「保育園の園長になりたいけど、必要な資格ってあるのかな?」「園長になるまでを知りたい」という保育士さん向けに、今回は保育園の園長になる条件や「園長になるルート」を解説します。園長の具体的な仕事内容や、園長経験がなくても園長になる方法も合わせて紹介するので、今後のキャリアを検討中の方はぜひチェックしてみてください。
保育園の園長ってどんな役職?
「園長」は、保育園の運営や経営を担う“総責任者”です。
保育士をはじめとする職員の採用や指導はもちろん、クレーム処理や地域や行政などの外部との連携など、幅広い業務を担当します。
一般的な保育士とは違って、会議への出席や外部との交流、書類仕事がメインなので、クラス運営に直接かかわることはありません。
しかし、自分の理想の「保育園づくり」ができる貴重な役職です。
責任者としての大変さはありますが、その分やりがいも大きいでしょう。
保育園の園長の仕事内容
保育園の園長の具体的な仕事内容を解説します。
- 園の経営・お金の管理
- 施設・設備の安全管理
- 職員の面接・採用
- 保護者対応
- 予算計画書・事業計画書などの作成
- 地域・行政・系列園との連携
それぞれの仕事内容を詳しくチェックしていきましょう。
園長の仕事①
園の資金管理
園長の仕事の「肝」は、資金管理です。
資金管理とは、保育園を運営するにあたっての経費や、国から支給される補助金の管理、そのほか保育士・看護師・調理師といった職員たちの給与などを計上して管理する業務です。
保護者から受け取る保育料や、トイレットペーパーや行事用の素材などの「備品」、光熱費などの細かい部分もしっかりと管理します。
規模が大きい保育園の場合、事務担当の職員が計上して園長が最終確認を行ったり、外部へ委託したりすることもあります。
園長の仕事➁
施設・設備の安全管理
施設・設備の安全管理も園長の大切な仕事です。
子どもたちが安心して過ごせる空間を維持するためには、安全管理が欠かせません。
園長は、次のような箇所を随時チェックします。
- 設備に破損がないか
- 保育室の窓やドアが破損していないか
- 棚やパーテーションが倒れやすくなっていないか
- 遊具が壊れていないか
- ジャングルジムやブランコのボルトが緩んでいないか
破損や不具合があれば、修理の手配をします。
そのほか、給食の検食も安全管理業務の一環として、園長が対応します。
園長の仕事③
職員の面接・採用
保育園の職員の面接・採用は、園長の仕事の中でも特に重要な仕事です。
人手が足りないとき、これまで働いていた保育士が退職すると、保育士や看護師、調理師、そのほかアルバイトやパート、派遣の募集をかけます。
基本的には、保育士向けの求人サイトへ掲載料を支払って、求人票を載せるケースが多いようです。
応募者がいれば、転職エージェントや本人とアポを取って、面接の日程を決めます。
その後は履歴書や職務履歴書を確認した上で、面接を行います。
「応募者の適性を判断して、より園に合った人材を採用する」これは保育園の雰囲気や方針にかかわる大切な業務です。
園長の仕事④
保護者対応
クレーム対応や、園内で起こったトラブルなどの対応も、園長の仕事の一つです。
- 担任保育士の対応に不満がある保護者からクレームの電話: 具体的な経緯や不満点をヒアリング
- 子ども同士がケンカして大きなけがに発展した場合: 保育士と保護者の間に立つ・保護者へ謝罪
園長は保護者とのかかわりが薄いと思われがちです。
しかし、いざというときは責任者として保育士の代わりに対応したり、仲介役になったりして、保護者とコミュニケーションを図ります。
その積み重ねによって、「信頼」が生まれるのです。
園長の仕事⑤
地域・行政・系列園との連携
地域・行政・系列園などの外部との連携も、園長の仕事です。
菜園や芋ほり、お祭りや餅つき大会など、地域の方々との交流が図れるイベントを計画したり、事前にアポを取ったりします。
そのほか、行政に補助金の申請や書類の提出なども行います。
系列園がある法人・会社の場合は、園長向けの会議や協会の会合で、系列園の園長たちと交流することもあるでしょう。
保育園の園長になる条件
保育園の園長になるためには、特別な資格や明確な基準などはあるのでしょうか? ここでは、園長になる条件に付いて解説します。
園長になる条件①
特別な資格は必要ない
実は、園長になるための特別な資格というものはありません。
ただし公立保育園の場合は、保育士として勤務した実績、そして昇進試験に合格することが条件になります。
私立保育園の場合は、園長に保育士資格の取得は義務づけられていませんので、事実上は資格なしでも園長になれます。
