現役保育士さんならもちろん知っているけど、転職しようとしている人だったら今さら聞けない「保育園と幼稚園の違い」。どちらに就職しようか悩んでいるという方もいるでしょうね。そこで今回は、保育園と幼稚園の違いを5つ、ピックアップしてみました。それぞれの目的や、働くメリット・デメリットもあわせてご紹介します。ぜひ参考にしてください!
保育園と幼稚園の5つの違い
保育園と幼稚園というのは、よく混同されがちですが、両者はまったく似て非なるものです。
何が違うのか? というと、具体的には次の5点です。
- 管轄
- 目的
- 子どもの年齢
- 保育時間
- 料金
それぞれを詳しく解説していきますので、保育・教育への理解を深めてくださいね。
保育園と幼稚園の違い①
管轄
保育園と幼稚園は、まず管轄が異なります。
まず保育園ですが、これは「厚生労働省」が管轄する施設で、ここで働くためには国家資格である「保育士資格」を取得する必要があります。
「保育園」というのは通称名で、正式には「保育所」と言います。
児童福祉法第7条に定められている「児童福祉施設」で、法律基準は児童福祉法です。
主に、「保護者が就労や病気によって子どもを十分に養育できない場合、保護者に代わって子どもを預かって身の回りのお世話をする施設」として、全国各地に設置されています。
保育園にはさまざまな種類があり、施設によって特色も異なっています。
- 認可保育園…児童福祉法に基づいた規定をクリアし、各都道府県知事に認可された保育園
- 認証保育園…東京独自の制度。東京都が定めた基準をクリアした保育園
- 無認可保育園…一定の条件はクリアしているものの、認可を受けていない保育園
- 企業主導型保育園(企業内保育室)…企業内に設置された保育園、事業の従業員の子どもが通う
- 院内保育室…病院の中に併設された保育園
- 認定こども園(幼保一体型)…幼稚園と保育園の両方の特徴を兼ね備えた施設
ちょっとややこしいかもしれませんね。
次に幼稚園ですが、こちらは「文部科学省」が管轄する教育施設です。幼稚園で働くためには、これも国家資格である「幼稚園教諭一種免許状」の資格を取得して、幼稚園教諭になる必要があります。
小学校や中学校を管轄する文部科学省が管理する施設というだけあって、保育園より教育的な側面が多くなります。
法律基準は学校教育法で、主に「就学前教育」を実践する場所として利用されています。
保育園と幼稚園の違い②
目的
保育園と幼稚園は、目的も異なります。
保育園の主な目的は、子どもの「保育(養育・教育)」です。
保育所保育指針では、保育園の目的は次のように定められています。
保育所は(省略)保育に欠ける子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。
「養育」と「教育」というのはどういうことかというと、次のような意味です。
- 養護…子どもが安心して生活できる「衣・食・住」を確保して支援、保護すること
- 教育…子どもの成長に必要な知識を教えること
基本的には、オムツ替えや着替え、食事の援助など、子どもの身の回りのお世話をするのが保育園です。
さらに、「保育所保育指針」で定められた5領域「健康、人間関係、環境、言葉、表現」に関する取り組みが盛り込まれ、子どもの心身の成長をより促していきます。
幼稚園よりも「生活の場」という意味合いが強いところが、保育園の特徴ですね。
一方、幼稚園の主な目的は、子どもの「教育」です。
学校教育法では、幼稚園の目的は次のように定められています。
幼稚園は、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。
施設によって目的や目標は異なりますが、基本的には「就学前教育」を目的に掲げているケースがほとんどです。
正しい生活習慣や集団行動、音楽や絵画、運動などを学ぶ場が、幼稚園です。
年長クラスになると、文字の読み書きや簡単な算数などを教えている幼稚園もあります。
保育園と幼稚園の違い③
子どもの年齢
保育園と幼稚園とでは、預かる子どもの年齢も異なります。
施設 | 対象となる子どもの年齢 |
---|---|
保育園 | 0~5歳児 |
幼稚園 | 3~5歳児 |
保育園の場合、預かる子どもの年齢は0~5歳です。生後2カ月の0歳児を預かる施設もありますが、ほとんどの施設では、首がすわった生後4カ月以降の0歳児からを受け入れ対象としています。
一方、幼稚園が預かる子どもの年齢は3~5歳です。ただし、2年保育の場合は、4歳からの入園となります。
幼稚園の中には、2歳を対象とした「プレ保育」を実施している施設もあります。
保育園と幼稚園の違い④
保育時間
保育園と幼稚園とでは、保育時間も大幅に異なります。
保育園の保育時間は8時間程度で、基本的に8:00~16:30の間に子どもを受け入れています。
ただ、朝7:15から早朝保育、夕方16:30以降に延長保育を実施している保育園も少なくありません。
延長保育も含めると、1日の保育時間は基本的に11時間程度です。
保育園の中には、夜間保育や深夜保育などを実施している施設もあります。保育園に就職・転職を考えている人は、事前に保育時間をチェックしたほうがいいでしょう。
一方、幼稚園の保育時間は4時間以上で、9:00~14:00の間、子どもを預かっている施設がほとんどです。
ただ、仕事や家庭の事情で忙しい保護者のために、保育園の園長保育のような「預かり保育」も実施しています。
預かり保育は基本的に16:30までのところが多いのですが、中には18:00頃まで子どもを預かる幼稚園もあります。
