近年、多くの保育園で業務をサポートするICTシステムが導入されています。ICTシステムによって保育業務はどのような影響があるのでしょうか?
今回はICTシステムの機能や導入するメリットを解説します。
保育園で導入されているICTシステムとは?
ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略称で、“通信技術を活用したコミュニケーション”のことを指します。
昨今、保育園で導入が進んでいるICTシステムは、スマートフォンやタブレット、PCなどを活用して、保育関係者間での情報共有やコミュニケーションに役立てるシステムです。
厚生労働省は、保育業務にICTを導入することによって保育士の業務負担を軽減させることができるとして、保育園にICTシステムの導入を促しており、導入している保育園も増えつつあります。
参考
厚生労働省 保育所等における ICT化推進等事業
厚生労働省 ロボット・AI・ICT 等を活用した保育士の業務負担軽減・業務の再構築に関する調査研究
保育園ICTシステムに搭載されている機能
保育園で導入されるICTシステムには、保育士の業務を効率化する便利な機能が備わっています。
具体的にどのような機能が搭載されているのか、主なものをチェックしていきましょう。
保育園ICTの主な機能①
登降記録・出欠管理
保育園のICTシステムを使うと、子どもの登園や降園の時間を、保護者がスマートフォンやタブレット、タッチパネルを操作するだけで記録できます。
これまで欠席や遅刻の電話を受け取ることは保育士の朝の仕事のひとつでしたが、その手間が省けるだけでなく、手書きの登降記録では防げない記入ミスや記入漏れなどといったこともなくなります。
「どこに書類ファイルをまとめたか忘れてしまった」
「書類の保管場所がわからない」
過去の登降記録もまとめてデータとして管理できるので、そんな悩みも解消できるでしょう。
保育園ICTの主な機能②
連絡帳
保育園のICTシステムを使えば、これまで保育士が手書きで行っていた連絡帳の記入をスマートフォンやタブレット上の作業で完結できます。
子どもの様子をオンライン上で保護者と共有できるので、「降園時、連絡帳を渡しそびれてしまった」という心配もなくなります。
連絡帳を使い切ってしまったときも、新しい連絡帳を配布する手間が省けます(細かいことですが、こうした雑事がたくさんありますよね)。
保育園ICTの主な機能③
おたより・お知らせの配信
保育園のICTシステムを使えば、連絡帳だけでなくおたよりやお知らせもオンライン上で作成・配信できます。
担任の保育士がクラスのおたよりを作成できるほか、園長先生がクラスだよりの確認・園だよりの作成を行ったり、保育園の看護師が保健だよりを作成したり、とさまざまな用途に合わせて使えます。
配信日指定だけでなく、園・施設全体・クラスなど、送信先の範囲を設定することもできます。
配信済みのおたよりやお知らせをどの保護者が確認したのかをチェックできるシステムもあるので、保護者への情報共有を徹底して行えるでしょう。
保育園ICTの主な機能④
園児の情報管理
保育園のICTシステムを使うと、子どもの基本情報に加え、検温、排便、お昼寝などの情報も管理できます。
児童票の「基本発達情報」「健康・保険情報」や、子どもの身長、体重、胸囲、成、頭囲などの成長記録もまとめて登録できます。
年齢別・月別の発達経過項目に基づいて、子ども一人ひとりの発達経過記録を残せるため、成長の度合いを今後の保育や指導に活かせるでしょう。
保育園ICTの主な機能⑤
勤怠・シフト管理
保育園のICTシステムは、勤怠・シフト管理機能も備えています。
職員にICカードリーダーにタッチしたり、アプリで打刻したりして、職員の出退勤の記録を管理できます。
また、職員が専用画面からシフト希望を登録すると、シフト管理者用の画面にあるシフト表に自動で反映されるため、シフト希望情報を見ながら手打ちでシフト表を作るといった手間がかかりません。
編集画面では登園予定の園児数やその日に必要な保育士の人数に対し、不足している保育士の人数かがわかるため、シフト作成のミスを減らせるでしょう。
保育園ICTの主な機能⑥
さまざまな書類の作成
保育園のICTシステムを使えば、年案、月案、月案、週案、保育日誌、などといった書類もシステム上で簡単に作成できます。
システムによっては、今まで手書きで作成していた書類のフォーマットをそのまま電子化できるので、慣れた仕様で作成を進められます。
指導案や日誌に対して、承認やコメント、差戻しをすることも可能なので、書類の作成に慣れていない新人の教育にも役立つでしょう。
