2024年に児童福祉法が改正!保育士の仕事はどう変わる?

2024年に児童福祉法が改正!保育士の仕事はどう変わる?

2024年6月に児童福祉法が改正されます。この改正によって、保育士の仕事内容はどのように変わるのでしょうか? 今回は児童福祉法の改正内容と、それによって保育園・障がい児支援施設・児童養護施設などの保育士の働き方がどんな影響を受けるかをわかりやすく解説します。

そもそも児童福祉法とは?

まず、そもそも児童福祉法とはどのような法律なのかということから説明しましょう。

児童福祉法は「児童の福祉を支援する法律」

児童福祉法は、子どもが良好な環境に生まれ、なおかつ心身ともに健やかに育つよう、保育・母子保護・児童虐待防止対策を含むすべての「児童の福祉」を支援する法律です(内閣府男女共同参画局)。

【児童福祉法の目的】
第1条:すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
第2条:国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
第3条:前2条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。

厚生労働省より

児童福祉法は、「保育・福祉の仕事をしている人にだけに関係する法律」と思っている人が多いかもしれませんが、「すべての国民・国や地方自治体が、子どもの健やかな成長を保障すること」が目的・理念として定められているものです。
つまり、保育士や社会福祉士だけではなく、国全体で子どもを健全に育成する義務・子どもの権利の保障を担う、というのが児童福祉法なのです。

児童福祉法は何度も改正されてきた

児童福祉法は二次世界大戦後に親や家族、家を失った児童の保護が求められる中、1947年に制定されました。
それまでにあった児童虐待防止法や少年教護法は廃止され、児童福祉法の中に取り込まれる形となりました。
その後は時代の変化とともに、何度も改正を重ねることになります。
以下、これまでの児童福祉法改正の内容を大まかにまとめたものです。

改正年 改正の内容
1997年
  • 多様な保育需要に対応した保育所への入所の仕組み、保育料負担の公平化、保育所におけ・子育て相談の充実など、保育所に関する事項の改善
  • 放課後児童健全育成事業の法制化
  • 児童自立支援施策の充実
  • 児童福祉施設の名称および機能などの見直し
  • 児童相談所の機能強化
  • 児童家庭支援センターの創立
  • 母子家庭施策の充実
2000年 児童虐待の防止等に関する法律の成立
2003年
  • 市町村における子育て支援事業の実施
  • 都道府県および市町村による保育に関する計画の作成
2008年 家庭的保育事業(保育ママ)、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業の法制化
2016年
  • 児童福祉法の理念の明確化
  • 児童虐待の発生予防
  • 児童虐待発生時の迅速・的確な対応
  • 被虐待児童への自立支援
2020年
  • 親などによる体罰を禁止
  • 児童相談所に弁護士・医師・保健師を配置
  • 児童虐待の再発防止のための措置強化

2024年の児童福祉法改正のポイント

それでは、2024年6月に施行される児童福祉法の改正のポイントを紹介しましょう。

児童福祉法の改正ポイント
こども家庭センター&相談機関の設置

今回の改正では、子育て世帯に対する支援のための体制強化・事業の拡充が行われます。
具体的には「こども家庭センター」の設置や、相談支援機関の整備が挙げられます。

【こども家庭センターとは】

  • 虐待や貧困などの問題を抱えた子ども・保護者を支援する「子ども家庭総合支援拠点」
  • 妊産婦や乳幼児の保護者の相談機関「子育て世代包括支援センター」

この2つの期間を一体化した相談機関。子ども・妊産婦などの実情把握、情報提供、相談支援のほか、支援を要する子どもや妊産婦等への支援計画(サポートプラン)作成を行う。

これまで、「子ども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」の2つの機関では、情報共有が不十分で、支援が届かないケースがありました。
今後は、こども家庭センターの設置によって支援が必要な家庭の見落としを防ぐ方針です。

また、今回の改正では、こども家庭センターの設置とあわせて、子育て世帯が相談しやすい相談支援機関を、保育園といった身近な子育て支援の場に整備します。

児童福祉法の改正ポイント
家庭支援事業の強化

今回の改正により「訪問による家事支援」「児童の居場所づくりの支援」「親子関係の形成の支援」など、家庭支援事業が創設されます。

  • 訪問による家事支援…子育てに関する情報の提供、家事・養育にかかる援助といった支援を行う
  • 児童の居場所づくりの支援…養育環境に恵まれない児童に対して安心・安全な居場所を提供するとともに、食事の提供・学習のサポート、保護者への相談支援を行う
  • 親子関係の形成の支援…親子間の適切な関係の構築を目的として「子どもの不適切な行動への対応の仕方」「子どもをより良い行動へと導くためのほめ方・しかり方」といった講義やグループワークを通じて、ペアレントトレーニングを行う

上記の支援を行うほか、困難を抱える妊産婦に一時的な住居や食事提供や、その後の養育等に係る情報提供を行う事業も創設します。

児童福祉法の改正ポイント
障がい児支援の質の底上げ

これまで、未就学の障がい児の発達支援を行う「児童発達支援センター」は、その果たすべき機能や、一般の「児童発達支援事業所」との役割分担が明確になっていませんでした。
今後は、「幅広い高度な専門性に基づく発達支援・家族支援を行う」「地域の障害児通所支援事業所に対して支援内容の助言・援助などを行う」といった児童発達支援センターの役割・機能を明確にして、適切な発達支援の提供につなげます。

