保育士の人員配置基準は複雑!手厚い人員配置を維持するには?

保育士の人員配置基準は複雑!手厚い人員配置を維持するには?

何人の保育士を配置しなければならないかということは、国や自治体が「子どもの人数に対する保育士の配置数」によって定めています。とはいえ、この配置基準は保育施設の形態によって異なり、少々わかりにくくなっています。そこで今回は、各施設の配置基準と「手厚い人員配置は何人か」ということを解説しましょう。手厚い人員配置を維持するための工夫も取り上げるので、これから保育施設の開園を予定している方はぜひ参考にしてください。

保育士の配置基準とは?

保育士の配置基準とは、「子どもの人数に対して配置すべき保育士の人数」で定められています。
配置基準を設けることで、子どもの安全を保ちながら、質の良い保育を継続できるとされ、保育士の負担も減り、業務の効率化も期待できます。

国が定めた保育士の配置基準

国が定めた保育士の配置基準は、次のようになっています。

  • 0歳児………………子ども3人に対して保育士1人
  • 1・2歳児……子ども6人に対して保育士1人
  • 3歳児………………子ども20人に対して保育士1人
  • 4歳以上児……子ども30人に対して保育士1人

ご覧のように、この配置基準は、「年齢が低いほど配置数が多く、年齢が高いほど配置数が少ない」という考え方でできています。
たとえば0~2歳児は食事や排せつなどの自立が難しいので、より多くの援助が必要であり、安全を守るという意味合いでも、より多くの保育士の「目」が欠かせません。

ただし、子どもの年齢にかかわらず、保育園に子どもがいる時間には最低2人以上の保育士を配置することが義務付けられています。「今、保育園に0歳児が1人しかいない」という状況でも、2人以上の保育士を配置しなければなりません。

近年は保育士の配置基準が緩和されている

近年は保育現場での人員不足が指摘されています。このため、保育士の配置基準も緩和されるようになりました。
2016年からは、待機児童が解消するまでの一時的な措置として「保育所等における保育士配置に係る特例」が実施されています。

保育所等における保育士配置に係る特例の内容

①朝夕や子どもが少ない時間帯の保育士配置の特例 保育園に子どもがいる時間には最低2人以上の保育士を配置することが義務付けられているが、朝夕や子どもが少ない時間帯は、保育士2人のうち1名は子育て支援員研修を修了した者に代替できる
※都道府県知事が保育士と同等の知識・経験を有すると認める者
②幼稚園教諭・小学校教諭の活用に関する特例 保育士と近い職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を保育士に代えて配置できる
※幼稚園教諭は3歳以上の子ども、小学校教諭は5歳児を中心に保育することが望ましい
※保育を行う上で必要な研修を受講すること
③保育時間と必要となる保育士配置にまつわる特例 8時間以上、開所している保育所(認可の場合)は最低基準を上回る保育士の数を確保する際、保育士の代わりに子育て支援員研修を修了した者を配置できる
※都道府県知事が保育士と同等の知識・経験を有すると認める者

※できるだけ保育士資格取得を促す

※②③の特例適用には、保育士を2/3以上配置することが必要

この特例によって、さまざまな場面で保育士の代わりに、子育て支援員や研修を修了した者、一定期間保育業務に従事した者や家庭的保育者などを配置することが認められるようになりました。
これに対して、「保育の質が落ちるのでは?」という懸念の声がないわけではありません。
しかし保育園の中には、保育士以外の支援員の保育士資格取得をサポートする保育園や、研修を頻繁におこなう保育園もたくさんありますから、工夫次第で保育の質を維持することはできるでしょう。

保育施設の形態と必要な保育士の数

保育園は主に「認可保育所」「認可外保育所」の2種類に分けられていますが、配置基準はそれによっても異なります。

認可外保育施設 認可保育所
  • 企業主導型保育事業
  • ベビーホテル
  • その他
  • 認可保育所
  • 幼保連携型認定こども園
  • 地域型保育事業(家庭的保育事情・小規模保育事業・事業所内保育事業・居宅訪問型保育事業)

 
それでは、各保育施設の配置基準をチェックしていきましょう。

施設別の保育士数
認可保育所の場合

認可保育所の場合
認可保育所(認可保育園)とは、国が定めた設置基準をクリアして都道府県知事の認可を受けている保育施設です。
保護者が仕事や病気によって日中に育児できない場合、0歳~小学校就学前の子どもを預かり、保育します。
公立保育園(市区町村が運営)と私立保育園(民間企業・社会福祉法人が運営)に分かれます。

認可保育所の配置基準

  • 0歳児…子ども3人に対して保育士1人
  • 1・2歳児…子ども6人に対して保育士1人
  • 3歳児…子ども20人に対して保育士1人
  • 4歳以上児…子ども30人に対して保育士1人

このように、認可保育所の配置基準は国の配置基準と同じになっています。

施設別の保育士数
幼保連携型認定こども園の場合

幼保連携型認定こども園
幼保連携型認定こども園とは、保育園と幼稚園の機能をあわせ持った施設です。
通称「認定こども園」と呼ばれています。

幼保連携型認定こども園の配置基準

  • 0歳児…子ども3人に対して保育士1人
  • 1・2歳児…子ども6人に対して保育士1人
  • 3歳児…子ども20人に対して保育士1人
  • 4歳以上児…子ども30人に対して保育士1人