日誌のほか、事故やヒヤリハットなどの報告書の作成・共有をできるのもポイントです。
保育園ICTの主な機能⑦
請求管理
保育園のICTシステムを使えば、月の保育料、延長保育料、個別請求の金額が自動計算されるため、ミス・モレなく経理業務を進められます。
現金を取り扱うことが減り、保育料の未回収リスクも削減できるでしょう。
請求のタイミングは、前払い・後払い・当月払いなど、施設に合わせて自由に設定可能です。
保育園にICTシステムを導入するメリット
上記のように保育園のICTシステムには多様な機能が搭載されており、書類作成業務の負担を軽減できますが、導入するメリットはそれだけではありません。
保育園ICTを導入するメリット①
週案・指導案などの記入が簡単に
保育園にICTシステムを導入すれば、週案・指導案などの作成業務が簡単になり、保育士の負担を軽減できます。
文章のテンプレートを用意しているシステムや、年齢、項目ごとに保育園オリジナルの定型文を設定できるシステムもあるので、事務作業を効率よく進められるでしょう。
中には、音声入力に対応しているシステムもありますから、文章を書くのが苦手という保育士も安心して使えます。
また、過去の週案や日誌、指導案などのデータをまとめて管理でき、参照したり振り返ったりしやすいことも、ICTシステムのメリットです。
保育園ICTを導入するメリット②
情報共有で人為的なミスを防ぐ
保育園にICTシステムを導入すると、おたよりや連絡帳だけでなく、保護者との連絡内容も保存して保育士間で共有できます。
「その話、聞いていない…」
「○○の件ってどうなった?」
複数担任制のクラスで口頭で伝達していると、そんな連絡漏れ、情報共有不足が起こりがちですよね。そのようなミスを減らせます。
保育園ICTを導入するメリット③
コストを削減できる
保育園にICTシステムでは、あらゆるデータをオンライン上で保管できるため、これまで書類作成に必要だった費用が不要になります。
細かいところでいうと紙やペン、印刷にかかるインクなどの費用が抑えられます。
大きいところでは、請求書や保育園の施設関する書類を簡単に作成・管理できるようになるので、事務員を採用しなくてもよくなる可能性があります。
業務を効率化されることで人手不足が解消されますから、人員コストを削減できるわけなのです。
保育園ICTを導入するメリット④
保育の質の向上
ICTシステムによってさまざまな業務を効率化すれば、保育士は本来の業務である「保育業務」に集中できます。
保育活動の準備をしたり、保護者相談の時間を設けたり、これまで書類作成のために削られていた時間を活用すれば、保育の質はずっと良いものにできるはずです。
また、子ども一人ひとりの情報を管理しやすくなることもICTシステムのメリットです。活用すれば、子どもの発達・成長度合いに寄り添った保育計画を立てられるでしょう。
保育園ICTを導入するメリット⑤
労働環境の改善で保育士の定着へ
保育園にICTシステムを導入して、保育士一人ひとりの負担が減れば、「労働環境が悪くて保育士がすぐに辞めてしまう」といった問題を解決できるようになります。
保育士が定着しやすくなるので、新しい人材を次々に採用しなければならなくなるようなことが減り、定着率の高い保育園としての評価にもつながります。
保育園ICTを導入するメリット⑥
保護者の負担も軽減できる
保育園にICTシステムを導入するメリットは、保護者にもあります。
保護者は、スマートフォンやタッチパネルから登園・降園を記録できるので、わざわざ保育園に電話したりする手間がなくなります。
「電話をしても、保育士が忙しくてなかなか出てくれない」
そんなストレスもなくなるでしょう。
また、ICTシステムでは保護者が連絡帳をオンライン上でチェックできるので、「連絡帳を持ってくるのを忘れてしまった」という心配もありません。
保育園・保護者の両方にメリットがあるICTシステム導入
保育園にICTシステムは、登降記録機能や連絡帳機能、書類作成機能、シフト管理機能など、さまざまな機能を備えています。
週案・指導案などの記入が簡単になるだけではなく、保育士間の情報共有ミスを防いだり、保育の質を向上したりできます。
保育士の負担を軽減することで、保育園に保育士が定着化するといったメリットもあります。
また、保護者も登園・降園の連絡、延長保育の予約などをしやすくなるため、快適に保育園を利用できるでしょう。
保育園の労働環境の改善を目指す経営者は、これを機にICTシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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