2025年、保育園の利用者数がピークを迎え、定員割れになる保育園が増えていく保育の「2025年問題」が迫っています。今回は、保育園や保育士にどのような影響があるか、求められる保育園・保育士になるための方法について解説します。
この記事のもくじ
保育の「2025年問題」とは?
最近、保育業界では、保育の「2025年問題」が話題になっています。これは一体どんな問題でしょうか?
まずは保育の「2025年問題」の内容や原因をチェックしていきましょう。
2025年に保育施設の利用者がピークに
2021年3月、厚生労働省が「2025年に保育園の利用児童数がピークになる」という推計を発表しました(「保育を取り巻く状況について」)。
これによれば、2025年以降、保育園の利用児童数が定員まで到達しない「定員割れ」を起こす保育園が増える見込みが出てきました。
「あれ? 待機児童問題はどうなったの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
たしかに近年は保育業界で待機児童問題が話題に上がることが多く、つまり保育園は足りていない状態でした。
しかし問題解消のために、保育施設の増設をはじめ、さまざまな取り組みが行われた結果、2020年4月時点で待機児童数が0人の自治体は全体の77%となりました。
つまり、待機児童問題はすでに解消されつつあるのです。
そして、このまま進むと保育園の供給数が保育ニーズを上回り、定員割れによって閉園に追い込まれる保育園が増えると予想されます。
保育の「2025年問題」の原因は少子化
保育の「2025年問題」の原因は、主に少子化です。
2015年時点で0~5歳の人口は626万人でしたが、2025年には530万人にまで減少し、その後も減少傾向が続くと推測されています。
さらもにここ数年は新型コロナウイルス影響もあってか、国内の出生率はますます減っている状況です。
実際、2020年1~12 月の累計妊娠届出数は約87万件。過去最小を更新しています。
このまま少子化が続けば、保育園に通う子どもがより少なくなり、保育園の数も減るのは避けられないでしょう。
保育の「2025年問題」で何が起こる?
それでは、保育の「2025年問題」で、保育園や保育士に具体的にどんな影響が出るでしょうか?
考えられるのは、次の3つの問題です。
保育の「2025年問題」の保育園・保育士への影響①
閉園に追い込まれる保育園が増える
先述したように、保育の「2025年問題」によって、定員割れによって閉園に追い込まれる保育園が増える可能性があります。
現在は待機児童問題が解消されてはいるものの、希望の園に入園できなかったときのことを考え、複数の保育園に入園希望を申し込む保護者が多く存在しています。
しかし、保育園の供給数が保育ニーズを上回り、保護者が「保育園を選べる立場」になれば、知名度がある保育園や評判の高い保育園に入園の申請が集まるでしょう。
知名度の低い保育園や、サービスが充実していない保育園は選ばれずに、閉園に追い込まれるかもしれません。
保育の「2025年問題」の保育園・保育士への影響②
保育士の給与・賞与が下がる
保育園(私立の場合)は、公定価格に基づいた委託費(運営費)を受け取って運営されています。
公定価格とは、施設の運営にかかる費用を計算した上で、国が定める基準によって算定された費用の額のことで「基本分単価」と「加算」で構成されています。
基本分単価:子ども1人あたりの月額単価のこと。内訳は人件費・事務費・教材費・給食費など。
加算:人件費や管理費にあてる費用のこと。
公定価格は子どもの人数によって支給額が決まります。
つまり、定員割れの状態になると公定価格に基づいた運営費も下がるのです。
運営費が減った場合、保育士の給与や賞与を減らす保育園側もあるでしょう。
保育の「2025年問題」の保育園・保育士への影響③
「保育士」の採用が狭き門に
2025年以降に保育園の数が減れば、多くの保育士が職を失うことになりかねません。
現在は保育士は不足しており、「保育士1人当たりに対して2件以上の求人がある」状況ですから、転職のハードルも低めです。
しかし、2025年以降は「転職しようにも保育園の数が少なく、なかなか雇ってもらえない」というケースも増えてくるでしょう。
選ばれる保育園になるためにできること3つ
保育園同士の競争の激化が予想される2025年以降、保育園の経営者は「選ばれる保育園」になることを目指す必要があります。
そのためには何をすべきなのでしょうか?