配置基準は国の配置基準と同じですが、満3歳以上の子どもクラスは「1学級の幼児数は35人以下を原則」として、専任の保育教諭を1人置くことが義務づけられています。

施設別の保育士数
認可外保育所の場合

認可外保育所認可外保育所とは、無認可は都道府県知事から認可を受けていない保育施設です。
主に「企業主導型保育事業」「ベビーホテル」が含まれます。

認可外保育所の配置基準

  • 開所時間が11時間以内の場合…児童福祉施設最低基準に定める数以上(常時2名以上配置)
  • 開所時間が11時間以上の場合…保育されている子どもが1人である場合を除いて、常時2名以上配置

開所時間によって配置基準が変わるのが、認可外保育所の特徴です。

施設別の保育士数
認可外保育所「認証保育園」の場合

認証保育園
認証保育園とは、東京都が独自に設置した保育園です。
東京都が定めた設置基準をクリアした施設だけが、認証保育園として認められます。
認可外保育所に分類されます。

認証保育園の設置基準

職員配置 職員資格
保育所の配置基準と同じ ※1/3以上が保育士、保健師、看護師、助産師であること
※2/3以上が常勤職員であること

配置基準は国の配置基準と同じですが、1/3以上が保育士、保健師、看護師、助産師であること、2/3以上が常勤職員であることが義務づけられています。

施設別の保育士数
地域型保育事業「小規模保育事業」の場合

認可保育所の場合

地域型保育事業とは、認可保育所に含まれる保育施設で、主に「小規模保育事業」「家庭的保育事業」「事業所内保育事業」「居宅訪問型保育事業」の5つに分けられます。

0~2歳までの子どもを6〜19人ほど預かる小さな保育園である小規模保育事業は、さらにA型・B型・C型の3つに分かれていて、それぞれ配置基準や配置する職員に求められる資格が異なります。

小規模保育事業A型の配置基準

定員 職員配置 職員資格
6人以上19人以下 保育所の配置基準+1人 保育士(全員)

小規模保育事業B型の配置基準

定員 職員配置 職員資格
6人以上19人以下 保育所の配置基準+1人 1/2以上が保育士

小規模保育事業C型の配置基準

定員 職員配置 職員資格
6人以上10人以下 子ども3人に対して家庭的保育者1人(補助者を置く場合は5人に2人) 家庭的保育者

このように、小規模保育事業A型・B型では、通常の認可保育所の配置基準を上回る配置が義務づけられています。
「家庭的保育者」「家庭的補助者」を保育士の代替として配置しているということも特徴になるでしょう。

施設別の保育士数
地域型保育事業「家庭的保育事業」の場合

小規模保育事業地域型保育事業の一つ「家庭的保育事業」とは、保育者の自宅や専用の保育室で、5人以下の満3歳未満の子どもを預かる保育施設のことです。

家庭的保育事業の配置基準

子ども3人に対して家庭的保育者1人(補助者を置く場合は5人に2人)

これは小規模保育事業C型の配置基準と同じ配置基準ということです。

施設別の保育士数
地域型保育事業「事業所内保育事業」の場合

事業所内保育事業地域型保育事業の一つ「事業所内保育事業」とは、企業が主体となって運営する保育施設です。
設置企業で働く従業員の子どものほか、保育を必要とする地域の子どもを預かっています。

事業所内保育事業の配置基準

子どもの年齢 定員 配置基準
0~2歳 19人以下 小規模保育A型B型と同じ
0~2歳 20人以上 保育所の配置基準と同じ

地域型保育事業の配置や面積の基準は、定員数によって異なることが特徴です。

施設別の保育士数
地域型保育事業「居宅訪問型保育事業」の場合

居宅訪問型保育事業地域型保育事業の一つ「居宅訪問型保育事業」は、ベビーシッターや保育士が保護者の自宅を訪問し、市町村長が「保育が必要」と認める3歳未満の子どもを保育するサービスです。

居宅訪問型保育事業の配置基準

配置基準 職員資格
保育者1人につき乳幼児1人 家庭的保育者

基本的にはワンツーマンで保育します。

望ましい保育士の配置数と手厚い人員配置を維持する工夫とは?

ここまで施設別に配置基準を説明してきましたが、かなり複雑に入り組んでいることがおわかりいただけたかと思います。
いったい、望ましい保育士の配置数は、何人なのでしょうか?
手厚い人員配置を維持する工夫もについても紹介します。

望ましい保育士数は「国の配置基準+1~2人」

国の配置基準は、子どもの安全や保育の質を守るための基準です。
しかし、この数は「最低基準」であることということを忘れてはいけません。
「国の配置基準はクリアするのは最低限の前提」と考えて、国の配置基準+1~2人を配置するのが望ましいでしょう。

手厚い人員配置を維持するためには

手厚い人員配置を維持するためには、当然のことながら、人件費がかかります。
認可保育園の場合は、国から補助金が支給されるので、それを人件費にあてることができます。
しかし、「国の配置基準+1~2人」を配置するには、さらに人件費が必要になります。
ただ、福利厚生を充実させ、給料を高く設定するなど労働環境を整えることで離職率が下がり、新たに保育士を採用するコストを下げることができるでしょう。
労働環境の改善・改革こそが、手厚い人員配置を維持する大きな鍵だと思います。

人件費のバランスを考えながらの手厚い人員配置がベスト!

保育施設の形態によって、保育士の配置基準は異なります。
より安全に保育を実践したいなら、国の配置基準+1~2人を配置するのがおすすめです。
人件費のバランスを考えながら、手厚い人員配置を心がけましょう。

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