今回取り上げるのは、「設定保育」です。
設定保育は「一斉保育」とも呼ばれており、集団意識や協調性を育むために多くの保育園が取り入れているメソッドです。
中には「実際にどんなメリット・デメリットがあるのか」「具体的にどんな活動なのか」ということを意識していない保育士もいるので、あらためて設定保育の特徴やねらい、指導案の書き方について説明していきます。
設定保育とは「一斉保育」のこと
設定保育とは、保育士が指導案を立てて、そのねらいに沿って保育を進めていく保育方法です。
その特徴は、クラス全体や複数の子どもが一斉に活動に取り組むということです。
基本的には保育士が活動を提案し、子どもたちが活動に参加するという流れで行いますが、主体はあくまでも子どもにあります。
設定保育を取り入れている保育園では、年間指導計画として、活動内容がすでに決まっているケースがほとんどです。
年間指導計画は主に4期に分かれており、それぞれ子どもの月齢や成長度合いに適した保育内容を取り入れます。
この年間指導計画を保護者に配布したり、保育園のホームページにアップしている保育園もあります。
保育士が計画を立て、それを周囲の職員や保護者が実際に確認することができるのは、設定保育ならではの特徴と言えます。
設定保育の3つのねらい
設定保育には、主に3つのねらいがあります。
- 集団意識を高める
- 協調性を育む
- さまざまな活動に取り組む
このねらいは、指導案に関わる部分になりますから、実際に保育に携わる前に必ず把握しておきましょう。
設定保育のねらい① 集団意識を高める
集団意識を高めることは、設定保育の中でも特に重要なねらいです。
設定保育は、クラス単位もしくは少人数グループで一斉に活動します。
クラスの友だちと一緒に活動に取り組むことで、「みんなで一緒に遊ぶって楽しいな」といいう感情が生まれることをねらっています。
特にクラス全員で一つの作品を製作するとき、ダンスや体操などを行うときなどでは、同時に達成感も味わえるでしょう。
その結果、クラスの連帯感が生まれ、保育がスムーズに進むことにつながるわけです。
設定保育のねらい② 協調性を育む
協調性を育むことも、設定保育のねらいのひとつです。
上記したように、設定保育では集団で活動することが多いため、子ども同士が交わすコミュニケーションの量が増えます。
おもちゃや道具を貸し合ったり、ルールのある遊びをしたりする中で、子どもたちは自然に「相手の気持ち」を考えることを身に着けていきます。
「○○されたらいやだろうな」
「困っているから助けてあげたい」
というような情緒面の成長も期待できますね。
さらに、「集団の中の一人」としての意識も芽生えます。ルールを守ったり、仲間をフォローしたりするなどの規範意識や社交性も育むことになるのです。
設定保育のねらい③ さまざまな活動に取り組む
設定保育は、取り組む活動内容が時期によって変わることも特徴です。
子どもたちはさまざまな活動に取り組むことになります。
クラスもしくはグループで、音楽や運動、製作といった、「主活動」と呼ばれる活動を一斉に取り組むので、子どもたちの「学び」も急激に増えていきます。
音楽なら歌い方や楽器の弾き方、運動なら体の動かし方、製作なら手先の動かし方など、そうしたことをバランスよく習得できるので、年齢に合った発達や成長が促せるでしょう。
設定保育の活動例3選
ここまで設定保育のねらいについて説明してきましたが、実際は、設定保育と言っても活動内容は保育園によってさまざまです。
そこで設定保育の活動例3つをご紹介します。
- みんなで製作
- みんなでプール遊び
- みんなで歌を歌う
それぞれの活動内容や、留意ポイントをチェックしていきましょう。
設定保育の活動例① みんなで製作
「製作」は、設定保育の代表的な活動です。
具体的な製作の主な内容は、次のようなものです。
- 廃材で作ったおもちゃ
- ひな祭り・七夕・クリスマスなどの季節の製作
- マーブリングや色水
季節性のある製作や、保育園で定番の製作も、設定保育に含まれています。保育園によっては、夏祭りやクリスマス会などのイベントの装飾を活動に盛り込むケースもあるようです。
製作は、子ども全員が同じスピードで作れるわけではないので、一人ひとりの作業の進み具合をチェックして、全員が完成できるように、適宜声かけを行いましょう。
設定保育の活動例② みんなでプール遊び
夏のプール遊びは、多くの保育園で取り入れられている活動です。
園にプールがない場合は、大きめのビニールプールを用意して、水を入れる園もあります。
プール遊びは、クラス単位でを行う園が多いようです。
子どもが足を滑らせたり、子ども同士がけんかになるリスクもあるので、けがや事故が起こらない環境を心がけ、事前に注意を呼びかけましょう。
設定保育の活動例③ みんなで歌を歌う
朝の会や帰りの会などに含まれている「歌の時間」も、設定保育に含まれます。
保育園では季節の歌や、卒業式・入学式など保育園の行事にまつわる歌など、さまざまな歌があります。
保育士が子どもにメロディや歌詞を教えて、子どもがそれを覚えていくというのが、大まかな流れです。