選ばれるために保育園が今からできる3つのことを紹介します。
選ばれる保育園になるためにすべきこと①
SNSを駆使した集客
「定員割れの保育園が増えるのはまだ先のこと」「まだ対策はしなくても大丈夫」と高をくくっている保育園経営者もいるかもしれません。
しかし、今の段階で知名度・人気度がない保育園を、2025年以降に保護者が選ぶとは考えられません。
2025年以降に保護者が選ぶのは「前々から人気があった」「昔から評判が高くて、いつも満員だった」という保育園ではないでしょうか。
そのため、今のうちから知名度のアップや集客を実践する必要があります。
InstagramやLINEなどのSNSを使って保育園の情報を拡散したり、ブログで保育園の特徴やユニークな取り組みを発信したりすれば、興味を持つ保護者が増えるでしょう。
選ばれる保育園になるためにすべきこと②
保護者目線での営業
SNSでせっかく注目を集めても、保育園の見学や説明会までのフローが複雑だったり、対応が遅かったりすると、入園希望者は獲得できません。
確実に入園希望者を獲得したいなら、保護者目線の営業を実践することが必要です。
例えば園の見学も、電話ではなく公式LINEで受け付け、保護者が手軽に申し込めるように説明会をZoomで行う、などといった工夫が考えられます。
仕事でなかなか保育園の見学ができない保護者も多いため、保育園内をVR空間で再現したり、保護者がアクセスしやすい環境をつくったりするのもいいでしょう。
選ばれる保育園になるためにすべきこと③
現場マネジメントで保育士の質を向上
2025年以降は、今よりもさらに「保育の質」が求められることになります。
保育士の教育体制やフォロー体制を整え、保育士の能力を向上させましょう。
こうした体制を整えれば、保育の質の向上による「保護者の満足度アップ」だけでなく、保育士の定着率アップにもつながります。
選ばれる保育士になるためにできること3つ
20205年以降は定員割れの保育園が増え、保育園自体の数も減る可能性があります。
保育園が保育士を選ぶようになる時代において、「選ばれる保育士」になるためにできることを3つ解説します。
選ばれる保育士になるためにすべきこと①
まずはスキルアップ
選ばれる保育士になるために、まずはスキルアップを目指しましょう。
一人ひとりの発達・発育に合わせて適切な保育を行うためのスキルはもちろん、製作、弾き語り、運動などを子どもに教えるスキルや保護者支援のスキルも大切です。
また、重要なポジションでも働けるよう、後輩への教育スキルや、リーダーとして現場を取りまとめるマネジメントスキルなども必要になります。
こういったスキルは「キャリアアップ研修」で学べるので、受講してみましょう。
↓ こちらの記事で詳しく解説しています。
選ばれる保育士になるためにすべきこと②
自分の特技を磨く
2025年以降に保育園の数が減れば、保育士の採用は「狭き門」となります。
採用されるためには、ほかの保育士とは違った魅力をアピールしなければならなくなるでしょう。
ピアノ、絵画、製作、スポーツ、料理など、自分の特技を今のうちに磨いておきましょう。
また、特技とは違いますが、絵本専門士やチャイルドケア、臨床心理士などの資格を取得するのも1つの方法です。
選ばれる保育士になるためにすべきこと③
将来性のある保育園に転職
2025年以降も保育士として働き続けるなら、より将来性のある保育園に転職することも1つの選択肢です。
将来性のある保育園としては、大手の保育園や、サービスが充実していて子どもの数が多い保育園などが挙げられます。
また、近年は保育園と幼稚園のよさを兼ね備えた「認定こども園」が人気です。
今のうちに、こういったニーズの高い保育施設に転職するのもいいでしょう。
↓ こちらの記事を読んでみてください。
2025年以降にすぐ問題が発生するわけではない
今回は保育の「2025年問題」について取り上げました。
ただ、2025年になったとたんに保育園が定員割れを起こし、保育園の数が減っていくわけではありません。
最近は共働き家庭が増えており、保育園のニーズが高まっている状態ですから、2025年になっても、保育園のニーズが急激に減ることはないでしょう。
しかし、十年、数十年経つうちに、働き手である保護者の数がピークを迎えると、保育園の定員割れ問題は確実に発生します。
いずれ来るかもしれない事態に備え、今のうちに求められる保育園・保育士になるためにできることを始めておきましょう。
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