保育園でヒヤリハットが起こったら…気をつけましょうだけでいいの?

保育園でヒヤリハットが起こったら ~「気をつけましょう」だけでいいの?

どんなにベテランの保育士でも、日々、ヒヤリとする経験があると思います。
別記事「保育ヒヤリハット集」で、多くの保育士が思い当たるヒヤリハットから、見落としてしまいがちなヒヤリハット事例を集めてみました。

保育園ヒヤリハット集

このようなヒヤリハットはなぜ起こるのか、起こりやすい状況から、注意点や改善点について考えてみましょう。

施設・設備の保育環境に目を配っているか

けがや事故に関するヒヤリハットの原因は、保育環境が原因になっている可能性があります。
たとえば、施設の中に死角となっている部分はありませんか?
そこに子どもが入り込んでしまうと様子を把握できなくなってしまい、けがやけんかがあってもすぐに対応できなくなります。
また、オムツ替えの台や机の故障や、おもちゃや遊具の損傷といったことも、けがや事故につながる原因となります。
保育室が散らかっていたり、園庭がぬかるんでいたりする場合も、子どもが転倒することもあるでしょう。
こうした保育環境を整えて、安全な保育を心がけましょう。

職員は足りているか、子どもの活動範囲が広すぎないか

保育士の目が行き届いていないことも、ヒヤリハットが起こる原因になります。
とくに職員数が少ない保育園では、どうしても人手が足りず、子どもの危険を察知できる視野が狭くなってしまうことがあります。
また、子どもたちの活動範囲が広くなると、施設では保育士の人数が足りていても、ヒヤリハットが起こりやすくなることがあります。
たとえば遠足で公園の広場のような普段と違う場所で活動するときには、園庭よりも広いために事態の把握が難しくなり、思いがけないけがやトラブルが起こりやすくなりますので要注意です。
お散歩の際は歩道を歩く際に、歩行者や自転車、自動車のほか、道の不備など、複数のことに気をつけなければなりません。
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外では子どもの歩くペースに合わせつつ、保育士があらゆる危険を察知しなければなりませんので、注意がそれて、ヒヤリハットが起こる可能性があります。

子どもの成長や性格をちゃんと認識しているか

子どもの成長や性格について認識が足りないと、ヒヤリハットにつながりやすくなります。
同じ1歳児でも、話せる言葉の数や給食を食べるペースなど、子どもによって成長度合いは異なります。
毎日子どもと関わっていくと、子どもの一人ひとりの成長や性格、行動パターンが見えてきますよね。怒りっぽい子や、好奇心旺盛な子、注意力散漫な子など、性格や行動パターンは異なります。
一人ひとりの違いをしっかりと把握していないと、思わぬけがや事故につながってしまうことがあります。
たとえば、最近立ったばかりの0歳児は、ちょっと目を離したすきに転倒してけがをしてしまうかもしれません。
怒りっぽい子どもと、その子どもと相性が悪い子どもを隣の席に配置すると、けんかが起こってしまうかもしれません。
子どもの行動を完全に予測することは難しいでしょう。でも、おおよその成長度合いや性格を知っておけば、けがや事故、子ども同士のトラブルなどはある程度予測できます。
子どもの成長度合いや性格を考えて働きかけや環境設定をすることは、事故防止に欠かせないポイントです。

保育園でヒヤリハットが事故に発展しないようにする対策

ヒヤリハットが事故に発展することのないように、安全安心な保育を実現するには、どんな対策が考えられるでしょうか?
保育園で事故を防ぐための対策を3つご紹介します。

保育園のヒヤリハット対策① ルールやマニュアルをしっかりと定める

ヒヤリハットを防ぐには、保育士が危険に対する意識を高めることが重要です。
けがや事故、トラブルその他の保育に関するルールやマニュアルを作れば、保育士間で「共通理解」が生まれ、子どもの危険に対する意識が高まります。
食事の援助や外遊び・室内遊びの注意点、ヒヤリハットが発生しやすい場所などを保育士全員で認識すれば、気をつけながら保育を進められるでしょう。
とくに実習生や新人保育士、転職してきたばかりの保育士がいると、ルールやマニュアルがないためにヒヤリハットが起こる可能性が高まります。
ルールやマニュアルを書いた紙やポスターを事務室に張ったり、朝のミーティングや会議で打ち合わせをしたりして、保育士がヒヤリハット防止を意識しやすい環境を作りましょう。

