保育園・幼稚園からこども園に移行するメリットとは

保育園・幼稚園からこども園に移行するメリットとは

「こども園」は、保育園・幼稚園に続く新たな保育施設です。近年はこども園に移行する施設が増えているため、人気の秘密を知りたい人もいるかもしれません。今回は、こども園に移行するメリットや、保育園・幼稚園との違いを経営者目線で解説します。

こども園とはどんな施設なのか

こども園とは一体どんな施設で、いつから始まったのでしょうか?
まず、こども園の特徴や成立の背景を解説します。

こども園とは、保育園と幼稚園の両方のよさを兼ね備えた施設

認定こども園(通称:こども園)は、教育・保育の両方を行う施設のことです。いわば、保育園と幼稚園の両方の側面を持ち合わせている施設と言えます。
こども園の入園対象は0歳~5歳の就学前の子どもです。
幅広い年齢の子どもが入園できるため、集団活動・異年齢交流をする中で、すこやかな育ちを支援できます。
こども園では、3~5歳の保護者なら就労の有無にかかわらず施設を利用できます。
園側は、育児に不安を感じている専業主婦家庭への支援をはじめとする「地域子育て支援」を行います。

参考:内閣府「認定こども園」

「認定こども園制度」がスタートしたのは2006年

2006年、「就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律」が施行され、認定こども園制度が始まりました。
この法律は、保育園や幼稚園のうち、以下の機能を備える施設が、都道府県から認定こども園として認定される仕組みを設けるというものです。

  • 就学前の子どもに教育・保育を提供する機能
  • 地域における子育て支援を行う機能

保育園と幼稚園もそれぞれの社会的ニーズにこれまで応えてきましたが、近年は就学前の保育・教育のニーズが多様化しています。たとえば従来は保護者が「就労」のために施設を利用するというニーズに応えて保育園がありましたが、実際には「保護者が働いていなくても施設を利用したい」というニーズも増えているのです。
こうした背景を受け、政府は、地域で子どもが健やかに育つ環境が整備されるよう、就学前の子どもに対する保護者の子育てを総合的に支援するために、認定こども園制度を開始しました。

参考:文部科学「認定こども園について」

こども園はまだまだ少ないが増加中

こども園は全国にどのくらいの施設数があるのでしょうか?
文部科学省によると、令和元年時点で5207のこども園があります。
保育園の施設数は3万30園、幼稚園の施設数は1万70園なので、保育施設としてはまだまだ少ない施設数です。
ただ、近年、幼稚園の施設数が減少する中で、こども園の施設数は1000園単位で毎年増加している傾向にあります。
つまり、幼稚園からこども園に移行する施設が増えているおです。
なぜ移行する園が増えているのか、ということは本記事の後半で解説しますね。

こども園の種類

こども園にも、4つの種類があります。
それぞれの形態の特徴についてチェックしていきましょう。

幼保連携型のこども園

保育園の機能と保育園の機能、両方の機能を兼ね備えた、最もポピュラーなこども園の施設形態です。
「認定こども園」として独立した施設であり、設置パターンは主に「新設」、もしくは「もともと保育園・幼稚園だった施設が認定こども園としてリニューアル」の2つです。
主に、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」に基づいた保育・教育を行います。

法的性格 学校かつ児童福祉施設
設置主体 国、自治体、学校法人、社会福祉法人
職員の要件 幼稚園教諭免許+保育士資格
開園日・開園時間 11時間開園、土曜日の開園が原則(弾力運用可)

幼稚園型のこども園

認可幼稚園が保育時間を確保し、保育園の機能を備えてできた施設形態のこども園です。
幼稚園が幼稚園型の認定こども園になることで、子どもを預かる時間がこれまの4時間程度から数時間増えるようになります。
ただ、基本的には幼稚園的な要素が強く、「幼稚園教育要領」に基づいた教育がおこなわれます。

法的性格 学校(幼稚園+保育所機能)
設置主体 国、自治体、学校法人
職員の要件 満3歳以上:幼稚園教諭免許+保育士資格の併有が望ましいが、いずれかでも可
満3歳未満:保育士資格が必要
開園日・開園時間 地域の実情に応じて設定

保育所型のこども園

認可保育所が、保育が必要な子ども以外の子どもを受け入れることに加え、幼稚園の機能を備えた施設形態のこども園です。
保育園からの移行のため、保育園的な要素が強く、基本的には「保育所保育指針」に基づいた保育が実施されます。

法的性格 児童福祉施設(保育所+幼稚園機能)
設置主体 制限なし
職員の要件 満3歳以上→幼稚園教諭免許+保育士資格の併有が望ましいが、いずれかでも可 ※ただし、教育相当時間以外の保育に従 事する場合は、保育士資格が必要 満3歳未満→保育士資格が必要
開園日・開園時間 11時間開園、土曜日の開園が原則(弾力運用可)

地方裁量型のこども園

保育園・幼稚園以外の地域の保育・教育施設が、認定こども園として移行するタイプです。
「認可外施設」に位置付けられますが、保育・教育内容は、一般的な認定こども園と同じです。

法的性格 幼稚園機能+保育所機能
設置主体 制限なし
職員の要件 満3歳以上→幼稚園教諭免許+保育士資格の併有が望ましいが、いずれかでも可 満3歳未満→保育士資格が必要
開園日・開園時間 地域の実情に応じて設定

