保育園、幼稚園に続く保育・教育施設として、こども園が浸透しつつあります。子ども園で働くためにはどんな資格が必要でしょうか。今回はこども園で必要な資格や、新たなポジション“保育教諭”について、そして「資格なしOKの求人はあるか」といったことを解説します。
なお、こども園については、こちらの記事で詳しく説明していますのでご一読くださいね。
こども園で働くために必要な資格
近年、こども園は、保育園・幼稚園の要素を兼ね備えた施設として注目を集めています。
施設数も毎年増加しており、求人を見かける機会も増えてきました。
「こども園で働きたい」と考える人も多いのではないでしょうか。
子ども園で働くために資格(免許)は、そのこども園の形態によって異なっています。
まずはこども園で働くのに必要な資格(免許)をチェックしておきましょう。
子ども園で必要な資格①
原則は「保育士資格」「幼稚園教諭免許」
まず、「保育士資格」「幼稚園教諭免許」はこども園で働くために必要です。
職員の要件 | |
幼保連携型 | 幼稚園教諭免許+保育士資格 |
幼稚園型 |
|
保育所型 |
|
満3歳以上→幼稚園教諭免許+保育士資格の併有が望ましいが、いずれかでも可 満3歳未満→保育士資格が必要 |
こども園の中でも、幼保連携型では保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要です。
それ以外(幼稚園型・保育所型・地方裁量型)のこども園では、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方の取得を推奨していますが、実際にはどちらかを持っていれば働けます(保育資格の免許がのぞましい)。
ただ、それは3歳以上と関わる場合のことで、3歳児未満のクラスを受け持つ場合は両方(保育士資格も)が必須です。
参考:
内閣府「認定こども園概要」
内閣府「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」
子ども園で必要な資格②
幼保連携型では「保育教諭」
前項で、幼保連携型では保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要と書きましたが、これは、幼保連携型では各クラスに「保育教諭」を1人以上配置する義務があるからです。
聞いたことがない方もいると思いますが、この保育教諭というのは、保育士資格と幼稚園教諭免許を取得していて、なおかつ幼保連携型の認定こども園で働く職員のことです。
2015年度の「子ども・子育て支援新制度」に伴って生まれた新しいポジションです。
保育教諭は、保育士資格や幼稚園教諭免許のように資格取得のための試験がありません。
保育士資格と幼稚園教諭免許があれば、保育教諭として働けるのです(ただし幼保連携型のこども園に限る)。
保育教諭は0~5歳の子どもの保育・教育を実践できるわけですから、いわば「保育のプロフェッショナル」とも言えます。
近年、預かり保育によって保育時間が長期化した幼稚園でも、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を求めることが多いようです。
今後は幅広い保育施設で2つの資格(免許)をもつ人材が求められるようになるでしょう。
免許・資格がない人のための「経過措置」
勤め先がこども園に変わったりした場合、現場で働いている職員がどちらか一方の資格(免許)しか持っていないというケースがあります。
そこで、次のような「経過措置」が設けられています。
経過期間中は片方の資格(免許)しかなくても働ける
経過措置とは、どちらか一方の資格(免許)しか持っていなくても、その職員が「保育教諭」として働けるという措置です。
ただし経過措置ですから、働けるのはあくまで一定期間だけで、それを経過したときに保育士資格と幼稚園教諭免許を有していないと、保育教諭として働くことはできなくなります。
つまり、経過期間中に、働きながら持っていない方の資格(免許)を取得しなければならないのです。
参考
文部科学省「幼保連携型認定こども園における保育教諭の幼稚園教諭免許状の更新について」
厚生労働省「保育教諭の免許状・資格取得に係る特例制度について」
内閣府「保育教諭の資格特例について」
経過期間中は試験内容や履修科目数が一部免除される
保育士資格・幼稚園教諭免許のどちらかを持っており、一定の条件を満たしていれば、持っていない方の資格(免許)を取得するための試験内容や履修科目数が一部免除されます。
対象者
- 幼稚園教諭免許を取得していて、3年かつ4320時間以上の実務経験がある人
- 保育士資格を取得していて、3年かつ4320時間以上の実務経験がある人
幼稚園教諭免許を取得している人(実務経験あり)
→「教育原理」「保育の心理学」「保育実習理論」「実技試験」の受験を免除
→保育士養成施設で所定科目8単位の履修により、保育士試験の筆記試験を全科目免除
所定科目:「福祉と養護(講義2単位)」「子ども家庭支援論(講義2単位)」「保健と食と栄養(講義2単位)」「乳児保育(演習2単位)」の8単位
