子どもの「学び」とは? 保育園と幼稚園のキニナル教育格差

子どもの「学び」とは? 保育園と幼稚園のキニナル教育格差

保育園と幼稚園、目的や働くメリット・デメリットはどう違うか」という記事でも詳しく書きましたが、保育園と幼稚園は管轄や保育時間も異なり、活動内容も異なります。
保護者としては、「保育園と幼稚園には教育格差があるのでは?」と気になるところですね。
そこで今回は、保育園と幼稚園の教育格差、子どもにとっての「学び」とはどういうものかということについて解説します。
保育園と幼稚園の違いを詳しく知りたい方や、「どちらの施設に子どもを入園させたらいいのか」と迷っている方は、ぜひチェックしてみてください。

保育園と幼稚園の3つの違い

保育園と幼稚園にはさまざまな違いがあります。

  • 管轄
  • 保育時間
  • 預かる子どもの年齢

以下、順番に説明していきますね。

保育園と幼稚園の違い
管轄

保育園(正式名称は保育所)は、厚生労働省が管轄している児童福祉施設です。
保育園では「児童福祉法」にもとづく国家資格「保育士資格」を持った「保育士」が常勤しています。
主な役割は「保護者が就労や病気によって子どもを十分に養育できない場合、保護者に代わって子どもを預かること」です。

一方、幼稚園は文部科学省が管轄している教育施設です。
学校教育法に基づく国家資格「幼稚園教諭一種免許状」を持った「幼稚園教諭」が働いています。
小学校や中学校も管轄する文部科学省に理されている施設なので、教育的な側面が多く、主に「就学前教育」を実践する場所として利用されています。

保育園と幼稚園の違い
保育時間

保育園の保育時間は、基本的に8:00~16:30の8時間程度です。
ただ、朝7:15あたりに早朝保育、夕方16:30以降に延長保育を実施する保育園もあるので、1日の保育時間が合計11時間を超えるケースも。

一方、幼稚園の保育時間は4時間程度です。
基本的に9:00~14:00の間に子どもを預かることが多いです。
ただ、保育園の延長保育のような「預かり保育」を実施している園もあります。

保育園と幼稚園の違い
預かる子どもの年齢

保育園で預かる子どもの年齢は0~5歳です。
生後2カ月の0歳児を預かっている施設もありますが、首がすわった生後4カ月以降の0歳児から受け入れるケースがほとんどです。

一方、幼稚園で預かる子どもの年齢は3~5歳です。
中には「2年保育(4歳から入園)」や、「プレ保育(2歳対象)」を実施している施設もあります。

保育園と幼稚園で「教育格差」はあるのか

保育園と幼稚園とでは、教育格差はあるのでしょうか?
ここでは、保育園出身の子どもと幼稚園出身の子どもの学力レベルの違いや、学力格差の原因について解説します。

大きな教育格差はない

保育園と幼稚園に、大きな教育格差はありません。
もちろん、保育園と幼稚園とで活動内容は異なります。
保育園は主に「生活の場」なので、基本的な生活習慣や「遊び」がメインです。
これに対して、幼稚園は「就学前教育」を目的としている施設が多いので、教育的な内容も活動に盛り込まれています。
とはいえ、近年は「幼保一元化(幼稚園と保育園の一元化を目指す政策)」に伴い、保育園と幼稚園の両方の側面を持った施設「認定こども園」や、幼稚園のようなカリキュラムを取り入れている保育園も増えてきました。
つまり、保育園と幼稚園の境目はなくなってきているというのが現状です。
そのため、かつてのような「保育園は伸び伸びと遊ぶところ」、「幼稚園は勉強するところ」といったイメージは、今では過去のものになりつつあります。

学力レベルに「わずかな差」はある

保護者としては、「保育園出身の子どもと幼稚園出身の子どもを比べると、学力レベルの差はあるのでは?」とうことが気になると思います。

結論から言うと、両者の学力レベルには、「わずかな差」があります。
就学前教育と学力の関係を調査したものがあります。それによると、保育園出身者より幼稚園出身者のほうが学力スコアが高いという結果が出ています。

しかし、前項に書いたように、近年では幼保一元化の動きが大きくなっています。
さらに、文部科学省のデータによると、幼稚園の施設数は昭和60年度をピークに減少しており、保育園と認定こども園が増加しています。
そのため、今後は保育園・幼稚園という垣根のない保育・教育形態が一般的になると予測できるのです。
学力レベルの差も次第に小さくなっていくでしょう。

そもそも学力格差は「しつけ」によるもの

最近では、学力格差の要因が「保護者の収入」にあるのではないか、という指摘があります。
高所得家庭の子どもの方が、低所得家庭の子どもより知能指数が高いというデータはたしかにあり、そうした意見を誤りと決めつけることはできません。

