても、職員の表情が凝り固まって、何も楽しくない、ただ言われるがままに面倒を見ているのでは、形だけが整っているにすぎません。
労力に代わってテクノロジー活用による負担軽減を、保育の価値や質と置き換えられるかどうかが今問われていると思います。
保育事業者は戦後間もなくから設立されているところも多く、経営者の高齢化も進んでいおり、これから代替わりしてマインドが切り替わっていくと思います。
今のところは、いまだに人手でなければ意味がない、テクノロジーに頼るべきではないという向きが根強く、大きな溝になっています。
ただ、ICTを積極的に取り入れている事業者はまだまだレアケースで、ぽっかぽっかナーサリー 相模原園は職員が若く、リテラシーが備わっていることも大きいでしょうね。ベテランの先生方ばかりだと敬遠されてしまう。
もともと母体がIT会社で、園長同士とか、園長と担当役員とか、Zoomやチャットワークを使ってコミュニケーションしている園もあります。
そこでは在宅勤務も取り入れていますね。
保育の仕事は必ずしも園内でやらなければいけない仕事だけではありません。
たとえば季節に合わせたり行事で使ったりする室内装飾の制作物や衣装などの制作は、園内でなくてもできる。
情報セキュリティの面で差し支えない業務を在宅でお願いして、連絡はチャットワークやZoomを駆使する。
本当に保育士が手作業で時間をかけてやるべきなのは何か。
自前主義で、すべて自分たちでやることが前提になっているので、そこをうまく整理すればシステムを使うことにつながると思います。
保育所保育指針という 、小学校でいうところの学習指導要領のような国の指針があり、年に1度自治体の指導監査、立ち入り調査があり、チェックされます。
そういったことも深く考えていくときりがありません。
みんなでウンウン言いながら頭を使って考えなきゃいけないのか。
理想を言い出せば何十時間と時間をかけることになりますが、一定の議論を経ればいいというのであれば、職員10人分の意見が出たらその時点での計画や理念として立てて、あとは実践の中でブラッシュアップすればいいのではないか。
記録、計画を立てること自体が目的化している園もあると思います。きりのないところにきりをつけることが必要だと思いますよ。
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