児童福祉法の改正ポイント
児童養護施設の年齢制限の撤廃

今回の改正で、児童養護施設などの年齢制限が実質撤廃されるようになります。
今までは、児童養護施設や自立援助ホームなどに入所している児童が上限年齢(例:18、20、22歳)に到達すると、支援や措置が打ち切られていました。
しかし、施設を退所するときに、児童の約5割が「生活費や学費に不安がある」と回答していました。
こうした背景から、今後は児童養護施設などに入所していた児童は、20歳以降に、児童自立生活援助事業を活用して、必要とされる時期まで自立支援を受け続けられるようになります。

児童福祉法の改正ポイント
児童相談所の支援の強化

今後は、児童相談所による支援の強化として、民間との協働による「親子再統合の事業の実施」や、新たな児童福祉施設として「里親支援センター」を創設するといった取り組みが行われます。
また、児童相談所は、入所措置や一時保護といった際に、児童にとっての最善を考慮しつつ、児童の意見・意向を加味した措置のために「児童の意見聴取」を行うといったことも、改正のポイントです。

児童福祉法の改正ポイント
子どもの「一時保護」の判断に司法が介入

児童福祉法の改正により、一時保護の判断の適正性や手続きの透明性を確保するため、一時保護開始時の司法審査が導入されるようになります。
具体的には、児童相談所が一時保護を開始する際に、 親権者などが同意した場合を除き、 保護開始から7日以内に裁判官へ「一時保護状」を請求するといった手続きが設けられます。

児童福祉法の改正ポイント
虐待などに関する新たな資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー(仮称)」の設置

子ども家庭福祉の現場に、ソーシャルワーク分野で専門性の高い人材をできるだけ早く輩出するために、「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー(仮称)」という新たな資格が新設されます。
子ども家庭福祉ソーシャルワーカーは、児童虐待を受けた児童の保護に対応について、十分な知識・技術を有する専門家です。
国の基準を満たした認定機関が認定した研修などを経て取得することができる認定資格で、資格取得には一定の実務経験や研修の修了、試験の合格が必要になる予定です。

児童福祉法の改正ポイント
児童をわいせつ行為から守る環境整備

児童にわいせつ行為を行った保育士の資格管理の厳格化を行うとともに、ベビーシッターなどに対する事業停止命令といった情報を公表・共有します。

参考 厚生労働省 児童福祉法等改正

【施設別】2024年の児童福祉法改正で保育士の仕事はどう変わる?

「保育士」とひと口に言っても、保育園や障がい児支援施設、児童養護施設など、働いている施設はさまざまです。
2024年6月児童福祉法改正で保育士の仕事はどう変わるのか、施設別に紹介しましょう。

児童福祉法改正の影響①保育園
「家庭支援」の業務が増える?

まず、保育園で働く保育士の場合、2024年の児童福祉法改正で「家庭支援」の業務が増えることが予想されます。
今回の改正では「子育て世帯が相談しやすい相談支援機関を、保育園に整備すること」といった内容が含まれています。
相談支援機関が保育園とは別の機関なのか、それとも保育園側で設置するのか…といった点は不明ですが、こうした相談支援機関と連携して、保護者を支援していく機会が増えていくのではないでしょうか。

児童福祉法改正の影響➁障がい児支援施設
「かかわる子どもの年齢が幅広くなる」

放課後等デイサービスは「就学している障がい児」を対象にしており、高校ではなく、専修学校・各種学校へ通学している義務教育終了後の年齢層(15~17歳)は利用対象とはしていません。
今回の改正で、専修学校・各種学校へ通学している障がい児でも、市町村長が認める場合については、放課後等デイサービスの利用が可能となります。
ですので、障がい児支援施設で働く保育士や児童指導員の場合、今後は関わる子どもの年齢が幅広くなるでしょう。

児童福祉法改正の影響③児童養護施設
「自立支援」も仕事に

今回の改正で、児童養護施設などの年齢制限が撤廃されるようになります。
ですので、児童養護施設で働く保育士や児童指導員は、かかわる入所者の対象年齢が幅広くなるだけでなく、今後は入所者一人ひとりの状況に合わせた自立支援を行えるようになります。
また、施設退所者への相談、伴走支援を行うアフターケア事業(社会的養護自立支援拠点事業)も新たに創設されるため、そういった事業機関との連携も増えてくるかもしれません。

2024年の児童福祉法改正への理解を深めよう!

2024年の児童福祉法改正では、子育て支援や自立支援、障がい児への支援が強化されます。
こども家庭センターのほか、子育て世帯が相談しやすい相談支援機関など、新しい機関が設置されるようになり、今後はこうした機関と保育園の連携が必要になるかもしれません。
今のうちに、2024年の児童福祉法改正の内容を押さえて、改正後の対応に備えましょう。

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