保育において、子どもとの関係性を深めるためには、言葉だけではなく、表情やジェスチャーといった「非言語コミュニケーション」も大切な要素になります。今回は、保育での「非言語コミュニケーション」の種類や重要性、効果的な実践方法を紹介します。
この記事のもくじ
非言語コミュニケーションとは?
非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション non-verbal communication)とは、言葉を使わないコミュニケーションのことです。
たとえば目線や表情、身振り・手振り、声のトーンや大きさ、相手との距離などのことですね。
私たちは、誰か人とが関わって「情報」を伝えるとき、主に言葉を使っていると思い込みがちですが、じつは「会話の雰囲気」「自分の印象」を表現するために、多くの非言語コミュニケーションを行っています。
表情やジェスチャーを取り入れることで、自分の感情を相手に伝えやすくなり、それによって信頼関係を築いているのです。
しっかりと信頼関係を築くことで、子どもはより健やかにのびのびと成長していきます。
非言語コミュニケーションは、子どもとの関係性を深める上でとても重要なのです。
非言語コミュニケーションの種類
上記したように、目線や表情などさまざまな非言語コミュニケーションがありますが、これらは大きく7つの種類に分類できます。
- 身体動作
- 身体特徴
- 接触行動
- 近言語
- プロクセミクス
- 人工物の使用
- 環境
それぞれの非言語コミュニケーションの特徴と、それを保育で活用するシーンについて紹介します。
身体動作
身体動作の例としては、目線や表情、身振り・手振り、仕草や姿勢などの「体の動き」が挙げられます。
- 子どもに笑顔で挨拶する
- 子どもと目を合わせて頷きながら話を聞く
- 両腕を上にあげて「大きい」と表現したり、人差し指を口に当てて「静かに」と伝えたりする
身体動作は、非言語コミュニケーションの中でもわかりやすいものです。子どもへの効果的なコミュニケーション方法になるでしょう。
身体特徴
身体特徴は服装や髪型、体型や体臭などの「外見・身体の特徴」のことです。
- 保育をするときの服装や髪型
- 肌・爪・歯などのお手入れ
身長が高い人を前にすると、なんとなく威圧感を感じたり、服装がだらしない人は不真面目に見えたり、ということがありますよね。
そのように、人の「印象」を左右する身体特徴も、非言語コミュニケーションのひとつです。
つまり、非言語コミュニケーションには必ずしも行動を伴わないものも含まれているのです。
接触行動
接触行動には握手や、ボディタッチ・ハグなどのスキンシップ要素が当てはまります。
- 乳児をあやすときにスキンシップをとる
- 握手やハグなどを取り入れた手遊び・ゲームをする
子どもとの関わる際にスキンシップをとると、愛情が伝わりやすくなります。
子どもの情緒の発達を促すという意味でも、接触行動は重要なコミュニケーションとなるでしょう。
近言語
近言語は「うん」「えぇ」など、直接的な意味を持たない言葉や、話すスピード、声の大きさやトーンなどを指します。
- 子どもの話を聞くときに相槌を打つ
- 明るい声音で、ゆっくり話す
近言語は、相手に関心をもっている度合いをアピールでき、話すときの雰囲気を作るカギになる言語コミュニケーションです。
プロクセミクス
プロクセミクスとは、1960年にアメリカの人類学者エドワード・ホールが提唱した近接空間学のことで、主に「人との距離のとり方」を指します。
簡単に言うと、相手との距離が近いければ親密な関係にある、と解釈したりすることです。
- 子どもと話すときに、身体の距離を近づける
距離のとり方は人それぞれですが、相手との関係性を踏まえて距離をとることが大切です。
人工物の使用
人工物とは、メイクやアクセサリー、バッグなどのことです。
- 子どもが親しみやすいような、ナチュラルなメイクをする
- 保育者としてふさわしい、落ち着いた服装を心がける
このように、外見だけでなく、メイクや使っている小物なども相手の印象を左右します。
子どもや保護者に「どんな人に見られたいか」ということを意識して、身に付けるものを選ぶのがいいでしょう。
環境
環境は、インテリアや照明、温度など、「コミュニケーションをとるときの環境」を指します。
- 読み聞かせの際は、カーテンを閉める
- 暖色系の照明で温かみのある雰囲気を演出する
和やかなムード、真剣なムードなど雰囲気を演出して、環境を変えてみると、効果的な保育ができます。
