園長こそ研修が必要!園長向け研修とは?

園長こそ研修が必要!園長向け研修とは?

近年、さまざまな社会福祉法人団体が、保育園や幼稚園の園長に向けた研修を開催しています。施設のトップである園長にこそ研修が必要な理由とは何でしょうか。今回は、園長向け研修の目的や具体的な講義内容について解説します。

園長向け研修とは?

保育業界では、副主任をはじめ、リーダー職の保育士や、特に役職に就いていない保育士に向けた「キャリアアップ研修」が行われています。
しかし、じつは園長はこのキャリアアップ研修の対象者になっていません。そのた め、現状は「経営者の学びの場」は、限られてしまっているのが実情です。

そこで、昨今、注目されているのが「園長向け研修」です。
園長向け研修では、園長の役割や子育て支援、子どもの発達・保育など、幅広い科目が用意されています。
経営者としてだけでなく、保育者としての知見も広げられる良い機会として、多くの園長が受講しています。

園長向け研修を行う団体

園長向け研修を行う団体は、複数あります。

  • 社会福祉法人 日本保育協会
  • 社会福祉法人 全国保育協議会/全国保育士会

上記団体以外にも、講師派遣サービスを行う企業 が講師を派遣して園長向け研修を実施していたり、個人の講師が園長向け研修を実施していたりすることもあります。

参考
社会福祉法人 日本保育協会「保育施設長研修会~保育内容編~」
社会福祉法人 全国保育協議会/全国保育士会「2022年度_教育・保育施設施設長専門講座プログラム案内」

研修の対象

園長向け研修の対象は以下の通りです。

  • 保育園やこども園などの園長として働いている人
  • 園長に就任予定の人
  • そのほか保育・教育にかかわる人

研修を主催する団体によって対象は異なりますが、基本的には園長や園長に就任予定の人が対象となっています。

研修費用

受講料は科目数によって変わりますが、およそ2~3万円が目安です。
研修は2~3日を通して行われることが多いので、その分費用がかかるケースもあります。
ただ、日本保育協会や、全国保育協議会/全国保育士会が開催する研修の場合、会員になれば費用が安くなるので、安く抑えたい人は入会を検討してみるといいかもしれません。

研修の受講スタイル

研修のスタイルは主に3パターンあります。

  • 対面での講義
  • Zoomなどを使ったライブ配信
  • ライブ配信のアーカイブ視聴

研修スタイルに関わらず、講義では大学教授をはじめ、保育・経営の専門家などを講師として招いています。
科目によっては、厚生労働省子ども家庭局保育課の職員が講師となり、講義を展開することもあります。
「対面で受講してたくさん質問したい」「自宅で自分の好きな時間に学びたい」など、自分の希望に合った研修スタイルを選びましょう。

園長向け研修の目的

園長向け研修の目的は主に2つです。

  • 保育・経営の知識のアップデート
  • 園長としての「質」を高める

具体的にどんなことを目指しているのかチェックしていきましょう。

保育・経営の知識のアップデート

園長向け研修の目的のひとつは、「保育・施設運営の知識をアップデートすること」です。
園長向け研修に参加する人の中には、これから園長に就任する人もいます。
保育士経験がないまま園長になる人もいれば、保育士経験はあるものの経営の経験がない人もいるでしょう。
園長向け研修では、保育の基礎から、園長としての保育への関わり方、保育事業経営・マネジメント戦略まで、保育・経営にまつわる科目を学べます。
こうした科目を通じて、受講者である園長の保育・経営の知識のアップデートを図ります。

園長としての「質」を高める

園長向け研修には、園長としての「質」を高めるという目的もあります。
近年は核家族化、共働き家庭の増加などにより、保育園や幼稚園などの保育施設には、質のいい保育の実践やきめの細かい子育て支援などが求められるようになりました。
こうした中、園長は保護者のニーズを踏まえた「質のいい施設づくり」を行わなければなりません。
また、昨今は保育士不足の問題が深刻化しているため、「保育士が働きやすい環境づくり」
「やりがいのある職場づくり」なども必要とされています。
そこで、園長向け研修では、園長が子どもや家庭、保育士に寄り添った現場リーダーになれるよう、必要な情報を提供します。

