子どもが給食を食べてくれないときの介助のコツ

給食を食べてくれない子どもの介助のコツ

「食事の指導」は、多くの保育士がぶつかる大きな悩みです。
保育園では、子どもが思うように給食を食べてくれなかったり、食べ物で遊び出してしまうこともあるからです。
そこで今回は、子どもが給食を食べない原因や、食事介助のコツをご紹介します!

食育のねらいを年齢ごとに解説!

「食事」は人間の生活習慣の中でも、とくに重要なものです。
子どもにとって、食事は体づくりの基礎となる要素であり、健康的に成長するためには欠かせないものです。
食事介助のコツを見る前に、まずは子どもの「食育」のねらいを年齢ごとに確認していきましょう。

0歳児における食育のねらい

0歳児の食育のねらいは「安心できる環境での食事」「食べる意欲を身に付ける」です。

  • 安心できる環境の中でミルクを飲んだり、離乳食を食べたりする
  • さまざまな食べ物を見て触れて、食べる意欲を身に付ける

子ども一人ひとりによって発達スピードは異なるため、子ども一人ひとりに合った援助を行うのがポイントです。

1歳児における食育のねらい

1歳児の食育のねらいは「心地よい生活」「食べ物との触れ合いによる意欲・関心の促進」です。

  • 食事を通して心地よい生活を送る
  • さまざまな食べ物を見たり、触ったり、スプーンやフォークで食べたりして、食事への意欲・関心を持つ

1歳は、手づかみのほか、スプーンやフォークで食べ物を食べる時期です。
「自分で食べる」という意欲を持ってもらえるように、保育士は声かけを工夫したり、食べ方の見本を見せたりしましょう。

2歳児における食育のねらい

2歳児の食事のねらいは「マナーや生活習慣を身に付ける」「みんなと食べる楽しさを味わう」です。

  • 食事のマナーや、食事の前後の生活習慣を身に付ける
  • 友達や保育士と一緒に食べる楽しさを味わう

2歳になると、保育士の介助がほとんど要らなくなります。
そのため、食器の持ち方や食べ方などの「食事のマナー」や、食前の手洗いや食後の歯磨きなど「食事の前後の生活習慣」も、少しずつ身につくようになります。
周りの子どもへの関心も高まるため、「○○ちゃんと食べたい!」といったこだわりが出てくることも。
子ども同士の衝突も増える時期のため、保育士が仲介役となって食事を進めていくのがコツです。

3~5歳児における食育のねらい

3~5歳児の食事のねらいは「食べ物の役割を理解する」「友情や信頼関係を築く」です。

  • 食べ物の種類や役割を理解して、健康的な食生活を送る
  • 友達や保育士との食事を通して、友情や信頼関係を築く

3~5歳児は、お肉・野菜・果物といった「食べ物の種類」を理解しはじめる時期です。
「野菜は体によいもの」「お肉を食べると元気になる」など、それぞれの食べ物が持つ役割も分かるようになるため、苦手な食べ物にも挑戦する時期でもあります。
また、食事をしながら団らんすることで、友達や保育士との情緒的なつながりも意識できるでしょう。

なぜ給食を食べてくれないの?

子どもが給食を食べてくれないときの介助のコツ「クラスの子どもが給食を食べてくれない」「食べ物で遊び出す」という悩みは、保育士なら誰もがぶつかる壁です。
子どもの食事を援助する際は、やみくもに食べるように促すのではなく、まず「原因」を推測することが大切です。
それでは、子どもが給食を食べないときに考えられる原因を5つご紹介しますね。

給食を食べてくれない原因
もともと好き嫌いが激しい

「あれもいや!これもいや!」と複数の食べ物を拒否する場合は、その子どもはもともと好き嫌いが激しいのかもしれません。
「前は食べていたのに、急に食べなくなった」という場合は、体調不良が原因の可能性もあるため、注意しなければなりませんが、もともと好き嫌いが激しい子どもの場合は、そこまで神経質になる必要はありません。
「今日はここまで食べればOK」と目標を設定して、少しずつ量を増やしていくのがおすすめです。

給食を食べてくれない原因
日中の活動量が少ない

子どもの日中の活動量が少ないと、お腹が空きにくくなってしまいます。
とくに雨の日は外での活動ができないため運動量が減り、食が進みにくくなります。さらに、活動量が少ないと給食も残し、お昼寝の時間にも寝てくれないという問題が起こりがちです。

給食を食べてくれない原因
寝不足・体調不良

「いつもは食べるのに、なぜか今日は食べてくれない」というときは、寝不足や体調不良を疑いましょう。
連絡帳を見て、機能の就寝時間や家庭での様子をチェックすれば、どこかに寝不足や体調不良のサインが見つかるはずです。
この場合は、子どもの体調をうかがいながら、食べられる量を進めていくのが適切です。
周りの保育士や保護者と相談しつつ、食べる量を決めていきましょう。

給食を食べてくれない原因
食事への関心が薄い

食べ物で遊んでしまう子どもや、給食の時間に立ち歩いてしまう子どもは、食事への関心が薄い傾向があります。
とくに0~1歳児は自分で食べることに慣れていないため、手づかみ食べの時期になると、食べ物で遊んだり、なかなか席に座ってくれなかったりする場面も多くなるでしょう。
この年齢は食事への正しい理解が難しい時期ですから、ある程度関心が薄いのは仕方ありませんが、そのまま放っておくと「食べる=遊び」「給食の時間も席につかなくてもいいんだ」という意識ができてしまいます。