非言語コミュニケーションはなぜ保育で重要なのか
保護者など一般の人にとっては、保育士さんは子どもの前で表情が大げさだったり、身振り・手振りも大きくして話をしているように見えると思います。つまり多様な非言語コミュニケーションを駆使しているわけです。
ベテランの保育士さんほど、意識しなくてもそのようにしている人が多いでしょう。
そのような非言語コミュニケーションは、なぜ保育において重要なのでしょうか。
子どもに安心感を与えるから
不愛想で、話し方がぶっきらぼうで、清潔感のない保育士がいたら、きっと子どもは警戒心を抱くのではないでしょうか。
明るく、和やかな笑顔や優しい声音、親しみやすい外見は、それだけで子どもに安心感を与えます。
子どもに「この人は自分にとって安全な存在だ」「自分を受け入れてくれる人だ」という安心感を抱いてもらうことによって、子どもとの距離がぐんと縮まるはずです。
特に新しいクラスの担任になったときや、初対面の子どもと接するときは、非言語コミュニケーションを意識するのがおすすめです。
赤ちゃんの要求を示すものだから
非言語コミュニケーションは、何も保育士の専売特許ではありません。多かれ少なかれ、どんな大人や子どもでも無意識的に非言語コミュニケーションを取り入れています。
中でも、まだ言葉が話せない赤ちゃんのコミュニケーション手段は、非言語コミュニケーションです。
つまり、赤ちゃんの目線や手足の動き、声などは「お腹がすいた」「おむつを替えてほしい」「あのおもちゃを取ってほしい」といった赤ちゃんの要求を表しているわけです。
子どもに話の内容が伝わりやすくなるから
言葉だけで説明したのでは、子どもに伝わりにくいことがありますよね。
「楽しい」「悲しい」「怒っている」といった感情を表現するときは、それに合わせた表情を意識すると、感情が伝わりやすくなります。
また、身振りや手振りを交えることによって、言葉で表現している内容を補完することができあます。
非言語コミュニケーションは、言葉の認識がまだ難しい子どもとのコミュニケーションに効果的です。
保育で実践!効果的な非言語コミュニケーションの例
保育の場で効果的な非言語コミュニケーションの実践例を紹介します。
意識するだけでできる簡単なものなので、毎日の子どもとの関わりの中で、ぜひ実践してみてください。
「表情」は明るく!
子どもは大人が思うよりも、大人のことをよく見ているものです。
そこで、子どもと接するとき、まず「表情」を意識しましょう。明るく、和やかな表情を意識してください。
温かみのある色の服装や、落ち着いた印象の髪型をしてみると、より親近感を抱いてもらえるようになるでしょう。
さらに、子どもが好きなキャラクターものの小物を身に付ければ、「○○が好きな先生」という印象を子どもに与えることができるはずです。
子どもと目線を合わせる
大人は子どもよりも背が高いため、立ったまま話すと物理的な距離ができてしまいます。
そこで、子どもと話すときにはしゃがんで子どもと目線を合わせるようにしてください。そうするとお互いの表情がわかりやすくなります。
物理的に距離が近くなることで、無意識のうちに相手への関心をアピールすることになり、心の距離も縮められるでしょう。
身振り・手振りのリアクション、スキンシップを心がける
子どもを褒めるのにも、「すごいね」と言葉だけで伝えるのと、拍手をしながら高いトーンで「すごいね!」と伝えるのとでは大きく印象が違います。
「オーバーかも?」と思ってしまうほどの身振り・手振りでリアクションして、伝えたい感情をアピールしてください。
子どもの頭をなでたり、抱っこやハグをしたりすることも、子どもと愛着関係を築く上で重要なポイントです。
積極的にスキンシップをとって、子どもとの関係性を深めていきましょう。
保育で非言語コミュニケーションを積極的に取り入れよう!
目線や表情、身振り・手振り、声のトーンや大きさ、相手との距離といった非言語コミュニケーションは、子どもとの信頼関係を築くための重要な方法です。
子どもは視覚や聴覚などを大人よりも敏感に感じ取る傾向があります。言葉そのものより、雰囲気で伝えることを意識することが大きな効果を生みやすいのです。
明るい表情を心がける、目線を合わせる、身振り・手振りのリアクション、スキンシップをとるなど、記事で紹介した実践方法をぜひ普段の保育に取り入れてみてください。
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