園長向け研修の内容

園長向け研修の主な科目を紹介します。
具体的にどんな内容を学ぶのか、チェックしていきましょう。

保育園の社会的役割

「保育園の社会的役割」は、近年の子育てを取り巻く状況や、その中で求められる保育施設の役割に関する科目です。
施設の経営者として、また保育業界を担う者として、社会的な側面から施設の役割を学びます。

園長の役割

「園長の役割」では、保育施設リーダーとしての園長の役割や、保育園の経営・運営にあたっての法令遵守(コンプライアンス)などを学びます。
園長としてどのように施設経営・運営に携わるのか、また保育士が働きやすい環境をつくるには何が必要なのか、ということも考える科目となっています。

子育て支援

「子育て支援」など科目では、保育園などを利用する保護者に対する子育て支援や、地域における子育て支援について学びます。

通常、子育て支援に直接的に関わるのは現場の保育士ですが、子育て支援の方針を考えるのも、保育園の責任者である園長の役割の1つです。
特に近年は共働き家庭、別居婚家庭、両親が同性同士の家庭など、家族の在り方や家庭状況が多様化しています。
保育園には、こうした家庭への理解を深め、保護者や子どもに必要な支援を届けることが求められています。
「子育て支援」など科目を通じて、園長が保護者支援の意義について理解した上で、保護者との連携や、課題を抱えた保護者への対応についての知識を身に付けられるでしょう。

子どもの発達と保育

保育の目標を達成するためには、子どもの発達に合った計画性のある保育を実践することが必要です。
「子どもの発達と保育」などの科目では、乳幼児期の発達の特性・発達過程や、保育所保育指針の内容を学び、全体的な「保育の計画」作成について考えます。

子どもの健康・安全

保育園は、子どもの命を預かる場所なので、子どもの健康や安全に配慮したさまざまなガイドラインを立てる必要があります。
園長向け研修では、「子どもの健康・安全」などの科目で、以下のようなガイドラインについての理解を深めます。

  1. 保育所における感染症対策ガイドライン
  2. 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
  3. 保育所における食事提供のガイドライン
  4. 保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
  5. 教育・保育施設等における事故予防及び事故発生時の対応のためのガイドライン

保育事業経営・マネジメントの戦略

「保育事業経営・マネジメントの戦略」は、事業計画・戦略、課題、マーケティング、危機管理などについて学ぶ科目です。
保育園の園長は、経営理念に基づいて、保育士に対して明確なビジョンを示して経営に取り組む必要があります。
また、保育園の安定した経営のためには、地域の多様な保育ニーズを把握・分析して、多くの家庭からの信頼を得ることが大切です。
園長向け研修では、「選ばれる保育園」になるためのマーケティング手法や、人・モノ・お金などの経営資源の使い方やリスクヘッジなどを学びます。

部下のマネジメント

園長向け研修では、リーダーシップや部下のマネジメントについての科目もあります。
具体的には、リーダーのタイプ別のアプローチ方法や部下への仕事の振り方、部下を褒めて伸ばす方法など、よりよい職場づくりのコツを学びます。

昨今の保育業界の動向

「昨今の保育業界の動向」などの科目では、保育をめぐる国の動向について学びます。
研修によっては、厚生労働省の子ども家庭局 保育課の職員を講師として招き、講義を行うこともあります。
「子ども・子育て支援新制度」「こども家庭庁の設置」といった昨今の保育制度から、今後、保育園で必要となる支援についての理解を深め、実践へとつなげられるでしょう。

保育園のリーダーである園長こそ研修が必要!

園長向け研修では、これまで以上に保育や経営についての知識を深められるだけではなく、最近の保育業界の動向を知ったり、よりよい職場づくりのヒントを得られたりします。
研修によっては、座学だけではなくワークも行うものもあり、自分の意見を言うだけでなく、ほかの受講者の意見を聞くことで、視野をさらに広げることができるでしょう。
現場の保育士と比べて、学ぶ機会が少なくなりがちな園長ですが、園長としてのスキルアップを目指す人は、これを機に園長向け研修を受けてみてはいかがでしょうか。

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