「子どもの問題行動に隠されたメッセージを読み解く ~保育園での問題行動の事例と対応方法」という記事でも解説しましたが、保育現場における子どもの「問題行動」とは、「嘘をつく」「ほかの子どもとのトラブルが多い」「集団での活動を妨げる」といった行動のことです。
そのような問題行動を発見したとき、保育士はどのように対応すればいいでしょうか。
今回は子どもの問題行動に対する指導方法やコツ、子どもを叱るときの注意点をご紹介します。ぜひチェックして、適切な方法で問題解決へと導いてください。
子どもが保育園で問題行動を起こす理由
子どもの問題行動に対する指導方法は、主に3つあります。
- 成長途中であることのあらわれ
- 家庭環境で悩みがある
- 試し行動をしている
それぞれの理由から、問題行動の裏に隠された「子どもの気持ち」を理解してください。
子どもの問題行動の理由①
成長途中であることのあらわれ
友だちのおもちゃをとったり、嘘をついたりするなど、「たまに」小さな問題行動を起こす場合は、子どもがまだ成長途中の証と考えてもいいでしょう。
年齢が低い子どもは、まだ感情のコントロールが難しいので、ほかの子どもと衝突することもあります。
嘘をつく行為は「いけないこと」と捉えてしまいがちですが、「先を見通す力が身に付いた」とも受けとれます。
子どもの年齢や発達のスピードを踏まえたうえで、行動の意図を分析しましょう。
子どもの問題行動の理由②
家庭環境で悩みがある
子どもが頻繁に問題行動を見せるようになった場合は「家庭環境に悩みがある」ことのサインかもしれません。
- 両親の不仲
- 両親が忙しくて遊んでもらえない
- 愛情不足
これらによって子どもがストレスを抱ええしまい、それを発散させるために保育園でヒステリーを起こしたり、友だちや保育士に暴言を吐いたりするケースがあります。
子どもの問題行動の理由③
試し行動をしている
「試し行動」とは、子どもが大人を試す行動のことです。
- どれぐらい自分を受け入れてくれるか
- どんなことをするとこの人は怒るのか
問題と思われる行動をあえて保育士の前で見せて、様子をうかがっているのです。
基本的には新しく担任になった保育士や、就職・転職したばかりの保育士に対して見せる行動です。
この場合は、適切な信頼関係が築けるように「るときは叱る、褒めるときは褒める」といったメリハリのある指導を心がけましょう。
子どもの問題行動に対する指導方法やコツ
子どもの問題行動に対する指導方法や、指導のコツを5つ解説します。
- すぐに!そして簡潔に!
- 問題行動の理由を聞いて子どもの気持ちを代弁する
- 「なぜ~してはいけないのか」を話す
- 「じゃあ~してみたら?」と提案する
- 子どもが理解したらほめる
問題行動を見せる子どもとの接し方に悩んだときは、ぜひ次の5つのコツを参考にしてみてください。
問題行動の指導のコツ①
すぐに!そして簡潔に!
子どもの年齢が低い場合は、時間が経ってから指導しても、何のことを言われているかが分からない可能性があり、解決につながりません。
問題行動があったときは、その場で指導するのがポイントです。
また、子どもはまだ長い文章を理解するのが難しいので、一文で端的に「○○は危ないよ!」と伝えましょう。
子どもによっては、「~はしないで」という否定形より、「○○してね」という“代替案”の方が伝わりやすい場合もあります。状況に合わせて言葉がけしてみてください。
問題行動の指導のコツ②
問題行動の理由を聞いて子どもの気持ちを代弁する
ただ頭ごなしに叱っても、根本的な解決にはつながりません。
まず子どもが問題行動を見せた理由を聞き、「そっか。○○ちゃんは~が嫌だったんだね」というように、子どもの気持ちを代弁しましょう。
その子どもが自分の気持ちに気づいてほしいがために問題行動を起こしている可能性もあるからです。
気持ちに寄り添うことで子どもの心が満たされれば、結果的に問題行動の消失へとつながります。
問題行動の指導のコツ③
「なぜ~してはいけないのか」を話す
端的に「~はしてはいけない」と指導した後に、「なぜ~してはいけないのか」ということも伝えましょう。
「~してはいけない理由」を理解しないままだと、また同じことを繰り返す可能性があるからです。
「だめなものはだめ!」という抽象的な言葉ではなく、「~するとお友だちがケガしちゃうんだよ。汚したらお友だちも痛いし、病院にもいかなきゃいけなくなるんだよ」というように具体的に説明しましょう。
