利益を出せる保育園経営とは

利益を出せる保育園経営とは

保育園経営の実態」という記事にも書きましたが、経営難で保育園が増えています。赤字に陥らず。経営を安定化するにはどのような対策が必要でしょうか。今回は保育園経営で利益を出す方法について解説します。収支内容やおすすめの保育形態についても触れていきます。

認可保育園の収入源は何か

認可保育園の場合、その主な収入源は保護者から徴収する「保育料」と、自治体から支給される「補助金」です。
あらためて保育料・補助金の内容をチェックしてみましょう。

認可保育園の収入源
保育料はどうやって決まる?

認可保育園の保育料は、自治体によって異なります。
自治体は、保育にかかる補助金を支給して保護者の負担を軽減していますが、その額は自治体の財政状況によって額は変わります。
つまり、地域によって保育料には差があります。
今は幼保無償化によって、「3歳児以上の子ども」「0歳児〜2歳児以内住民税非課税世帯の子ども」の保育料が免除されています。しかし上記以外の子どもの保育料は、住民税額(所得)によって変動します。
ちなみに、厚生労働省「平成27年 地域児童福祉事業等調査の概況」によると、子ども1人あたりの保育料の平均額は月額2万1138円となっています。

保育料はこのように、地域の世帯収入と地域の財政状況に左右されます。
オプショナルな付加価値をつけることで保育料を増額させるには保護者の書面同意が必要とされますが、「保育の平等性に反する」ということで、実際に自治体がそうしたことを認めた例はまれです。
認められたとしても実費で、利益を上乗せすることはできませんので、保育園の収益改善には寄与しません。

認可保育園の収入源
補助金にはどんなものがある?

保育園経営に欠かせない重要な収入源のもうひとつは、「補助金」です。
補助金は国が決めた公定価格(保育園の運営にかかると想定される金額)から保育料を控除したものです。
公定価格は、「基本分単価」と「加算」で構成されています。

認可保育園の収入源「補助金」の仕組み
補助金は保育園の運営にかかる公定価格から保育料を引いたもの。公定価格は基本分単価と加算に分かれる
金額基本分単価とは「子ども1人あたりの月額単価」のこと。内訳は人件費・事務費・教材費・給食費などです。
子どもの年齢が低ければ、それだけ必要となる保育サービスが多くなるので、金額基本分単価の額は子どもの年齢が低いほど高くなります。
一方、加算とは人件費や管理費にあてる費用。保育所の場合、具体的な加算の内容は次の通りです。

  • 処遇改善等加算Ⅰ(基礎分+賃金改善要件分(5%))
  • 処遇改善等加算Ⅱ(月4万円・5千円)
  • 所長設置加算
  • 3歳児配置改善加算
  • チーム保育推進加算
  • 事務職員雇上費加算
  • 入所児童処遇特別加算
  • 主任保育士専任加算
  • 療育支援加算
  • 栄養管理加算
  • 休日保育加算
  • 夜間保育加算

自治体によっては、公定価格とは別に補助金を支給してくれることがあります。
また、認可保育園の場合は「保育所等整備交付金」「保育所等改修費等支援事業」など、施設整備に関する補助や支援を受けられるため、保育園の補助金はかなり手厚いことがあります。

参考:内閣府「公定価格の仕組みについて」

保育園の支出の内容は?

次に、保育園を運営するために出ていくお金について見ていきます。
人件費や賃料など、いろいろなお金がかかりますが、具体的に「どんなところに」「どれぐらいの」お金を使っているでしょうか。

保育園の支出
いちばん大きい「人件費」

保育園の支出の中で大部分を占めているのは、人件費です。
厚生労働省の調査では、保育園の事業活動支出のうち、人件費が71.2%を占めているという結果が出ています。

保育園の支出の中で大部分を占めるのは人件費
福祉と医療の総合情報サイト「WAM NET(ワムネット)」によれば、定員60人以上の保育所2605施設では、従業員1人当たりの人件費は371万4000円だった(2014年度)。[WAMNET「保育所の経営分析参考指標(平成26年度決算分)」)
人件費には給与だけでなく、各種手当や社会保険料などが含まれていますから、保育士の平均年収(約324万円)を上回ることになります。
また、保育園で働いているのは保育士だけではありません。
管理栄養士や調理員、看護師など、さまざまな職種の人を雇わなければなりませんから、その分の人件費がさらにかかります。

保育園の支出
意外と見過ごせない「広告費」

 
「広告費」は、主に園児募集や保育士募集などにかける費用です。
具体的には、チラシの印刷代や求人広告掲載費などが挙げられます。
一般的な保育園の広告費用は、売り上げの1~3%程度のようです。

