子どもにきちんと伝わる叱り方のコツ

子どもにきちんと伝わる叱り方のコツ

保育士になりたての頃は、子どもに遠慮して、なかなか叱れないという人も多いと思います。
今回は、そんな人のために、子どもの伝わりやすい叱るときのコツをご紹介します。
基本的な心構えから、年齢別にポイントをピックアップしました。子どもの年齢に合わせた対応を参考にしてくださいね。

まずは「叱る」と「怒る」の違いを知ろう

まずは、「叱る」とはどういうことなのかを考えてみましょう。
「叱る」と「怒る」というのは、似ているようで、その中身はまったく異なります。
「叱る」は、子どもの成長や安全のために問題点を「指摘」し、正しい方向へ導いていくことです。
これに対して、「怒る」は、ただ子どもに自分の感情をぶつけている状態を指します。「〇〇してほしい」「〇〇をやめてほしい」という気持ちが大きいため、それに応えてくれない子どもに対し、イライラしたり残念に思ったりしてしまうのです。
ところが、子どもは保育士の期待に応えるだけの存在ではありません。小さくても立派な「1人の人間」です。感情をぶつけるだけでは、「何いけなかったのか」が伝わりません。
まずは保育士が冷静になって、「どうしたら子どもに伝わるのか」という部分に焦点を当てて、声かけを工夫しながら接していきましょう。

子どもを叱るときの基本的なポイントと流れ

何回も叱っているにも関わらず、子どもが同じことを繰り返してしまうときは、叱り方に問題があるのかもしれません。叱るときの基本的なアプローチ方法や流れをチェックして、子どもの心に響く叱り方を探っていきましょう。

まずは子どもの話を聞いて共感する

叱るときはまず、子どもの話をじっくり聞きましょう。
「なぜ、そうしたのか」
「どんな気持ちだったのか」
といったことを尋ねて、
「そっか。〇〇だったんだね」
と共感します。
保育士が話を聞いて共感するだけで、子どもの気持ちが落ち着いたり、客観的に自分のことが見られたりします。
子どもの言い分を聞かないまま、一方的に「ダメでしょ!」と怒ってしまうと、理解されない寂しさから、また同じことを繰り返してしまう可能性もあります。
まずは子どもの「気持ち」を受け止め、保育士は子どもの味方だということを、きちんと証明しましょう。子どももさらに心を開き、保育士の話にも耳を傾けてくれるはずです。

悪かったところを端的に指摘する

子どもから話を聞いたら、次は悪かったところを端的に指摘します。
「○○が〇〇なったり〇〇なったりすると○○だから、○○が〇〇……」
などと長々と話すのはNGです。一文が長いと、子どもが言葉を理解するのに時間がかかってしまいますし、肝心の伝えたいことが伝わりづらくなります。
「○○だから、〇〇はいけないよ」
そのようにキッパリと二言程度でまとめれば、子どもの頭に内容がスッと入りやすくなります。
もっと伝えたいことがあれば、言葉を区切ってから話すのがおすすめです。
例えば、子どもがふざけておもちゃを投げた場合は、
「おもちゃを投げたら、お友達の頭に当たっちゃうよ。そしたら痛くて泣いちゃうよね」
というふうに一文を短くして伝えましょう。

けんかのときは双方の言い分を聞く

子ども同士がけんかをしたときは、片方を味方するのではなく、双方の言い分を聞きましょう。
けんかの原因は、ほとんどの場合、双方にあります。「あなただけが悪い!」と事実がゆがめて解釈してしまうと、言われた子どもは「あの子も悪いのに、どうして自分だけ?」と思って、保育士に不信感を抱いてしまいます。
子ども同士が取っ組み合いをしそうであれば、まずは引き離し、子どもたちが落ち着いてから順番に話を聞いていきましょう。
その後は、上記で解説した通り、双方に「どうして〇〇したの?」とけんかの原因をたずね、「そっか。○○が嫌だったんだね」と共感します。
そして、「○○はいけないよ」と悪かったところを指摘したり、「それってやっていいことなのかな?」と諭したりしましょう。

解決策を子どもと話し合う

子どもの話を聞いて、悪い点を指摘した後は、解決策を話し合ってみましょう。
保育士が一方的に「これはダメだよ!」「もうしないでね!」と言って切り上げるだけでは、子どもの「考える力」は育ちません。
そのまま放っておくと、「先生にダメって言われたからやめよう」という認識になってしまいます。もちろんルールに従うことも大切ですが、根本的な問題をきちんと理解し、「どうすればいいのか」を自分で考えることによって、「判断力」が身に付きます。
「じゃあ、どうすればよかったかな?」
「これからは、どうすればいいと思う?」
そんなふうに子どもに改善点や解決策を問いかけてみましょう。

叱った後は気持ちをリセット!