※通常は34単位履修により、筆記試験免除
保育士資格を取得している人(実務経験あり)
→大学等で所定科目の8単位を修得して教育職員検定に合格すれば、幼稚園教諭免許が授与される
所定科目:「保育内容の指導法・教育の方法及び技術(2単位)」「・教職の意義及び教員の役割・職務内容(チーム学校運営への対応を含む:2単位)」「・教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(学校と地域との連携及び学校安全への対応を含む:2単位)」「教育課程の意義及び編成の方法(1単位)」「幼児理解の理論及び方法(1単位)」
※幼稚園教諭一種免許を取得する場合、通常は59単位(二種の場合は39単位)が必要
幼稚園教諭免許をもつ人が保育士試験を受験する場合には「保育の心理学」「教育原理」「実技試験」が免除されますが、上記の特例制度では、保育士養成施設で特例教科目を8単位修得していると、保育士試験は全科目免除になります。資格取得のハードルがぐんと低くなったわけです。
特例教科目を学んでいなくても「保育の心理学」「教育原理」「保育実習理論」「実技試験」が免除されるので、保育士養成施設に通わない人の負担が軽減されています。
また、保育士資格を持っている人は、この特例制度によって、所定科目の8単位を修得し、教育職員検定に合格すれば、幼稚園教諭免許をとれることになりました。
ちなみに、所定科目を修得するために保育士養成施設(大学等)に通う場合の費用相場は6~7万円程度ですから、これまでスクールや保育士養成施設に通って資格(免許)を一から取得するのに数十万~数百万ほどかかっていたのが、特例制度を利用すればその費用を最小限に抑えられるのです。
参考:
厚生労働省「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」
厚生労働省「特例制度の概要について」
文部科学省「認定こども園法改正に伴う幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例について」
一般社団法人全国保育士養成協議会「特例制度について」
タイムリミットは2025年3月まで!
上記のような特例措置・特例制度によって、保育士資格・幼稚園教諭免許の両方を取得する保育者が増えていますが、こども園はそれ以上のペースで増加しているので、保育教諭はまだまだ不足している状況です。
このため、設置当時は「2019年度末まで」とされていた経過措置・特例措置は、現在、2025年3月まで延長されています。
期限があることには変わりないので、できるだけ早めに資格(免許)を取得しましょう。
参考
文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」
文部科学省「幼保連携型認定こども園における保育教諭の幼稚園教諭免許状の更新について」」
「資格なしでもOK」の求人を出しているこども園はある?
こども園で働きたいけれど、保育士資格・幼稚園教諭免許のうちどちらかしか持っていなかったり、どちらも持っていないという人も多いようです。
こども園は「資格なし」でも働けるのか、転職サイト・求人サイトを調査してみました。
資格なしでもOKのこども園①
「資格なしOK」の求人は多い
転職サイト・求人サイトには、「保育補助(アルバイト・パート)であれば資格なし(経験なし)でも採用する」というこども園の求人がたくさんありました。
資格取得のサポートを行っているこども園もあるので、働きながら資格を取得したい人はそのような資格取得支援の有無をチェックすることをおすすめします。
保育補助から保育士になる方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。
資格なしでもOKのこども園②
正社員なら資格取得は必須
転職サイト・求人サイトでのこども園で多い応募条件は、「正社員の場合は保育士資格・幼稚園教諭免許のどちらかを取得していること」というものです。
つまり、両方の資格(免許)を持っていなくても、正社員として働けるということです。
ただ資格がないと正社員として採用されにくいため、転職後すぐに正社員として働きたい人は、あらかじめ2つの資格(免許)を取得しておくことをおすすめします。
資格を取得してこども園で働こう!
こども園で働くには保育士資格や幼稚園教諭免許が必要です。
なぜなら、幼保連携型のこども園の場合、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を取得した「保育教諭」を各クラスに1人以上配置することが義務づけられているからです。
今は経過措置期間中なので、片方しか持っていなくても働くことはできますが、近年の傾向として、乳児~幼児までの幅広い子どもに対応できる人材が求められるようになっていますので、経過期間が終わってしまう前に今後は2つ目の資格(免許)を取得しようとする人が増えるでしょう。
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