風と日光という「自然」を活かした保育園の建築デザイン~建築家・井出敦史氏インタビュー

風と日光という「自然」を活かした保育園の建築デザイン~建築家・井出敦史氏インタビュー

コミュニケーションのとりやすさ、視認性、動線の明確化

井出敦史氏

保育ネクスト

住戸と保育園では、建築設計上、どんな違いがありますか。

まず、使用頻度ということですね。
一般住宅の玄関ドアの開閉は、多くても1日10~20回程度ですが、保育園ではその何十倍という頻度で開閉されますので、一般的な建材デザイン性よりも、強度の高い製品を選定することを心がけています。
また、施設を管理するスタッフが代替わりすることもあるので、誰にでも解りやすくメンテナンスできるように、点検口を多めに設置したり、配管を入り組ませず露出配管としたり、可動する金具類は、特注品を選定せず、壊れたときにホームセンター等で購入可能な製品とする事を心がけるようにしています。
また、子どもが手に触れるものは、模造品ではなく、鉄なら鉄、木なら木を使うようにして、実際に触れて、鉄や木というのはこういうものだという感覚を学んでもらいたいと思っています。

保育ネクスト

安全性の配慮については?

補助金申請のために付けなければいけないものも多いのですが、過剰な部分もありますね。
余計にお金がかかったり、逆に危なかったりするケースもあるんです。
たとえば床の点字ブロックは障がい児のためにも必須なのですが、子どもがその上を走ると、転んでけがをしてしまうこともあるので、もう少し幅を広く持たせてくれてもいいのではと思います。
ただ言われるがまま設置するのではなく、要るものなのか要らないものなのかをきちんと整理して、無駄なお金を使わないように、行政と話し合いながら進めますね。

保育ネクスト

クライアント側からは、どんな要望を受けることが多いですか?

園によってまちまちですが、多いのは、スタッフのコミュニケーションがとりやすいようにということと、市中の保育園は2階建て、3階建てが多いので難しいのですが、視認性を高くして子どもがどこで何をしているかがすぐ分かるようにしてほしいということです。
あとは動線の明確化ということで、子どものスペースと先生たちのスペースをきちんと分けたいという要望が多いですね。
園庭がある場合は、さっと出られるような動線にしてほしいという要望もあります。
保育園では、外からの受け入れ方が独自に決められており、その受け入れ方を守れる動線にしてくださいという要望もよくあります。
たとえば 5歳児は5歳児の玄関に、0~1歳児の受け入れは保護者がさっと預けて行ける場所に、というようなことですね。

 
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