日々忙しい中で、自分の仕事にやりがいを求めている保育士はたくさんいます。
多くの保育園では、そんな意欲のある保育士のために、「園内研修」を実施したり、「外部研修」に保育士を派遣したりしています。
今回は、保育士にモチベーションを維持しながらキャリアを積んでいってもらうために、マネージャーがどのようにサポートすべきかについて紹介します。
この記事のもくじ
園内研修と外部研修
研修の取り組みは、園内で行う園内研修が中心であったり、保育団体や市町村、研修運営業者が主催する外部研修を活用したり、アドバイザーやスーパーバイザーを置いたり、園によってさまざまです。
まず園内研修ですが、園の保育実践を向上させるために園全体で共通の認識をもち、協働性を高めていくことが目的です。園長や主任保育士、担当者が主体になって企画・実施しますが、外部講師を招いて実施することもあります。
外部研修は、園内では得られない新しい知識や情報を得たり、専門知識・技能を強化することが目的です。園の状況や職員の構成も関係しますが、役職が変わるタイミングで参加してもらうなど、派遣する保育士の意欲の向上させる意味合いもあります。
感染症対策、事故防止・事故発生時の対応、アレルギー対応などといった各種ガイドラインがリニューアルされるタイミングに開催される研修もあります。
これ以外に、参加する保育士の処遇に関係するキャリアアップ研修があります。
職員処遇と保育の質を結びつける「キャリアアップ研修」
平成29年4月、厚生労働省は、保育士の処遇改善につながる「保育士等キャリアアップ研修制度」を導入しました。これは目的ごとに決められた研修を実施するもので、副主任保育士/専門リーダー、職務分野別リーダーという新しい役職が設置され、それに準じる手当が支給されるようになりました。
- 副主任保育士/専門リーダー: 経験年数概ね7年以上を想定。副主任保育士は主任保育士の補佐業務を行う。専門リーダーは、乳児保育、食育など専門分野に精通した保育士がその分野に関する専門的業務を行う。
- 職務分野別リーダー: 経験年数概ね3年以上を想定。「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食育・アレルギー」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」のいずれかの分野を担当し業務を行う。
それまでの園内研修なり外部研修は、個人や園の志向や判断によって内容が決められており、保育士として積み重ねるべきスキルを明確に示したガイドラインはありませんでした。
キャリアアップ制度が導入されたことにより、全国の保育園で、研修と処遇、役割を結びつけて、保育の質向上を図れるようになりました。
参考 保育士等キャリアアップ研修の実施について(厚生労働省)
キャリアアップ研修については、近日中に、別記事で詳しく取り上げて説明します。
園内研修を効果的に行うためのポイント
保育園は、他の教育施設よりも開園時間が長く、つねに子どもたちがそばにいる施設です。このため、保育士は日々の作業に追われてしまいがちで、せっかく園内研修の時間を設けても、ただの「会議」や「情報共有」で終わってしまうこともしばしばです。
園内研修を有効活用するためには、マネージャーが明確に研修の企画・運営をサポートしていくことが大切です。
園内研修を有効活用するポイントは大きく3つです。
- テーマをなるべく身近なものに設定する
- 参加者に、テーマに沿った「事例や課題」を事前に用意してもらい、話し合う時間を設ける
- 時間の長さや参加者の人数にこだわりすぎず、最短・最少の人数でも実施する
研修の内容が職員全員で共有する必要があるものか、「新人」「安全対策」「食育」「保護者支援」といった小グループで学び合うべきかといったことを整理し、効率的に研修体系を組んでいくことで、より効率的に保育の質を改善できます。
園内研修の効果を上げるために、ファシリテーションやコーチングといったスキルを身につけることも大切です。
外部研修を活かすためのサポート
園外が主催する外部研修に参加することは、園全体の保育の質を向上させるために、「自分に何ができるか」を保育士が主体的に考えるきっかけになります。
保育士を外部研修に派遣する場合、マネージャーは以下の3つのサポートを行います。
- 研修に派遣する目的や人選理由を具体的に伝える
- 研修のテーマに沿って、派遣する保育士と一緒に園の課題を特定する機会を持つ
- 研修後は参加した保育士から内容を聞き取り、園で実践できることを決め、実践していく経過をサポートする
保育士が外部研修に参加するモチベーションをうまく持てるか、研修で学んだことを実践できるかは、こうしたマネージャーのサポートに大きく左右されます。
特定の職員に研修参加の機会が偏らないよう配慮することも重要です。
働き方改革によって同一労働同一賃金は大原則になっていますから、与えられた仕事に対する公平な学びの機会を与えられるようにしましょう。
もちろん、研修の成果を活かせる「職務内容」を考慮することもマネージャーの役割です。
自己研鑽する保育士をサポートしよう
集合研修という形ではなく、自主的にセミナーや研究会に参加したり、本を読んだり資格を取得することで学びを深めている保育士もいると思います。
園によっては、こうした保育士のために、資格手当や一時金制度などを設けています。
マネージャーが保育士の自己研鑽をサポートするポイントは次の3つです。
- 学びに向かうために、運営に支障をきたさない範囲で、快くシフト調整を行う
- 本人の目的を「学ぶこと」から「活かすこと」に切り替えていく
- マネージャー自身も、本を読んだり、セミナーに参加したり、先進的な園を見学するなど、学ぶ存在でいること
知識・技術を習得することは、保育の仕事にかぎらず、永遠のテーマです。
自分の仕事を通して社会に貢献し、自分自身の人生も豊かにしていく意識が園内に浸透していけば、園全体の保育の質は自ずと向上していくでしょう。
マネージャーは、そうした風土づくりにおいてきわめて重要な役割を担っています。
マネージャーができる保育士の研修サポート まとめ
今回は、仕事を良くしたいと思っている保育士のために、マネージャーが研修を通してできることを紹介しました。
保育士自身が仕事の意義を理解することは、制度などが大きく変わった際に柔軟に対応するためにも必要なことです。
職員が学び合い、協働することによって、長期的な視点で園と保育士を育てていきましょう。
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