まだ字が読めない年齢だと、音や声で歌を覚えなければならないので、ピアノでメロディを弾いたり、繰り返し練習したりして、子どもが自然に歌を覚えられるように支援しましょう。
設定保育のメリット・デメリット
設定保育には、メリットばかりでなく、デメリットもあります。
メリットを正しく理解すれば、設定保育のよさをより保育で生かせますし、デメリットを知っておけば、保育の際に注意すべき点を把握できます。
設定保育のメリット3選
設定保育のメリットは大きく分けて3つあります。
- 自由保育ではできない遊びができる
- 保育の見通しが立てやすい
- 子ども一人ひとりの発達・成長度合いが確認しやすい
設定保育は「あらかじめ保育士が保育内容を考えて、それを子どもが実践する」という流れで行います。
自由保育のように、子どもが自由に好きな遊びをするというわけではなく、すでに用意された活動に取り組むので、子どもだけではできないような遊びができます。
活動するための環境もきちんと整備されているので、より大規模な活動も実践できます。
保育士側は、あらかじめ年間指導計画や指導案などで計画を立てられるので、一日の流れや保育内容などの見通しが立てやすいということも大きなメリットです。
また、子ども全員が同じことをするので、子ども一人ひとりの発達・成長度合いを確認しやすいというメリットもあります。
さらに、子ども一人ひとりの発達・成長度合いを確認しやすいので、「手先はどれぐらい動かせるか」「体の動かし方はほかの子どもと比べてどうか」といったこともはっきりと分かります。
設定保育のデメリット3選
設定保育のデメリットは次の3点です。
- 子ども一人ひとりの個性を生かすのが大変
- 個別の指導がしにくい
- 指示されないと動かない子どももいる
設定保育は子ども全員で活動に取り組むので、子ども一人ひとりの個性を生かしにくいという面があります。
決められた時間の中で保育を進めなければならないということもネックになります。
個別に指導したり、子どもの「こうしたい」「ああしたい」という意見に対応したりするのは、設定保育では難しいでしょう。
また、どうしても保育士が子どもに指導する局面が多くなってしまうので、指示されないと動かない子どもも出てしまうことがあります。
設定保育の指導案を書くときのポイント
最後に、設定保育の指導案を書くときのポイントを3つ解説します。
- 年齢に合った活動を取り入れる
- 活動内容に合った導入を考える
- 活動がスムーズにできる環境設定を心がける
上記を心がけると、保育をよりスムーズに進められます。
実習や転職後の指導案作成のためにチェックしていきましょう。
設定保育の指導案のポイント① 年齢に合った活動を取り入れる
指導案を書く際は、まず年齢に合った活動内容を書くのが鉄則です。
0~1歳児なら、保育士が援助しながらできる製作や運動遊び、わらべうたなど。
2歳児なら子ども1人でもできる製作、3~5歳児ならルールがある集団遊びなどを取り入れましょう。
設定保育の指導案のポイント② 活動内容に合った導入を考える
活動には「導入」が必要です。
例えば七夕の製作をする際には、七夕がテーマの絵本や紙芝居を読んだり、七夕に関連する手遊びを取り入れたりするのがおすすめです。
設定保育の指導案のポイント③ 活動がスムーズにできる環境設定を心がける
環境設定も忘れずに記入しましょう。
予想される子どもの動きや、室内の動線などを踏まえた上で、テーブルやいすを用意したり、活動の配置を考えたりしましょう。
道具を用意するタイミングや、「何をどこに置くのか」という部分をあらかじめ決めておくことで、活動がスムーズになります。
設定保育で集団意識や協調性を身につけよう
設定保育には、集団意識や協調性を育むというねらいがあります。
保育士があらかじめ活動の内容を考えて保育を進めていくので、「保育の見通しが立てやすい」「子ども一人ひとりの発達・成長度合いが確認しやすい」など、優れている点があります。
設定保育を実践する際は、年齢に合った活動や活動内容に合った導入を取り入れ、しっかりと指導案を立てて、計画的に進めていきましょう。
児童発達支援のサービス内容・必要な資格など
保育士資格をもつ人の仕事としては、障害児通所支援事業のひとつ「児童発達支援」があります。これは障害のある子どもの療育を行う仕事です。そこで今回は、児童発達支援施設のサービス内容、必要な資格について紹介…
ヒヤリハット報告書の書き方~適切な共有で再発を防止しよう~
保育園で起こりうる子どもの事故やケガを防ぐには、「ヒヤリハット」の報告が大切です。報告書を作成することで原因を解明し、対策を立てて再発防止に役立てることができます。とはいえ、どのような書式、項目で報告…
今さら聞けない「キャリアアップ研修制度」の中身~2023年度から適用の修了要件とは?
2017年からスタートした「保育士等キャリアアップ研修制度」。2023年度からは研修修了要件が段階的に適用され、受講が「必須」になっています。そこで今回は、キャリアアップ研修の内容をおさらいし、さらに…