しかし、学力の格差は、しつけによってこそ生まれるというデータもあります。
ベネッセの「しまじろうパペット」を考案し、NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発にも携わっている内田伸子氏(言語発達・認知発達研究者)は、次のように書いています。

幼児期の家庭の収入は、小学校1年の国語学力や語彙力とは関連はなかった。しつけスタイルや保育形態は学力と因果関係があった。

つまり、子どもの学力と関係がより深いのは「収入」より「しつけスタイル」「保育形態」であるということです。

しつけスタイルは主に、「共有型」「強制型」の2パターンに分けられています。

しつけスタイル しつけの特徴 子どもの学力
共有型
  • 子どもを一人の人間として尊重する
  • 子どもとのふれあいや会話を大事にして、楽しさを共有する
  • 夫婦の会話も大事にしている
国語学力や語彙力が高い
強制型
  • 「子どもをしつけるのは親の役目」「自分の思い通りに子どもを育てたい」というしつけ方
  • 場合によっては罰を与えたり、責め立てたりする
  • 力によるしつけを行うこともある
  • 低所得・高所得の家庭どちらにも見られる
国語学力や語彙力が低い

また、一斉保育で文字の読み書きや計算などに取り組む子どもより、自発的な遊びを優先する保育を受けた子どもの方が、学力が高く語彙力も豊かであるという結果も出ています。
つまり、子どもの施設でも家庭でも、子どもの学力を伸ばすには「子どもの主体性を尊重するしつけ」が求められるのです。

子どもにとっての「学び」とは何か

保育園や幼稚園は、学力だけではなく、「学び」を養う場所でもあります。

子どもにとっての「学び」には多くのものがありますが、中でも以下の4つが重要です。

  • 生活習慣
  • 人との関わり
  • 情緒や感性の発達
  • 言語・音楽・美術に親しむ

子どもにとっての学び① 生活習慣

子どもに計算や英語などの学力をつけさせることも大事ですが、それ以前に、規則正しい生活習慣を身に付けることはより大切です。

保育園でも幼稚園でも、生活習慣を促すために次のような内容が取り入れられています。

  • 衣類の着脱
  • 排泄
  • 時間を守って行動する
  • ご飯を食べる
  • 片付ける
  • 手洗い・うがい

保育園の場合は、「お昼寝」も生活習慣の一部として加わります。
基本的に、どちらの施設でも「身の周りのことを自分で済ませる=自立」を促すという点では同じです。

子どもにとっての学び
人との関わり

子どもにとって、人との関わりを学ぶことにも大きな意義があります。

それまでは家族とだけ関わってきた子どもにとって、保育園や幼稚園は、人間関係を広げる良い機会です。
友だちや保育士・幼稚園教諭との関係の中で、子どもは思いやりや譲り合いの心、自制心などを学んでいきます。
また、どちらも「集団生活の場」なので、社交性やルールを守る精神も養われるでしょう。

子どもにとっての学び
情緒や感覚の発達

保育園や幼稚園では、子どもは友だちや保育士・幼稚園教諭、地域の人々と関わる中で、情緒面も成長していきます。

友だちと遊んで楽しんだり、ときにはケンカしたりすることもあるでしょう。そうした経験の中で、喜怒哀楽の感情を表現できるようになったり、相手の気持ちを思いやる「共感力」が養われたりしていきます。
また、散歩や野菜の栽培、動物との触れ合いの中で、季節感も身に付いていきます。
絵本やおもちゃなど、さまざまなものに触れることで、感覚神経も研ぎすまされていくでしょう。

子どもにとっての学び
言語・音楽・美術に親しむ

保育園や幼稚園では、子どもが言語・音楽・美術に触れる機会をたくさん設けています。

例えば絵本や普段の会話では、子どもの言語能力が養われます。
歌や楽器、ダンス、お絵描きや工作の中では、芸術的センスや感性も育まれるでしょう。

幼少期における言語や感性は、就学後にも影響を及ぼすものです。
保育園・幼稚園を選ぶ際は、こういった活動をメインに取り入れている施設がおすすめです。

結論:保育園と幼稚園に大きな教育格差はない

ここまで説明してきたように、保育園と幼稚園に大きな格差はありません。

保育園出身者と幼稚園出身者で比べると多少の学力レベルがありますが、幼保一元化が進む現在、その差はなくなりつつあります。
どちらの施設がいいかということよりも、子どもの主体性を大事にした園や、言語・音楽・美術などの学びがさかんな保育園、幼稚園を選ぶべきです。

 


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