保育現場では、「保育力」という言葉をよく耳にすることと思います。新人さんにとっては、具体的には何を指すのかぴんとこないかもしれませんし、ベテランでも改まって何のことかを聞かれたら答えに窮するかもしれません。そこで今回は、保育力を培うために必要なスキルや、保育力を伸ばす方法を紹介しましょう。
「保育力」をつくるもの
「保育力」という言葉は、保育現場や保育を学ぶ場でよく使われます。
明確な定義があるわけではありませんが、この言葉には、「保育する力」「専門性の高い保育を実践する力」といったニュアンスがこめられています。
子どもの健やかな成長には保育力が欠かせませんが、では、具体的にどんなスキルを指すのでしょうか?
「保育力」を構成する5つのスキルを紹介します。
保育力を構成するスキル①
保育の知識
子どもの発達、個性に合った適切な援助、遊びのアイデアを提供するための土台となるのは、やはり保育の専門知識です。
保育士としてクラスを運営する上では、5領域や子どもの発達段階、カリキュラムの組み方や障がいへの理解など、保育に関わる幅広い知識が欠かせません。
こうした専門知識は、基本的に専門学校や大学、資格取得のためのスクールで学ぶものです。
座学だけでなく、保育実習を通じて実際に子どもと接しながら、さらに知識を身につけましょう。
保育力を構成するスキル②
保育の実践力
保育の専門知識だけでなく、それを実践する力も保育士に必要な要素です。
- ピアノの弾き語り
- 折り紙、描画、壁画などの製作
- 絵本・紙芝居の読み聞かせ
- スポーツ・運動遊び
- クッキング・菜園
音楽や言語、造形や運動、食育などの分野を実践する力も、保育園でのクラス運営には必要です。
季節に合った歌や製作、季節の野菜を使ったクッキングなどを通じて、子どもは楽しみながら季節感を味わい、感性を育んでいきます。
こうした実践力を身につけるためには、就職前に演習や実習、ボランティアで保育体験を重ねなけければなりません。
実際に保育現場で働いてからも、先輩や周りの保育士の保育を参考に、さらに遊びの幅を広げていきましょう。
保育力を構成するスキル③
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、保育士が子どもや保護者から信頼を得るための大切なスキルです。
- あいさつ
- 保育中の声かけ
- 子どもの気持ちを察する力
- 共感する力
- 子どもの言語表現を引き出す力
- 保護者へのカウンセリング力
子どもは言語表現が発達途中にあるため、「自分の気持ちを自覚して、言葉で表現すること」ができません。
初めての相手には緊張しますし、心を開いて安心して過ごせるようになるのにも時間がかかります。
そんなときに必要になるのが、保育士のコミュニケーション能力です。
保育士が元気に挨拶をしたり、子どもの気持ちを察して声をかけたりすることで、子どもは保育士を信頼し、愛着を抱くようになります。
送迎時の保護者対応や保護者面談の際には、家庭のニーズを理解して助言やサポートを行うといったカウンセリング力も求められるでしょう。
保育力を構成するスキル④
洞察力
「今日は○○ちゃん、顔色悪いな」
「いつもは■■ちゃんと遊んでいるのに、何日も一緒にいるところを見ていないな」
というように子どもの異変を察知するスキルを持っていると、体調不良やトラブルの深刻化を防ぐことができます。
子どもの体調不良を視診や子どもの様子から察して、適切な対応を取れる保育士は、子どもにとっても、そして保護者にとっても心強い存在になります。
子ども同士のケンカや人間関係のこじれに気付いて仲介に入れば、トラブルの早期解決や和解へとつながるでしょう。
子どもが友だちと楽しくすごせるような環境をつくることもできます。
こうした洞察力は、日頃の子どもの様子をしっかりと把握することで培われていきます。
「広い視野・多角的な角度を持つ」「日誌やメモに日常の出来事を記録しておく」といった習慣を身につけておきましょう。
保育力を構成するスキル⑤
チームワーク
保育士同士の強固なチームワークは、保育によい影響を与えます。
保育士同士が報告・連絡・相談を意識して連携することで、子どもの安全や健やかな成長を守ることができます。
大切なことから些細なことまでしっかり情報共有すれば、子どもや保護者への対応もスムーズです。
「昨日○○ちゃんが~してたよ」といった子どもとの楽しいエピソードも積極的に共有していくことで、子どもへの理解が深まるだけでなく保育士同士が楽しみながらクラスを運営できるでしょう。
保育士に求められるのは「保育力」だけではない
さて、「保育力」を構成する5つのスキルについて説明してきましたが、保育士に求められるのはそれらだけではなく、子どもを養護・教育するための「素質」も必要です。
保育士に必要な素質とはどんなものでしょうか?