給食を食べてくれない原因
食器や味付け、盛り付けなどが気に入らない

給食の時間、子どもが不機嫌になって食べないときは、食器や味付け、盛り付けなどが気に入らないことが原因かもしれません。
とくにイヤイヤ期の2歳児は、気に入らない部分がひとつでもあると、食べる気力をなくしてしまうこともあります。
中には「保育士が食べる“大人用の給食”が食べたい」という理由で、泣き出してしまう子どももいます。
子どもが不機嫌になったら、「○○したいの?」「○○が嫌なのかな?」と問いかけて、子どもの気持ちに寄り添ってみましょう。

食事介助の声かけ

子どもが給食を食べてくれないときの介助のコツ子どもの食べる意欲を育てるには “声かけ”が大切です。
ここでは、食が進まない子どものやる気を引き出す声かけの例を3つ取り上げます。

食事介護の声かけ例
「もぐもぐ」「ぱくん」:0~1歳児は擬音で促す

0~1歳には「擬音」を上手く使って、食事を援助しましょう。

    • 「もぐもぐ食べようね」
    • 「はい、ぱくん!」
    • 「かみかみおいしいね」

保育士が楽しげに声かけすることで、子どもが安心して食事できるようになります。
まずは「食べることって楽しいんだよ」と伝えられるよう、擬音を使いながら笑顔で援助していきましょう。

食事介護の声かけ例
「あ~おいしい!」:保育士が食べて見せる

保育士が給食を食べている姿を見て、「ぼくも(わたしも)食べたい!」とやる気が出る子どもは案外多いもの。
子どもがどうしても給食を食べてくれないときは、保育士が子どもの目の前で給食を食べて、「おいしい!」「○○ちゃんも食べてみて」と、子どもが思わずつられて食べてしまうようなリアクションを心がけてみましょう。

食事介護の声かけ例
「食べないならおしまいにしようね」:メリハリをつける

子どもが食べ物で遊んだり、席につかなかったりするときは、思い切って給食を終了させるのもひとつの方法です。
「食べないなら、もうおしまい!」と声をかけて食器を片づけはじめれば、「食べ物で遊ぶといけないんだ」「席に座らないと給食の時間が終わっちゃう」という意識が身につくようになります。

保育士による食事援助のコツ5選

子どもが給食を食べてくれないときの介助のコツ「子どもに給食を食べてほしい!」「もっと食事に関心を持ってほしい!」
そんな思いを抱く保育士のために、食事の援助のコツを5つまとめてみました。

食事の援助のコツ
別の食べ物と混ぜる

嫌いな食材だけを残す子どもがいる場合、別の食べ物と混ぜるのがおすすめです。
とくに0~1歳児の場合は、混ざっていることに気づかず、そのままスムーズに食べてくれることもあります。
もちろん、苦手なものをいつか自分から食べるようになることが理想ですが、0~1歳児の段階では、ご飯やお肉など、子どもが好きな食べ物の下に隠して食べてもらってもOKです。

食事の援助のコツ
日中の活動を増やす

日中の活動が増えれば、自然にお腹も空いてきます。
外遊びの際は、鬼ごっこやかけっこなど、たくさん体を動かす遊びを促しましょう。
雨の日は、マット運動やダンス、しっぽ取りゲームなど、室内でできる運動遊びを取り入れるのがおすすめです。

食事の援助のコツ
寝不足のときは時間を変え、体調不良のときは少なめの量に調節

子どもが寝不足や体調不良が原因で、給食を食べないときは、個人の体調に合った対応を考えましょう。
子どもがどうしても眠そうなら、食べる時間をずらして、お昼寝の時間を早めるのも一つの方法です。体調不良の場合、無理に食べさせると子どもが嘔吐する可能性もあります。
無理に食べさせるのではなく、少なめの量に調節しましょう。

食事の援助のコツ
クッキングや絵本、歌などで食べる意欲を育てる

保育園のイベントに、クッキングや野菜の栽培などの「食育」を取り入れるのもおすすめです。
自分たちで育てた食べ物や、みんなで作った料理なら、好き嫌いなく食べられる可能性もあります。
食事の大切さにも気つくことができる良い機会になります。
また、給食の前に「食事」がテーマの絵本や紙芝居を読んだり、食べ物に関係する手遊びや歌を歌ったりすれば、食べる意欲も高まるはずです。

食事の援助のコツ
盛り付け方を変えてみる

子どもがどうしても給食を食べないときは、盛り付けを変えてみましょう。
盛り付けを変えれば、食べ物の量が少なく見えますし、キレイに盛り付ければ子どものモチベーションもアップします。
また、子ども自身が盛り付けることで、「自分が決めた量だから、食べ切ろう」という気持ちを促せるでしょう。

無理矢理食べさせるのはNG

保育士になりたての頃は、食事の介助中に「全部食べさせないと!」と焦ってしまうこともありますよね。
たしかに食事は子どもの健康や成長に欠かせないものです。
ですが、無理矢理に食べさせてしまうと、子どもが「食事=苦痛」と思い込んでしまい、ますます給食を拒否するようになってしまう可能性もあります。
「今日はこんなに食べられたね!偉いね!」
と子どもを褒めたり、
「昨日はこれぐらい食べられたから、今日はもうちょっと増やしてみようか」
と励ましたりして、子どもが楽しく食べられるよう、声かけしていきましょう。

子どもが穏やかに食べられるように援助を

子どもが給食を食べてくれないときの介助のコツ
子どもが給食を食べてくれないときは、何らかの“原因”があります。
その原因に合わせて、声かけや指導をするのが、食事援助の大きなコツです。
今回ご紹介したポイントを、ぜひ現場でも生かしてみてください!

食育については、こちらの記事でも取り上げています。あわせて参考にしてください。

「食育」とは? 年齢別のポイントや実践例


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