叱った後は、子どもと何となく気まずくなってしまうこともあります。
叱った後は、なるべくいつも通り子どもと接しましょう。
気まずいからといって、子どもに対してよそよそしく接したり、怒りに感情を引きずったりすると、子どもが「先生は自分のことが嫌いなのかな?」と感じてしまう可能性があります。
子どもが「叱られた=嫌われた」という間違った解釈をしないように、叱るときはしっかり叱り、改善できたら褒めるなど、メリハリのある態度で接していきましょう。

子どもに伝わりやすい叱り方のコツ!【年齢別】

一言で「叱る」といっても、叱り方の細かい部分は年齢によって変える必要があります。
言葉の理解力や社会性の発達度合いは、子どもの年齢によって異なります。
それでは、1歳児・2~3歳児・4~5歳児、それぞれの年齢に合わせた叱り方のコツをチェックしていきましょう。

【1歳児の叱り方】まずは安全確保!それから「気持ちを代弁」or「いつもと違う雰囲気で注意」

1歳児はまだ「これはしてはいけない」「これはしてもいい」という社会性が身に付いていません。さらに、好奇心がさかんな時期でもあるため、まずは子どもに危険が及ばない環境を作りましょう。
触ったら危ないものは子どもの手に届かないところへ保管し、野外活動中は子どもが道路へ飛び出さないよう、つねに目を光らせておきます。
ただ、1歳児後半にもなると感情がハッキリしてきてくるため、ダダをこねたり、怒りに任せて物を投げたりすることもあります。そんなときは、まず、「○○が嫌だったんだね」「もっと○○したかったんだね」と子どもの気持ちを代弁してみましょう。
1歳児は、まだ自分の気持ちを言葉に表すことが難しいので、保育士が気持ちを代弁し、共感することで、子どもの気持ちが落ち着きます。困った行動もやめてくれるかもしれません。
何回注意してもやめてくれないときは、いつもと違った雰囲気で声をかけるのもおすすめです。子どもがいけないことをしたら、顔を少しムッとさせて「怒った顔」を作ってみましょう。
これは、言語理解が発達途中の1歳児には、「言葉」よりも「視覚」で訴える方が伝わりやすいからです。いつもと違う様子の保育士を見て、子どもも「これはしてはいけないんだな」という判断が少しずつ身につくでしょう。

【2歳児の叱り方】「本当にしてはいけないこと」を伝えたら、必要以上に声かけしない

2歳児に対しては、
「命に関わる危険な行動」
「周りの子どもに危害を加える」
この2点を行った場合のみ、じっくり向き合い、そのほかの場合は必要以上に声かけしないのがポイントです。
「イヤイヤ期」と呼ばれる2歳頃は、自分の「○○したい!」という欲求と、「○○しなくてはならない」というルールの狭間で、心が揺れ動いています。何をするにも駄々をこねたり、ちょっとしたことでへそを曲げたりするため、その都度叱っていたらきりがありません。子どもの側も、叱られてばかりだと叱られることに慣れてしまい、自分の行動を振り返らなくなってしまいます。
そのため、子どもが「本当にしてはいけないこと」をしたときだけは、とことん向き合って叱るのが大切です。子どもが途中で泣いてしまってもへそを曲げてしまっても、決してあきらめず、繰り返し伝えていきましょう。

【3~5歳児の叱り方】感情に訴えかけるような声かけを

3~5歳児を叱るときは、感情に訴えかけるような声かけをするのがコツです。
ある程度の社会性が身に付き、善悪の判断もつきやすくなっているのが3~5歳児です。
叱ることがあるとするなら、子ども同士のけんかや、子どもの感情が高ぶってしまったがゆえのトラブルでしょう。
どちらも「子どもの感情」が軸になっているため、「○○はしちゃダメだよ」という基本的な叱り方では、子どもの心には響きません。
まずは、子どもの言い分を聞いて共感し、その次に、
「嫌な気持ちだったんだね。でもね、○○されたら、お友達も先生も悲しい気分になるよ」
「○○ちゃんは、○○されたらどんな気持ち?」
と、感情に訴えかけるような言葉や質問を投げかけてみましょう。
そうすることで、子どもが相手の立場に立ってものごとを考えられるようになります。

子どもにきちんと伝わる叱り方のコツ まとめ

叱ることは、子どもの成長にとって欠かせない重要なものです。
はじめはなかなか子どもが言うことを聞いてくれないので、ヤキモキすることもあると思いますが、根気よく接していけば、いつかきっと伝わります。
あきらめずに、愛情を持って接していきましょうね。

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