「コーナー保育」は、子どもの意思決定能力が高められるとして近年注目を集めている保育方法です。日本だけでなくカナダや韓国でも取り入れられています。
耳にしたことはあるけれど、「具体的にどんな保育はよく分からない」という保育士さんもいると思います。
そこで今回は、コーナー保育の特徴や具体的なレイアウト例をご紹介します。
コーナー保育とは、遊びをコーナーごとに分けて行う保育
コーナー保育とは、ひと口にいうと、遊びをコーナーごとに分けて行う保育です。
設置するコーナーは保育園によって異なりますが、「製作コーナー」「絵本コーナー」「ままごとコーナー」といったものがよく設置されています。
保育室の中に複数のコーナーを設置するわけですが、コーナー同士が交わらないように、棚や仕切りで空間を分けていきます。
そのようにコーナーを分けることで、子どもが安心して活動に集中できるようになります。
「異年齢保育」を行っている保育園で、コーナー保育を取り入れているところもあるようです。
ただ、一日中コーナー保育だけを行うわけではありません。
多くの保育園では、「メインは一斉保育で、午後の数時間だけコーナー保育」というように、時間を決めて取り入れています。
指導案に書ける!コーナー保育のねらい
コーナー保育には、どんなねらいがあるのでしょうか。
これは主に次の3つです。
- 子どもの自主性や独創性、創造性を育む
- 子どもの集中力を高める
- 子どものコミュニケーショ能力を高める
子どもは、数あるコーナーの中から好きな遊びを選択することになります。
このため、一斉保育とは違い、子どもの「○○で遊びたい!」という気持ちを尊重できるので、子どもの自主性を育むことにつながります。
さまざまなコーナーを充実させれば、子どもの独創性や創造性、集中力も高められます。
同じコーナーにいる子ども同士が、おもちゃの貸し借りをしたり、一緒に遊んだりする中で、コミュニケーショ能力も高まるでしょう。
モンテッソーリ教育の保育園・幼稚園でも取り入れている
コーナー保育は、一般的な保育園や幼稚園だけでなく、モンテッソーリ教育の保育園・幼稚園でも取り入れられていいます。
モンテッソーリ教育の現場では、次の5つの要素を含んだコーナーが設置されているのが特徴です。
- 日常生活
- 感覚
- 言語
- 数
- 自己表現
この5つの要素に関連する「教具(おもちゃ)」を使って、子どもに社会生活で必要な能力を習得させていきます。
下の記事でも紹介しましたが、モンテッソーリ教育では、教具を通じて物事を学ぶことを、「お仕事」と呼んでいます。
教具によって使い方は異なるので、コーナーごとにお仕事の内容を変えれば、より仕事に集中しやすくなるでしょう。
コーナー保育は1歳児から実践できる
コーナー保育を、3~5歳児向けの保育方法だと思っている保育士さんもいるかもしれません。
しかしコーナー保育は、じつは1歳児から実践できます。
子どもがおもちゃを取り出しやすいように、コーナーごとに棚を設置している保育園もあります。複数のおもちゃや素材を置くことで、子どもが一人遊びや並行遊びを実践しやすくなるわけです。
しかし、1歳児の場合は安全面を考慮して、棚でコーナーを分けません。
また、1歳児は0歳児よりも動きが活発になるので、けがをしないようにしっかりと見守ることが重要です。
コーナー保育の5つのレイアウトのコツ
ここまで読んで、「どんなコーナーを作ればいいんだろう」と思う方もいると思いますので、コーナー保育の代表的な例を5つご紹介しましょう。
- 製作コーナー
- 絵本コーナー
- ままごとコーナー
- ブロックコーナー
- モンテッソーリ教具コーナー
次に、それぞれどんなものを配置するのか、レイアウトのコツも含めて解説していきます。
コーナー保育レイアウト① 製作コーナー
製作コーナーは、子どもが自由に製作できるコーナーです。
廃材や素材、道具などを棚に収納します。
机やいすなど、子どもが製作できる環境も整えておきます。
取り合いにならないように、はさみやテープなどは子どもの人数に合わせて用意するのが一般的です。
保育園によっては、「テーマ」が決められていることもあります。
クリスマスや子どもの日など、季節に合った製作を実施するケースもあるので、保育園ならではの特色が現れやすいコーナーと言えるでしょう。
コーナー保育レイアウト② 絵本コーナー
絵本コーナーは、子どもが絵本を読むコーナーです。
そのクラスの年齢や発達に合ったさまざまな絵本を棚に置きます。
絵本を設置する場合は、背表紙が見える棚ではなく、絵本の表紙が見える「絵本用の棚」を選びましょう。
表紙が見せて置ことで、子どもの「この絵本を読みたい」という意欲を刺激できます。
月齢が高ければ、カテゴリー別に絵本をまとめるのもおすすめです。