子どもの感性に寄り添える心
子どもは大人と違った視点で生きています。
大人は、そんな子どもの独特の感性に寄り添うことで子どもに安心感を与えることができます。
「土や葉っぱ、水の手触りを楽しむ」
「空想の世界に入り込む」
「ビビットな色の組み合わせ」……
このような子どもの世界観を尊重して遊びを展開する力があるかどうかが、保育士としての素質です。
「普通は~だよね」などと常識を押し付けず、「これはなあに?~かな?」「○○だと思ったんだね」と子どもに共感したり、話に耳を傾けたりすることで、子どもの感性や創造性はどんどん伸びていきます。
責任感
保育園は子どもに遊びを提供するだけの場所ではなく、子どもの安全、心身の健康を守る場でもあります。いわば「命を預かる仕事」なので、その分、責任も重大です。
子どもがケガをしたときに早急に対応する、また誰かを傷つけてしまったときには叱るなど、子どもの保育者として適切な行動を心がけねばなりません、
子どもの安全を守り、正しい方向へと導くという責任感を持つことで、よりよい保育につながるでしょう。
忍耐力
子どもは体も情緒もまだまだ成長途中なので、言うことを聞かなかったり、保育士に反発したり、同じ間違いを繰り返したりすることがあります。このため、子どもと向き合う際には、感情的にならず、最善の対応を考える忍耐力が必要です。
子どもの成長を待ち、何度も繰り返し教える粘り強さ、子どもの怒りや悲しみを受け止める包容力がある人は、保育士に向いていると言えそうですね。
体力・体調管理
保育園では子どもと一緒に散歩に行ったり、園庭でかけっこや鬼ごっこをしたりと、体を動かす場面がたくさんあります。
体を動かすだけでなく、一人ひとりの様子を把握して連絡帳や日誌を書き、保護者対応やイベントの準備なども行いますから、体力が必要な仕事です。
子どもは体調をくずしやすく、クラスで感染症が流行ることもありますので、体調をくずさないよう、手洗いうがいや十分な睡眠と休息を心がけるという体調管理能力も保育士には求められます。
保育力を伸ばす方法
最後に、保育力を伸ばす方法を3つ紹介します。
キャリアアップ研修
「保育士等キャリアアップ研修」は、政府が保育士の待遇向上と専門性強化を目的に制定した制度です。
受講を終え、条件を満たした各役職の保育士は月5000~4万円の給料アップが見込めます。
具体的な研修内容は以下のとおりです。
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障がい児保育
- 食育・アレルギー
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
- 保育実践
- マネジメント
主にリーダー職の育成に重きを置いた制度ですが、基礎的な保育内容も含まれているので、保育の専門知識を学び直すには最適な機会でしょう。
参考 厚生労働省 保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
保育士の処遇改善についてもっと詳しく知りたい人はこちらの記事もチェックしてみてください。
セミナー・講座
企業や団体が定期的に開講している保育のセミナー・講座を受けることも、保育力を高める方法です。
ピアノのレッスン・講座、製作のコツなどの実践的なものから、少子化問題や虐待対策などの社会課題に関する講習会まで、さまざまなものがあります。
自分が学びたいことを選んで、保育力のアップを目指しましょう。
ほかの施設の見学
同じ系列の保育園を見学したり、勉強会に参加したりするのもおすすめです。
同僚以外の保育士が、どのように保育を実践しているのか、どんな保育観を持っているのかを知ることで、視野がぐんと広がります。
保育で行き詰ったときや、新しい保育のアプローチを発見するよいきっかけになるでしょう。
保育力を磨いて保育の質アップを目指そう!
保育力は、保育の専門知識・実践力、コミュニケーション能力やチームワークなど、さまざまな要素からつくられるものです。
保育力を磨く方法としては、キャリアアップ研修やセミナー、ほかの保育園の見学などがあります。
保育力を磨いて、より質の高い保育を目指しましょう。
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