保育園と幼稚園の違い⑤
料金
認可保育園・公立保育園の場合は、所得税に応じて、各自治体が定める保育料を納めます。
私立保育園の場合は、保育園が決める保育料を支払います。
ちなみに認可保育園の保育料の平均は月額3.7万円です。
幼稚園も、保育園と同様に、公立では所得税等に応じた保育料を、私立では園が決めた保育料を納めます。
私立幼稚園の保育料の平均は月額2.4万円程度です。
ただし、2019年10月からは「幼児教育・保育の無償化」によって、幼稚園・保育所・認定こども園等を利用する3~5歳までのすべての子どもの利用料が無償になりました。
対象期間は、原則、満3歳になった4月1日から小学校に入学するまでの3年間です。
ただし、子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園は、月額2.57万円かかります。
働くならどちらがおすすめ?保育園と幼稚園のメリット
保育園の3つのメリット
保育園のメリットは大きく分けて3つあります。
- 保育時間が長い分、子どもたちと深い関係を築ける
- 補助金や手当などが豊富
- 色々な年齢の子どもと関われる
保育園は幼稚園よりも保育時間が長いので、子どもたちと、より密な絆を築くことができます。中には夕食提供まで行う保育園もあるので、働きながら、家族のようなアットホームな空間を味わえるでしょう。
また、0~5歳までの子どもが在籍しているので、最長で5年間、保育園に通う子どももいます。0歳児で担当した子どもを再び担当する可能性もあるでしょう。
また、補助金や手当など、金銭面の支援が多いのも大きなメリットです。
例えば、東京都品川区では、「宿舎借り上げ支援」として補助金額最大8万2000円/月(または経費の7/8)が補助されています。
さらに、保育園は0~5歳までの子どもが混在しているので、乳児保育と幼児保育の両方を学びたい場合には最適の環境と言えます。
幼稚園の3つのメリット
幼稚園のメリットも3つあげましょう。
- 保育時間が短いから事務作業に集中できる
- カリキュラムが決まっているからメリハリのある雰囲気
- 長期休みが取れる
幼稚園は保育園よりも保育時間が短いので、その分、身体的な負担は減ります。
子どもたちが帰った後は、事務作業やイベントの準備などに集中できるので、効率よく作業を進められるでしょう。
また、幼稚園は「教育」のテイストが強く、カリキュラムが決まっています。
そのため「授業の時間」と「遊びの時間」の区別がはっきりとしています。
メリハリのある教育を目指す人には、おすすめです。
幼稚園は小学校と同じように夏休みを始めとする「長期休み」があります。
そのため、教員も長期休みを取りやすいので、「まとまった休みがほしい」という場合にはうれしいメリットです。
保育園と幼稚園のデメリット
このように、保育園と幼稚園にはどちらにも違った良さがありますが、働く上で留意すべきデメリットもあります。
保育園の3つのデメリット
保育園のデメリットは次の3点です。
- 保育時間が長いから身体的に疲れやすい
- 残業や持ち帰りの仕事が多い
- 長期休暇が取りにくい
保育園は幼稚園よりも保育時間が長く、身体的な負担も大きくなります。
特に乳児保育も行うため、おんぶや抱っこ、オムツ替えなどの体力を使う業務もたくさんあります。長時間続くと、やはり疲れてくることは確かです。
残業や持ち帰りの仕事が多いことも、保育園で働くときの留意点です。
子どもと過ごす時間が長い分、事務仕事や製作などの作業が進まず、残業をしたり、自宅で仕事をしたりすることもあるでしょう。
保育園は長期休暇中も開園していることが多く、なかなか長期休暇が取れないという施設もあります。
幼稚園の3つのデメリット
幼稚園のデメリットは次の3点です。
- 保育園よりも子どもと過ごせる時間が少ない
- カリキュラム作成が大変
- 1人担任で負担が多い
幼稚園は保育園よりも保育時間が短いので、子どもと過ごせる時間は保育園よりも少ないです。
子どもたちともっと深くかかわりたいという人は、物足りなさを感じることもあるかもしれません。
また、幼稚園は教育的な要素が強いので、カリキュラムや指導案の作成に時間がかかってしまうという特徴があります。
幼稚園では、1人担任というのが珍しくありません。
新卒でいきなり1人担任を任されることはなかなかないと思いますが、慣れてきたら、ひとつのクラスをひとりで運営しなければなりません。
保育園と幼稚園、それぞれ異なるやりがい
以上のように、保育園と幼稚園は、それぞれ違った特徴を持っています。
それぞれのメリットやデメリットを踏まえた上で、自分に合った施設を選ぶことをお勧めします。
保育園・幼稚園ともたくさんありますから、「どの施設を選べばいいか分からない」という方もいるでしょう。そんなときは保育士向けの転職サイトを利用するのがいいと思います。転職サイトでは、あなたの希望に合った施設が検索できます。登録料も利用料も無料ですから、ぜひ一度チェックしてみてください。
参考資料:内閣府「幼児教育・保育の無償化概要」
内閣府「幼児教育・保育の無償化について知る」
厚生労働省「保育課・少子化総合対策室関係」
文部科学省「令和元年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」
千代田区「保育士奨学金返済支援事業補助金」
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