こども園と保育園・幼稚園の違い

一般的なこども園と、保育園・幼稚園には、異なる部分がたくさんあります。
主に異なるのは、以下の項目です。

こども園 保育園 幼稚園
管轄 内閣府・文部科学省・厚生労働省 厚生労働省 文部科学省
根拠法令 就学前の子どもに関する教育、保育 など総合的な提供の推進に関する法律 学校教育法に基づく学校 児童福祉法に基づく児童福祉施設
対象 保育を必要とする子ども・必要としない子ども 保育を必要とする乳児・幼児 満3歳~小学校就学の始期に達する までの幼児
保育・教育の
基準
「保育所保育指針」に基づく保育・ 「幼稚園教育要領」に基づく教育 保育所保育指針による保育 幼稚園教育要領による教育
保育・教育の
時間
4時間もしくは8時間 原則8時間 4時間(基準)
必要となる資格 ・満3歳以上→幼稚園教諭免許+保育士資格の併有が望ましいが、いずれかでも可 ・満3歳未満→保育士資格が必要 保育士資格 幼稚園教諭免許

こども園に移行するメリット

記事前半でも述べたように、近年はこども園に移行する保育園や幼稚園が増えています。
こども園に移行することにはどんなメリットがあるのでしょうか?

こども園に移行するメリット
入園する園児の幅が広がる

こども園では、保育を必要とする子どもも、必要としない子どもも預かることができます。
また、これまで3歳から就学前の子どもまでを預かっていた幼稚園がこども園に移行した場合、0~2歳の子どもも確保できるようになります。
入園する園児の幅が広がることで、乳児保育や大人数を生かしたイベントなど、これまでは取り組めなかった保育を実践できるでしょう。

こども園に移行するメリット
幅広い年齢の園児を確保することで経営が安定

入園児が少ないために経営不振に陥る園は少なくないことは、下記の記事でも紹介しました。

赤字、廃業、倒産……保育園経営の実態


保育園に移行すれば、幅広い年齢の園児を確保できるため、経営を安定させられます。
実際、ベネッセ教育総合研究所が行ったこども園の移行に関するアンケートで、「こども園になったことのよさ」をたずねた結果、20.4% の園が「園児数が増えて、園の運営・経営が安定する」を選択しています。

参考:ベネッセ教育総合研究所「認定こども園の運営上の課題と工夫」

こども園に移行するメリット
施設型給付金を受け取ることができる

こども園は、保育園や幼稚園と同様に「施設型給付費」を受け取ることができます。
施設型給付費とは、教育・保育給付認定を受けた子どもが、保育園やこども園などを利用した場合、その経費に対して支給される費用です。2015年の子ども・子育て支援新制度によって新たに定められました。
幼稚園の場合、これまでは私学助成・幼稚園就園奨励費を受け取る一択でしたが、新制度では、私学助成・就園奨励費補助を継続するか、施設型給付費を受け取るかを選択できるようになりました。
私学助成金はあくまでも「助成」ですから、施設の主な収入源は保護者から徴収したお金です。
これに対して、施設型給付費は、施設型給付費単体で施設経営が成り立つほどの補助金のため、安定した経営を狙うなら、こちらを選ぶ方がおすすめです。

こども園に移行するメリット
保育園よりも加算項目が多い

上記の「施設型給付費」には、さまざまな加算が用意されています。
保育園よりもこども園の方が加算項目は多く、経営に有利です。

【保育園の主な加算項目】

  • 職員配置加算(3歳児)
  • 主任保育士専任加算(+子育て支援活動費)
  • 処遇改善等加算
  • 小学校接続加算
  • 第三者評価受審加算
  • 減価償却費等加算

【こども園の主な加算項目】

  • 副園長・教頭配置加算
  • チーム保育加配加算
  • 職員配置加算(3歳児)
  • 処遇改善等加算
  • 小学校接続加算
  • 第三者評価受審加算
  • 減価償却費等加算
  • こども園の場合、保育園にはない「チーム保育加配加算」が受けられるようになります。
    チーム保育加配加算は、配置基準を満たし、なおかつ余剰人員がいる場合、定員に応じて補助金が増額される内容となっています。

    参考:>内閣府「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」

    こども園に移行するメリット
    園児の転園や退園の確率が低い

    通常の保育園の場合、教育に関心の高い保護者が「3歳になったら幼稚園に入れたい」と考えたり、保護者の就労状況によっては、保育園から幼稚園に入り直したりするケースがあります。
    しかし、保育園・幼稚園の要素を併せ持つこども園なら、教育に関心の高い保護者でも納得して通いやすく、子どもに対する保育の必要性が問われないため、利用を続けてもらいやすくなります。

    経営者を目指すならこども園を視野に入れるのがおすすめ

    今回はこども園の特徴や、保育園・幼稚園との違い、メリットを紹介しました。
    こども園は、保育を必要とする子どもだけでなく、必要としない子どもも預かれるため、園児を確保しやすくなります。
    施設型給付金(公定価格)による手厚い教育・保育が実施できるため、経営も安定するでしょう。
    経営者を目指すなら、こども園も視野に入れてみてはいかがでしょうか?

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