とはいえ、園長の仕事をするにあたって、保育園内のシステムや業務、現場の状況を熟知することが必要です。
保育士資格の取得、保育士としての勤務実績は求められると思ったほうがいいでしょう。
園長になる条件➁
およそ20~30年の経験が求められる
園長には特別な資格は求められませんが、その代わりに「経験」が求められます。
内閣府の「保育所・幼稚園・認定こども園等に係る実態調査等の中間集計計の状況について」によれば、私立保育所の園長の平均年齢は60.2歳で、平均勤続年数は27年でした。さらに、「処遇改善等加算Ⅰ」によると、園長の平均勤務年数は24年と書かれています。
つまり、園長になるためには少なくとも20年以上の経験が求められるケースが多いわけです。
中には5~10年で園長になった保育士もいますが、基本的には保育のプロとして認められた人が任されると覚えておきましょう。
保育園の園長になるまでのルート
保育園の園長になるまでの具体的なルートや、園長経験がなくても園長になる方法をまとめてみました。
- まずは保育士として経験を積む
- 主任をはじめとするリーダー職に就く
- 信頼を経て園長に
- 園長を募集している求人に応募するのもあり
ポイントを押さえながら、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
園長になるまで①
まずは保育士として経験を積む
園長になるために、まず保育士として経験を積んでください。
国家試験である保育士試験を受験したり、国が指定する「指定保育士養成施設(保育系の専門学校・短大・大学)」を卒業したりして、まずは保育士資格を取得します。
その後、保育園に入社してクラス担任を持って、保育士としてのスキルを磨きましょう。
園長になるまで➁
主任をはじめとするリーダー職に就く
保育士のキャリアアップや処遇改善のためにつくられた「処遇改善等加算Ⅱ」により、主任保育士に加えて、副主任・専門リーダー・職務分野別リーダーなどの役職が新しく追加されました。(参考:厚生労働省「保育士等の処遇改善案について」)
保育士の役職 | 役割 |
---|---|
園長(施設長) |
|
主任 |
|
副主任 |
|
専門リーダー |
|
職務分野別リーダー | 保育士としての経験年数がおおむね3年以上 職務分野のキャリアアップ研修を修了している |
最初は役職なしの保育士として働き、経験を積んで職務分野別リーダーから専門リーダー、副主任から主任とステップアップしていきます。
園長になるまで③
信頼を経て園長に
主任をはじめとするリーダー職に就いても、園長になれるとは限りません。
園長になるためには、周りの保育士や保護者からの信頼が必要です。
「ふさわしい実力があるか」「経験や知識が身に付いているか」などを自問し、リーダー職向けの研修や、施設運営に生かせるマネジメント研修などを受けて、実践力を身につけましょう。
園長になるまで④
園長を募集している求人に応募するのもあり
園長としての勤務経験がなくても、園長を募集している求人に応募すれば園長になれます。
最初は「園長候補」として採用されますが、保育園に慣れて引継ぎを終えたら園長として働き始めることになります。
ただ、求人では「実務経験10年以上」「保育士資格必須」といった条件が設定されているので、募集要項をよく確認してから応募しましょう。
保育園の園長を目指すならまずは保育士として経験を積もう!
保育園の園長になるためには、特別な資格は必要ありませんが、保育士としての経験と信頼が求められます。
まずは保育士資格を取得して、通常の保育士として働いた後、リーダー職に就いて実力を磨くのがおすすめです。
保育所保育指針を読む保育士はココが違う!
保育士試験の勉強や保育学校の授業では保育所保育指針を読んだことはあるものの、現場ではあまり開いたことがない、という保育士さんも少なくないはず。しかし、保育指針には保育実践のヒントが盛りだくさんです。今…
気づいて!ネグレクトのサイン~保育士ができる対応とは?
近年、保護者が子どもに対して必要なケアを与えない「ネグレクト(育児放棄)」の虐待ケースが増加傾向にあります。ネグレクトにいち早く気付くために、今回は子どもが見せるネグレクトのサインや、保育士ができる対…
児童発達支援のサービス内容・必要な資格など
保育士資格をもつ人の仕事としては、障害児通所支援事業のひとつ「児童発達支援」があります。これは障害のある子どもの療育を行う仕事です。そこで今回は、児童発達支援施設のサービス内容、必要な資格について紹介…