子どもが飽きないよう、定期的に絵本を入れ替えることも大切です。
コーナー保育レイアウト③ ままごとコーナー
ままごとコーナーは、子どもが自由にままごとをするコーナーです。
基本的には、ままごとのおもちゃ(食べ物、食器、衣装、キッチン)などを設置します。
子どもにとって、ままごと(模倣遊び)は生活スキルを身に付ける上で欠かせないものです。
子どもの想像力を引き出せるように、おもちゃや環境を充実させましょう。
テーブルやいすを用意したり、段ボールで「郵便局」「八百屋さん」などのお店を作ったりすると、より遊びが広がります。
ままごとコーナーはおもちゃの種類が多いので、子どもが片付けやすいように、おもちゃ箱や棚に写真を貼るのがおすすめです。
コーナー保育レイアウト④ ブロックコーナー
ブロックコーナーは、子どもがブロックや積み木をするコーナーです。
小さなブロックをひとりで作ることもあれば、大きな積み木を周りの子どもと協力して積み上げることもあります。
椅子やテーブルのほか、大きな積み木を積み上げられるスペースや、積み木を使ってドミノができるスペースなどのゆとりのあるスペースが必要です。
ただ、子どもが遊びの途中でトイレに行ったり、途中で給食や主活動の時間になったりする場合もあるでしょう。
そんなときは「まだ作り途中」というカードを用意するのがおすすめです。
カードをブロックや積み木に沿えれば、周りの子どもが作り途中のものを勝手に取ることもありません。
子どもの気が済むまで作らせることで、達成感が味わえます。
コーナー保育レイアウト⑤ モンテッソーリ教具コーナー
モンテッソーリ教具のコーナーを設置している保育園もあります。
取り入れられている教具や、5つの要素ごとの活動内容は次のようなものです。
- 日常生活……窓を拭く、靴を磨くセット
- 感覚……視覚、聴覚、味覚、触角、嗅覚を刺激する教具
- 言語……砂文字、文字に関する教具
- 数……そろばん、数に関する教具
- 自己表現……楽器や絵の具など
上記のほか、習字をしたり、地球儀や地図で国名を知ったりするなど、日本文化や海外への文化に親しむ活動を取り入れているケースもあります。
コーナー保育の3つのメリット
コーナー保育には、一斉保育では得られないメリットがたくさんあります。
- 子どもが好きな遊びに集中できる
- 子どもの意思決定能力が育まれる
- ルールを守る力が身につく
さまざまなコーナーが設置されているコーナー保育では、子どもが好きな遊びを選び、集中して活動に取り組めます。
一斉保育のように、保育士が用意したものをみんなで取り組むのではなく、子どもが自分の意思で遊びを選ぶので、「意思決定能力」も育まれるでしょう。
もちろん、中には好きな遊びが見つけられない子どももいますが、そんなときは保育士が声をかけ、その子どもの興味がある遊びへと促していくことが大切です。
また、コーナーごとに遊びや片付けのルールが異なるので、ルールを守る力や、柔軟に対応する力も身に付けられるでしょう。
コーナー保育のデメリット
そんなメリットの多いコーナー保育ですが、一方では次のような短所もあります。
- 集団で一斉に取り組む際に苦労することも
- いつも同じ遊びしかしない
- コーナーごとに保育士が必要
コーナー保育は子ども一人ひとりの主体性を重んじるものですから、集団活動をする機会が減ってしまうというデメリットがあります。
子どもたちは小学校へ上がると集団での活動がメインになので、コーナー保育に慣れてしまうと、就学時に、これまでとのギャップに苦しむ可能性もあります。
また、ずっと同じ遊びしかしないために、結果的に遊びの幅が狭まってしまうケースも少なくありません。
コーナーごとに子どもを見守るための人手も必要です。人手不足の現場では難しいでしょう。
コーナー保育を取り入れている保育園の多くは、曜日ごと、もしくは日ごとにコーナー保育の内容を変えたり、時間を決めたりしています。
室内全体を見渡せるようなレイアウトを作れば、少ない人員でも見守れます。
コーナー保育は子どもの成長に効果的
コーナー保育は子どもの自主性や独創性、創造性を育んだり、集中力を高めたり、コミュニケーショ能力を向上させたりするなどのねらいがあります。
「好きな遊びに集中できる」「意思決定能力が育まれる」「ルールを守る力が身につく」といったコーナー保育ならではのメリットもありますので、子どもの成長には効果的な保育方法と言えるでしょう。
子どもが楽しめるように、製作コーナー、絵本コーナー、ままごとコーナーなど、コーナーごとにレイアウトや留意すべきポイントに気をつけて援助していきましょう。
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