保育園は新型コロナでどのような影響を受けたか
緊急事態宣言時は行政から休園要請があり、医療従事者のお子さんなど預からなければいけない子どもの問題など難しい局面でした。今一番怖いのは、園内に感染者が出た場合です。実際に職員が感染して園が休園になった例もありますし、濃厚接触者がPCR検査を受けるために園を3日間閉鎖したケースもありました。
保育士さんが感染する場合、園児が感染する場合、園児の親御さんが感染する場合で、それぞれ対応が異なりますので、感染が疑われる場合はちゃんと報告していただくルールを整備するよう各園にアドバイスしています。
運営費は預かっている園児の数で決まりますが、今回のコロナ禍ではすべての園児が登園していると見なして満額を支給しているから、行政の認識では保育園はダメージを受けていないことになっていますが、地域の保育指導による加算や、延長保育のようなプラスアルファの加算がありますから、実際には経済的なダメージはあります。預かり保育が多い保育園ではそれなりに大きなダメージです。ただ、それでも前年比8割を下回る園は少ないでしょうね。
たしかに、介護、福祉、医療の中では保育園が一番恵まれていますが、行政がいつ運営費の支給を打ち切るかわかりませんから、「この先どうなるか分からない」という不安をもつ経営者も多いです。
行政からは保育園の従事者の休業補償に強いお達しが出ていますから、園が休んでも職員の給料減額はせず、特別休業の制度を整備するようにアドバイスしています。
ただ、今度は「コロナになっても休ませてもらえない」ということから保育士の離職につながるかもしれない。「ひとりも園児がいなくても出勤しろ」という保育園も実際にありました。こういう危機の際にどれだけ親身にできるかということは保育士にも伝わりますから、できれば1万でも2万でもお見舞い金を出したほうが印象が良くなります。
中小企業庁はBCP策定を求めていますが、保育園ではBCPの概念自体を知らない経営者が多いですね。ちゃんと避難訓練をしているから、というレベルです。
2019年も事前に大きな台風が来るとわかっていたのに、行政は保育園の開園時間契約を盾に、開園を優先しようとしていました。「職員の命を守ることも園としての責任だ」という園からの申し入れで、ようやく「園児が来なければ閉めていい」ということになったんです。
当社でも、震災と台風、そして今回の感染症の被災を想定し、保育園を守る、子どもを守る、保育士を守るための保育園向けBCPプランを提案しています。BCPに関する助成金や、就業規則改定の助成金とうまく組み合わせてBCP策定を勧めています。
緊急時にはサプライチェーンの分断を想定しなければなりませんが、保育園でいうと、給食の供給は外部委託なので、これがサプライチェーンになります。物流が止まると給食も止まってしまうわけです。
先般、給食室の担当者が新型コロナに感染した園があったのに、行政が休園を認めず、給食をやめてお弁当にするか、同じ法人の他の園から担当者を連れてきて給食提供を継続しろと言ってきたことがありました。「そんなことはできない」と答えたら、「備蓄食糧で対応せよ」と言うんです。コロナの対応に関しては行政の指導に沿うしかないというのが現状です。
保育園が閉まると、子どもを預けているお父さん、お母さんが仕事を休まなければならなくなる。以前は夜8時に職員が手分けして「感染者が出たので明日は閉園します」と保護者に電話連絡していたのですが、それが変わりました。