保育の基本となる考え方や保育内容を定める厚生労働省の「保育所保育指針」は、子どもの総合的な心身の発達のために保育所が目指すべき領域を5つ挙げています。その一つである「表現」は、子どもの感性や創造性を育む上で重要な領域です。
今回は「表現」のねらいや内容に加え、年齢別の実践例を紹介します。保育計画を立てる際の参考としてチェックしてみてください。
保育所保育指針の「5領域」とは
保育所保育指針では、幼児教育で育みたい子どもの資質・能力として「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」の3つをあげています。
これら3つの資質・能力を育むために必要となる5つの領域が「5領域」です。
- 健康
- 人間関係
- 環境
- 言葉
- 表現
保育士は子どもの年齢や発達の特徴を踏まえ、この「5領域」を意識して保育計画を作成すし、子どもの総合的な心身の発達を促すことになっているのです。
「表現」は感性と表現に関する領域
5領域の1つ「表現」は、「感性と表現」に関する領域です。
子どもの感性や表現力を伸ばし、創造性を育むことを目的としています。
「表現」のねらい
「表現」のねらいは以下の3つです。
- 身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。
- 感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。
- 生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになる。
子どもは身近にある人やモノ、自然から感じとったことをもとに、自分の中で「イメージ」つくりあげていきます。そうすることで、目の前にないものを別のもので見立てたり、保護者や保育士の言動を真似たりできるようになります。
このように、身近な環境と関わり、感じとり、イメージを形成する力が「表現する力」や創造性の発達のベースとなっていくわけです。
体験し、表現し、感性を育む。
この一連の過程こそが、5領域の「表現」のねらいです。
「表現」の内容
次に、「表現」の具体的な内容を見ていきましょう。
保育所保育指針では「表現」の内容を次のように記載しています。
- 水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ。
- 音楽、リズムやそれに合わせた体の動きを楽しむ。
- 生活の中で様々な音、形、色、手触り、動き、味、香りなどに気付いたり、感じたりして楽しむ。
1の内容は、水や土といった素材に触れて、水の冷たさや砂のざらざら感、泥のぬめりなどの感触を楽しむことです。こうした感触を十分に味わい、もろもろの感覚を働かせていくことで、子どもの感性が育まれていきます。
2では、音楽や楽しいリズムに合わせて、子どもが体を揺らしたり飛び跳ねたり、手足でリズムをとるといった活動を行います。保育士が歌ったり体を動かしたりする様子を見ながら、子どもも一緒に歌い、動きを真似する経験を通して、子どもは楽しい気持ちを表現することの喜びを味わいます。
3は、風が木々を揺らす音や、雨粒が傘に当たる音、花の色合いや香り、虫の動きなどを聴覚や嗅覚などで感じ、心地よさや面白さ、不思議さ、美しさに気付くという内容です。
年齢別の「表現」の活動内容と援助のポイント
それでは「表現」の活動内容と、その援助のポイントを年齢別に紹介していきましょう。
各年齢にどのような遊びやサポートが必要なのか、チェックしてみましょう。
生後6か月未満児の「表現」の活動内容
生後6か月未満は、身の回りのものに触れて感性が育っていく時期です。
この時期は、抱っこや腹ばいになったり、支えられて座ったりすることで視野が広がります。
さまざまな角度で身の回りのものを見て、音を聞いて、握ったりなめたりして確認していく中で、身の回りのものへの親しみが生まれます。
口に入れても安全に感覚が楽しめるおもちゃをあらかじめ用意しておきましょう。
特に音の鳴るもの、硬さや感触の違うものような、子どもの感性を刺激するものがおすすめです。
ただおもちゃを置くだけでなく、保育士が実際に子どもの目の前で握って見せたり、握らせたりして、反応を促します。
※おもちゃや床は、よく消毒・点検をして、安全・衛生面に配慮してください。
生後6か月~1歳3か月児の「表現」の活動内容
生後6か月~1歳3か月は、それ以前の時期よりも身体が発達し、手指が動かしやすくなる時期で、好きなおもちゃだけでなく、遊具にも興味を持つようになり、遊びの幅が少しずつ広がります。
室内遊びに加え、戸外遊びや散歩を通して、四季を感じたり、身近な小動物を見たり触れたりするようになります。
また、保育士に好きな絵本を読んでもらい、真似して言葉を発するようになるのもこの時期です。
子どもが一人遊びに集中できるスペース、おもちゃ、絵本のほか、手遊びや曲を用意しましょう。