保育園の支出
どうしてもかかる「賃料」

施設や土地を借りている場合は、その賃料もかかります。
厚生労働省の調査によると、賃料関係の費用は年間65万円以上かかっているようです。

保育園の支出
保育にかかる「消耗品費」

消耗品費は、主におもちゃや工作の材料、医薬品などです。
こちらの費用は園の規模によって異なりますが、基本的には売り上げの1~3%程度かかるといわれています。

保育園の支出
ばかにならない「水道光熱費」

地域によっても差がありますが、水道光熱費は年間30~60万円ほどかかるようです。
たくさんの子どもがトイレを使いますし、乳児の沐浴で水を使ったり、給食の準備や片付けで水やガスを使ったりしますからね。
電気代も教室の数だけかかるので、水道光熱費はかさみやすい費用です。

参考:幼稚園・保育所等の経営実態調査結果(収支状況等)

利益を出す保育園経営とは

それでは、利益を出せる保育園経営を5つ紹介します。
利益を出すとは、簡単に言うと、上で説明した収入よりも支出を減らすということです。
時間をかけてじわじわと利益を出す方法と、すぐに利益を出しやすい方法までピックアップしましょう。

保育園経営で利益を出す方法
水道光熱費を下げる

支出を減らすと言っても、人件費や賃料などの固定費は、保育園運営にどうしても必要なものですから、なかなか削減できません。
すぐに削減できるものといえば、「水道光熱費」があります。
使っていない教室の電気を消したり、トイレの電気を小まめに消したりするなど、できることから始めてみましょう。
長寿命で発光効率のいいLEDライトに付け替えれば、電気代をさらにカットできるかもしれません。

保育園経営で利益を出す方法
広告費を減らす

コストカットで意外と見落としてしまうのは、広告費です。
求人中の保育園では、期間を定めずに複数の転職サイトに求人票を掲載していることもあると思います。
掲載しているサイトが多ければ多いほど、職員を確保できる可能性は高まる一方で毎月の費用はかさんでいきます。
転職サイトによっては求人している施設数も膨大な数ありますので、よほど工夫をしないと、求人の効果は上がらない可能性もあります。
「すでに園で働いている保育士に求職中の保育士を紹介してもらう」「一時的に日雇いを取り入れる」などの工夫をして、継続的な広告費をかけずに人材を獲得することも検討してみましょう。

保育園経営で利益を出す方法
預かる子どもの数を増やす

「支出」を減らすだけでなく、「収入」を増やすことも考えましょう。
預かる子どもの数が増えれば保育料が増え、その分経営が安定します。
ただし、経営を安定させるには、子どもを増やすだけではなく、質の良い保育を提供し続けることも大切です。
質の良い保育を心がければ、保育園の評判が良くなり、その園に通いたいという家庭も自然と増えていくはずです。
そうすれば定員割れで赤字になるというリスクも避けられます。

保育園経営で利益を出す方法
保育士の定着を目指す

保育園経営において、利益を出すにも、経営を安定化するにも、保育士の定着は欠かせません。
今働いてくれている保育士が離職してしまうと、また新しい人材を確保するまでに、広告費用がかかるだけでなく、現場保育士の負担が増え、残業が増えて残業代がかさみます。
残業が続いて現場が疲弊すると、さらなる離職者が出ることも予想されます。
そんな状況に陥らないように、労働環境や福利厚生を見直し、保育士たちが定着してくれるような環境をつくりましょう。
ちなみに、保育園の退職理由で特に多いのは「人間関係」です。
職員の人間関係をしっかり把握し、定期的な個人面談・メンタルケアを行ったりするのも有効です。
以下のインタビューも参考にしてください。

感情労働からの脱却で保育士の働き方を変える~そやま保育経営パートナー 楚山和司氏インタビュー

利益を上げやすいのは企業内保育園

より利益を求めるなら、企業のオフィスに併設されている「企業内保育園」がおすすめです。
企業内保育所は、主に企業の従業員が子どもの預ける施設で、従業員の働き方に合わせて、夜間保育や休日保育など、さまざまな保育を展開できます。
企業が運営する保育園ですから、その企業が保育サービス以外で得た利益を保育に使うこともできますし、企業の強みを生かした付帯サービスも展開できます。
自治体の認可がなくても、国から助成金がもらえるということもポイントです。

独立して保育園の経営をしたいという人は企業内保育園を視野に入れてみることをおすすめします。

こちらの記事もどうぞ