問題行動の指導のコツ④
「じゃあ~してみたら?」と提案する
「なぜ~してはいけないのか」を話しても子どもが納得しなかったり、気持ちが高ぶっていたりするときは、代替案を伝えてみましょう。
「じゃあ~してみたら?」と提案することで、子どもの気分を切り替えられます。
問題行動の指導のコツ⑤
子どもが理解したらほめる
子どもが話を理解できたら、しっかりとほめてください。
「○○ちゃんが分かってくれて、先生うれしいな」と言葉をかけたり、スキンシップをとったりすることで、子どもも保育士から愛されていることを実感できます。
ほめられたことをうれしく思ってくれれば、保育士の言葉に対して積極的に耳を傾けるようになります。
子どもとの信頼関係を構築するためにも、積極的に子どもをほめましょう。
こんな指導はNG!子どもを叱るときの注意点
子どもを叱ることは思った以上に難しいことですし、忍耐力も必要になります。
しかし、間違った叱り方をしてしまうと、子どもとの信頼関係が壊れるだけではなく、その子どもの人格形成にも悪影響を及ぼしてしまうことがあります。
次のような叱るときの注意を押さえてください。
- 感情的に叱らない
- 暴力(叩く、蹴る)は絶対にNG
- 子どもの人格を否定しない
- 長時間叱らない
- 一貫性のないり方はしない
NGな叱り方をチェックして、適切な指導を心がけていきましょう。
子どもを叱るときの注意①
感情的に叱らない
大きな声で叱ったり、「どうして言うことが聞けないの?」と頭ごなしに叱ったりするのはNGです。
そのように感情的に叱ってしまうと、子どもには「怒られた」という記憶しか残りません。
怒られた理由や「自分の行動のどこに問題があったのか」も理解できません。
落ち着いて、迅速に、そして端的に対応してください。
子どもを叱るときの注意➁
暴力(叩く、蹴る)は絶対にNG
暴力は絶対にしてはいけないことです。
子どもの体だけでなく心を傷つける行為であり、「指導」とは言えません。
たとえ軽く体を押す、軽く頭を叩くといった行為であっても、子どもの心には「信頼する大人に傷つけられた経験」として刻まれます。
暴力ではなく、言葉や表情で子どもを正しい方向へ導きましょう。
子どもを叱るときの注意③
子どもの人格を否定しない
「○○できないなんて、本当にダメな子ね」「○○ちゃんなんか嫌い」など、子どもの人格を否定するような言葉もNGです。
子どもの問題行動は、「行動」に対して指導を行うべきで、その子どもの「人格」に問題があるわけではありません。
子どもの人格を否定すると、子どもが「自分は愛されていない」と感じ、さらなる問題行動を引き起こしてしまう可能性があります。
「○○ちゃんのことが嫌いだから怒っているわけじゃないよ」「○○ちゃんが~するのが、先生は悲しいんだよ」と愛情を伝えたうえで、子どもの行動に対しての指導をおこないましょう。
子どもを叱るときの注意④
長時間叱らない
どんなに長時間かけて叱ったからといって、それで子どもが反省するわけではありません。
むしろ、いつまでも終わらない保育士の話を聞いているうちに、叱られた理由を忘れてしまいます。
根本的な解決へはつながらないので、「すぐに」「端的に」を心がけて指導しましょう。
子どもを叱るときの注意⑤
一貫性のないり方はしない
「前回は○○してもよかったけど、今回はダメ」という、一貫性のないり方は避けましょう。
前にその保育士が言った言葉と違うと、子どもは「どっち?」と混乱します。
もちろん、状況によって「~してもOK」「~はNG」と判断が変わることはあると思いますが、その場合は、何がどう違うのかということを子どもにも分かるように伝えてください。
子どもの問題行動に対する指導方法やコツを実践しよう
子どもの問題行動には、「成長途中」「家庭環境で悩みがある」「試し行動をしている」といったさまざまな理由があります。
問題行動を起こした子どもに対しては、子ども一人ひとりの状況や気持ちを理解し、適切な働きかけをしながら信頼関係を築くのが大切なポイントです。
また子どもの問題行動を叱るときには、「すぐに、そして簡潔に」「子どもの気持ちを代弁する」「なぜ~してはいけないのかを話す」といった指導を心がけてくださいね。
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