戸外遊びの際は、登る、すべる、転がるなど子どもの動きを支えられる位置に付いて、安全に遊べるようにサポートしましょう。
1歳3か月~2歳未満児の「表現」の活動内容
1歳3か月~2歳未満は、名前を呼ばれて返事をしたり、保育士の言葉を真似てやりとりを楽しんだりする時期です。
指差し、身振り、簡単な言葉で伝えるなど、語彙や意思表示の幅が広がるこの時期は、絵本や紙芝居の読み聞かせ、簡単な歌や踊りなどの活動を行います。
さらに、フィンガーペイントや砂遊び、粘土遊び、スライムに触れるなど、いろいろな素材を使った「感覚遊び」も実施します。
子どもの発語や指差しには、言葉で優しく応答するといった援助をしましょう。
また繰り返しの言葉のある絵本や手遊び、曲などを用意して、その都度子どもの反応に応えながら関わるのも援助のポイントです。
そのほか、安全に配慮しながら子どもがさまざまな素材と触れ合う機会をつくり、その楽しさを十分に伝えられるようにサポートしていきましょう。
2歳児の「表現」の活動内容
2歳は「自分でやってみたい」という意欲が育ち始める時期で、自分の見たこと、経験したことを、言葉で表そうとします。
例えば、ごっこ遊びや集団遊びを通して、保育士や友達と言葉のやりとりを楽しみます。
簡単な物語に興味を持って聞いたり、言葉を真似したりする中で、絵本の登場人物になりきって表現し、想像力を広げていきます。
また、手指を少しずつ繊細に動かせるようになるので、ちぎる、切る、貼る、折る、描くといった製作も活動に加わってきます。
2歳になると友達と遊ぶ場面が増えますので、保育士は子ども同士の仲立となって、言葉が足らないところは補いながら、子どもが言葉を交わす喜びや楽しさが味わえるよう援助しましょう。
子どもがちぎる、切る、貼る、折る、書くなどの製作活動ができるよう、はさみやのりなどの道具や素材を用意して、使い方を伝えることも必要です。
3歳児の「表現」の活動内容
3歳は、生活する中で「なぜ?」と理解したい気持ちが高まる時期です。
友達との関わりを通して、自分の思いを伝えながら一緒に楽しく遊べるようになります。
この時期はごっこ遊びや、自分のイメージや身の回りの人やモノを絵に描いたり、簡単な楽器で演奏したりするなど、表現遊びが少しずつ形になっていきます。
ごっこ遊びに参加して子どもと言葉のやりとりをして、子ども自身が役になりきって遊ぶ楽しさを味わえるようサポートしましょう。
また、子どもの興味・関心や季節に合った絵本や紙芝居などを読み聞かせて、イメージを豊かにするのもポイントです。
製作の際は、繰り返し遊べる素材や用具を数多く準備し、集中してとり組めるように見守り、必要に応じて援助しましょう。
4歳児の「表現」の活動内容
4歳になると、仲間意識が芽生え、友達と誘い合って遊ぶようになります。
活動としては、絵本、紙芝居、視聴覚教材などがあげられます。
こうした教材を楽しみ、イメージを膨らませて、物語の面白さや不思議さを味わいます。
イメージを膨らませるだけでなく、絵や製作などの方法で表現したり、なりきってごっこ遊びをしたりすることもあるでしょう。
また楽器の演奏の仕方を知り、楽器遊びや合奏を楽しむ場面も増えてきます。
子どもが物語の世界のイメージを膨らませて、世界観を楽しめるように、いろいろな絵本や物語を繰り返し読み聞かせましょう。
自然物を使った遊びを紹介したり、四季折々の自然に関する絵本や図鑑がいつでも見られるコーナーを設けたりするのもおすすめです。
また、季節の歌や子どもの興味のある曲を用意して、一緒に歌ったり、体を動かしたり、楽器で演奏するといった表現活動もとり入れていきましょう。
5歳児の「表現」の活動内容
5歳は、同年齢や異年齢の友達との関わりを通じて、協調性や譲り合いの気持ちを持つようになる時期です。
この時期は、一人で表現する活動はもちろん、集団での表現活動を実践できるようになります。
合奏や合奏、集団ダンス、グループで協力して1つの作品を作るなど、友達と一緒に表現することが増えてきます。
子どもの作りたいものや表現したいことを把握し、必要があれば援助しながら表現活動をサポートしましょう。
子どもが工夫したところや、ユニークな発想を褒めたり、表現したことに対して共感したりして、表現する楽しさや充実感を育むのも重要です。
また、集団で表現活動を行う場合は、役割分担、全体の進行、スケジュール管理などを行いましょう。
5領域の「表現」を意識して保育計画を立てよう!
5領域の「表現」は、子どもの感性や表現力を伸ばし、創造性を育むことを目的とした領域です。保育園では「表現」の活動として、歌や手遊び、絵本の読み聞かせ、製作などを通じて、子どもの感性を育んでいきます。
年齢ごとの「表現」活動の内容や援助のポイントを意識して、保育計画を立てていきましょう。
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