保育園ヒヤリハット対策② ヒヤリハットの報告書を作成する

保育園内でヒヤリハットが起こった場合は、必ず報告書を作成して保育士間で共有しましょう。
ほとんどの保育園ではこうした報告書を作成し、本部や園長に提出するシステムになっていますが、中にはヒヤリハットをあまり書かない保育園や、規定がゆるい保育園もあります。
ヒヤリハットに関する情報を共有しないと、また同じけがや事故、トラブルが起こりかねません。
ヒヤリハットが起こった場合は、誰が読んでも状況が分かるように報告書に詳細を記入しましょう。

ヒヤリハット報告書に書くこと

  • 子どもの年齢
  • 時間
  • 場所
  • そのときの状況
  • 経緯(原因)
  • どんな処置を施したのか
  • 対策方法

書き方やフォーマットは保育園によって異なりますが、ほとんどの保育園では上記の内容を報告書に記載しています。
重大なヒヤリハットがあった場合は、ミーティングや反省会などで情報を共有しましょう。
保育士全員でリスク回避の意識を高め、反省・改善に努めていくことが大切です。

保育園ヒヤリハット対策③ 常に目が行き届く保育体制を

ヒヤリハットを最小限に抑えるためには、保育士の「目」が必要です。
適切な人数の保育士を配置し、つねに子どもに目が行き届く保育体制を整えましょう。

現在、保育園での保育士の人数・配置は次のように定められています。

  • 0歳児の場合: おおむね子ども3人につき保育士1人以上
  • 1~2歳児の場合:おおむね6人につき保育士1人以上
  • 3歳児の場合:  おおむね20人につき1人以上
  • 4~5歳児の場合:おおむね30人につき1人以上

参考:厚生労働省「児童福祉施設最低基準の条例委任について」

この人数だけでは足りない場合もあります。できるだけ多くの保育士を配置して、たくさんの「目」を備えることが、ヒヤリハットの防止に効果的です。

なぜ保育園のヒヤリハットを把握することが重要なのか

ハインリッヒの法則
たくさんの子どもが同じ空間で生活している保育園では、どんなに対策を講じても、完全にヒヤリハットの発生を防ぐことは難しいでしょう。
しかし、もしかしたら重大事故に結びつく原因が隠れているかもしれませんから、まず、日々のヒヤリハットを把握することが大切です。
問題は、起こってしまったヒヤリハットを忘れたり隠したりせず、全員が共有して、再発しないための対策を立てることです。

「ハインリッヒの法則」というものを聞いたことのある人がいるかもしれません。これは「1:29:300の法則」とも呼ばれる、リスクマネジメントの法則です。
損害保険会社で技術・調査部の副部長を務めていたハインリッヒが、ある工場で起こった5,000件以上の労働災害を調査したところ、1件の重大事故の裏には29件の軽い事故と災害に至らない小さな事故、つまりヒヤリハット事例が300件あったのです。
つまり、300件のヒヤリハット事例があれば、29件の軽い事故、1件の重大事故が、いつ起こっても不思議ではないことになります。

さらに、約175万件を超えるデータから導き出された「バードの法則」も有名です。
アメリカの21業種297社、175万3,489件のデータにもとづき、「ニアミス:物損事故:軽傷事故:重大事故」の比率は、「600:30:10:1」でした。つまり、1件の重大事故の裏には10件の軽い事故があり、さらに軽い事故の裏には30件の物損事故があり、そしてその裏には600件のニアミスがあるわけです。
ヒヤリハットの発生を把握し、その原因を取り除いていくことによって、重大事故が起こる確率を下げることができます。
今回ご紹介した事例や対策を参考に、キメの細かい安全な保育を目指していきましょう。

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