園内研修は、実施する時間帯、参加者の数や対象、テーマに至るまで、園によってさまざまです。
「このやり方は効果的なのかな」と不安を持つマネージャーもいるかもしれませんね。
最近では「アクティブラーニング」が一般化しつつあり、テーマについて参加者が意見を出し合い、学び合うスタイルの園内研修も増えている傾向にあります。
今回は、ただ一方的に知識伝達するのではない、「ファシリテーション」を駆使した園内研修について考えてみることにしました。
この記事のもくじ
「ファシリテーション」って、どんなものだろう
ファシリテーションとは、進行役が研修に参加している人の考えを深めたり、発言を促したり、話の流れを整理したりしながら、参加している人同士の学び合いを促すことです。
この進行役を「ファシリテーター」と言います。
これまで学校で行われてきた従来の教育は、教師が一斉指導によって指示・伝達し、成果・結果を重視するというものでした。
一方、ファシリテーションによる研修では、ファシリテーターが参加・対話型の手法を使って、プロセスを重視した協働的な学びを促します。
参加・対話型の手法としては、体験学習や協同学習と呼ばれるアクティブラーニング等が代表的で、研修の成果・結果だけではなく、参加者同士の関係性や感情、気付きや影響も重視します。
また、組織や参加者の活性化や協働を促進させるファシリテーターの能力も重視されます。
今までの研修とどこが違うの?
ファシリテーションの手法を取り入れた参加型の園内研修では、参加者の気づきを促しながらファシリテーターも一緒に考えていきます。
目的によっては、従来の知識伝達型の研修のほうが効果的な場合もありますから、研修の目的や、参加者の状況に応じて使い分けるといいでしょう。
効果的な園内研修を行うことによって保育士の共通理解や連携が進めば、子どもや保護者への対応も統一感が生まれ、園としての安心感が高まる効果も期待できます。
ファシリテーションを用いた園内研修の例
それでは、具体的に事前準備から順番に見ていきましょう。
1・テーマの選定
まずは、研修のテーマの設定します。
多くの場合、園内で困り感が出ていることや、必要としていることをテーマに設定します。
「気になる子どもへの対応」「安心して過ごすための園内環境」など、それぞれの保育士の経験や知識を持ち寄りやすく、身近なものからスタートするといいでしょう。
不満が上がっていることをテーマとして全体共有し、それを解決していくこともあります。
2・タイムテーブルの作成
テーマが決まったら、園内研修の時間配分を考えます。時間配分の例は以下の通りです。
オリエンテーション
まず参加者全員で研修のゴールイメージを共有します。研修を通して考えていきたいことを明確にし、ねらいや目的が達成できることを目指します。ファシリテーターの役割は、全体説明と問題の提起です。
②3つのルールと4つの心構えを守るように全員に伝えます。このルールは配布資料の最初に記載したり、ホワイトボードに貼っておくことで、研修中にいつでも見えるようにしておきましょう。
次に、3つのルールを全員に説明してください。
- 質より量を出すこと(たくさんの考えを出すこと)
- 連想することも入れること(似た意見でもよい)
- 発言したからと言って、実行する責任はないこと(思ったことを率直に表現すること)
次に、4つの心構えを全員に説明してください。
- 楽しく参加すること
- 意見の批判、誹謗中傷はしないこと
- 人の意見をしっかりと聴くこと
- グループメンバーみんなが話せるように配慮すること
アイスブレイク
本題に入る前に、ちょっとしたウォーミングアップを行って参加者の気持ちをほぐし、意見を出しやすくします。
たとえば「今日1日で嬉しかったこと」「気になるにニュース」のような誰もが話しやすいことを順番に話してもらうといいでそう。
ファシリテーターは笑顔を心がけ、 楽しいムードを演出しましょう。
テーマの掘り下げ
研修の本題テーマについて、それぞれの状況を提示し合います。その状況に対して、意見交換を行い、全体の意見を確認していきます。
ファシリテーターは、初めにどの参加者も経験していそうな場面を説明し、全員が共感して考えられるように働きかけます。
参加者はそれに対する感想を文章化し、発言していきます。文章化することで、気づいたことや考えの変化を自覚できます。
多様な意見が出ることで、参加者の気づきが深まっていきますので、ファシリテーターは、できるだけ多くの考えを出すように声かけを行います。
次のような工夫をすると、意見を出しやすくなります。
- 新人・中堅・ベテランの座る位置を工夫する
- 少人数のグループに分かれたり、グループのメンバー入れ替えたりして話し合う
- 付箋を用いて、意見を可視化する
一定数以上の参加者がいる場合は、グループに分けて進めれば、グループの考えをまとめて整理する過程を通じて、それぞれの参加者の中にあった考えと今までになかった考えを意識し、さらなる気づきにつながります。
ファシリテーターはグループの様子を確認し、意見が出にくいグループや考えがまとまらないグループがあれば、アドバイスを兼ねた声かけをしましょう。
振り返り・共有
グループごとに出た意見をまとめ、グループから全体へと視点を広げる時間をとります。
さらに多様な考えにふれることになり、様々な気付きが生まれます。
5グループを超える場合は、2〜3グループに発表してもらい、他のグループで出ていた違う意見については、ファシリテーターが全体に発信しましょう。
全体の一体感を意識して、無理にまとめようとせずに、振り返りを行うことで、様々な意見があることを認識してもらいます。
個人の振り返り
参加者全員に、感想や気づきを書いてもらいます。文章化することで、後日確認することが明確になり、文章能力も向上します。
効果的なファシリテーションを行うための5つのコツ!
効果的なファシリテーションを行うための、ファシリテーターが意識しておくといいコツをご紹介します。
先入観を持たないこと
人間はつい、先入観で「正解」「不正解」を決めてしまいますが、実際には参加者の数だけ意見があります。
自分の意見に当てはめてジャッジしてしまうことのないように、事前に本を読んだり、違う意見の人の話を聞いたりして、先入観をなくしておきましょう。
準備は入念に
付箋や模造紙、テーブルなどの環境だけでなく、意見が出しやすいように事前に告知しておくことも有効です。
ストーリーをしっかりと描く
タイムテーブルに加え、例題や説明などは、事前にシナリオを用意しましょう。全体のストーリーがスムーズに流れることで、研修がうまくまとまります。
中立的な立場でいるために、進行役であることを意識する
ファシリテーターとは、場を作る人です。
自分の意見を一方的に人に伝えるのではなく、それぞれの参加者の気づきを促す立場であると意識して研修を進めましょう。
雑談や愚痴で終わらないように助言する
グループの中に影響力の大きい人がいると、雑談や愚痴で終わってしまう傾向があります。グループを回りながら、話をテーマに戻すように声をかけましょう。
ファシリテーションは保育と同じ
保育士は日頃から、子どもたちの考えていることや、まだ持っていない言葉を引き出すために、様々なアプローチをしていることと思います。
また、子どもに個別で関わることもあれば、グループやクラスといった集団に対して関わることもあります。
こうしたアプローチは、ファシリテーションの考え方と共通するものです。
子どもたちの声やアイディアを聞き、様子を観察して働きかけ、全体にとって良い道を探していく普段の保育、子どもたちに行っていることを思い浮かべながら研修に入れば、より効果的な研修となるでしょう。
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