「保育士の給料・年収は低い」という話をよく聞きますが、実はここ最近では以前より待遇が改善されています。そこで今回は、保育士の平均年収の推移や、全国の平均年収と比較してみた結果を紹介します。保育士が年収をアップさせるためにできることについても解説するので、ぜひチェックしてみてくださいね。
保育士の平均年収は「約382万円」
「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均年収は約382万であることが分かりました。
もっとも、「平均年収」とひと口に言っても、働いている環境や保育士本人の経験値によって金額は異なります。
規模別・年齢別・公立&私立別に詳しく平均年収を見ていきましょう。
この記事のもくじ
保育士の年収2022①
規模別に見ると
まずは、保育園の規模ごとの平均年収を見ていきましょう。
以下の表は企業規模「10~99人」「100~999人」「1000人以上」の保育園の平均年収をまとめたものです。
企業規模 | 企業規模計 (10人以上) |
10~99人 | 100~999人 | 1000人以上 |
---|---|---|---|---|
きまって支給する 現金給与額 |
25万6500円 | 24万9400円 | 26万1600円 | 27万3400円 |
年間賞与、 その他特別給与額 |
74万4000円 | 76万6500円 | 78万7000円 | 57万800円 |
推定年収 | 382万2000円 | 375万9300円 | 392万6200円 | 385万1600円 |
この調査から、保育園の規模が大きくなればなるほど、保育士の給与が多くなることが分かります。
ただ、一番規模が大きい「1000人以上」の保育園の賞与が、ほかの規模の保育園と比べて低いため、平均年収は「100~999人」が一番多い結果となりました。
保育士の年収2022②
年齢別に見ると
次に、年齢別の保育士の平均年収をみていきましょう。
多少の変動はあるものの、20~59歳までは年齢が高くなるにつれて、給与や年収が高くなる傾向があります。
ただ、定年退職の年齢が近い60歳以降は、50代よりも給与や年収が低い結果に。
保育士の年収2022③
公立&私立別に見ると
保育園には、自治体が運営する「公立保育園」と、民間企業・社会福祉法人が運営する「私立」の2種類に分かれています。
公立・私立別の保育士に平均年収は、以下の通りです。
施設長・主任保育士の場合は、公立と私立とで給与や年収に差が見られます。
ただ、役職のない一般保育士の場合は、公立と私立とで給与は約1300円、年収は約1万5000円の差しかありません。
保育士の平均年収は本当に低いの?
「保育士の年収は低い」と言われていますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
ここでは、保育士の年収と「全職種の全国平均年収」や「幼稚園教諭の平均年収」と比較した結果を紹介します。
保育士の平均年収は低いのか?①
全国全職種の平均年収と比べると
全国の平均年収は、489万3100円です。
一方、保育士の平均年収は382万2000円です。
つまり、保育士の年収は全国の平均年収と比べて約100万円低いことになります。
基本的に保育士の給料は保育料や補助金など、収入源が限定されているため、他職種よりも金額が上がりにくい傾向があります。
こうした給料の仕組みが、他業種との差を生んでいると考えられるでしょう。
保育士の平均年収は低いのか?➁
幼稚園教諭の平均年収と比べると
それでは、保育士と近しい職業の「幼稚園教諭」の平均年収と比較してみましょう。
幼稚園教諭(保育教諭) | 保育士 | |
---|---|---|
きまって支給する 現金給与額 |
25万6400円 | 25万6500円 |
年間賞与、その他 特別給与額 |
78万9400円 | 74万4000円 |
推定年収 | 386万6200円 | 382万2000円 |
幼稚園教諭の平均年収は386万6200円で、保育士の平均年収は382万2000円です。
幼稚園教諭の方が年間で約4万円高い結果となっていますが、そこまで大きな差はないと言えるでしょう。
保育士の平均年収は年々上がっている
保育士の平均年収は全国の平均年収と比べて低いと解説しましたが、実は保育士の平均年収は年々上がっているのです。
2019~2021年までの3年間の、保育士の平均給与の推移をまとめてみました。
政府統計の総合窓口(e-Stat) 令和3年賃金構造基本統計調査
職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和2年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和元年賃金構造基本統計調査 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
2019年、2020年、2021年と年を重ねていくにつれて、保育士の平均年収が約10万円ずつ高くなっています。
保育士の年収が上がっている背景には、政府による「処遇改善加算制度」、自治体独自の保育士への処遇改善の取り組みなどが関係していると言えます。
↓ 処遇改善については、こちらの記事で詳しく解説しています。
保育士が年収を上げるためにできること
保育士の年収は、働く環境や保育士本人の経験値によって異なるものです。
保育士が年収を上げるために、どんなことを実践すればいいのでしょうか?
保育士が年収を上げる方法①
キャリアアップ研修を受ける
2017年、厚生労働省は職員の技能・経験の向上に応じた追加的な賃金の改善に要する費用を加算する制度「処遇改善加算Ⅱ」を開始しました。
この制度により、保育園に「副主任」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」といった新たな役職が設けられ、その職務・職責に応じた処遇改善が行われるようになりました。
処遇改善加算Ⅱの開始に伴い、「キャリアアップ研修」が各都道府県で実施されるようになりました。
特定の条件を満たし、「キャリアアップ研修」を受講すれば、新設された役職に就くことができます。
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
- 保育実践
- マネジメント
キャリアアップ研修を受けて「職務分野別リーダー」になれば月額5000円が支給されます。
さらに、「副主任」「専門リーダー」になれば、月額4万円が支給されるので、年収アップが期待できるでしょう。
保育士が年収を上げる方法➁
転職する
一般的な保育士よりも年収が高い主任保育士や施設長を目指すのも1つの方法です。
職種 | 施設長 | 主任保育士 | 保育士 | |
---|---|---|---|---|
私立保育園 | 1人当たり給与月額 (賞与込み) |
56万5895円 | 42万2966円 | 30万1823円 |
私立保育園 | 推定年収 | 679万740円 | 507万5592円 | 362万1876円 |
もちろん経験年数やスキルなど、必要になるものは多いので、今のうちから「副主任」「専門リーダー」といった役職にチャレンジして、キャリアを積んでおきましょう。
保育士が年収を上げる方法➁
主任・施設長を目指す
今働いている保育園の年収が低い、これ以上の年収アップが期待できないという場合は、転職するのも1つの選択肢です。
賞与が年に2~3回ある保育園や、基本給が高い保育園、役職手当やそのほか福利厚生が手厚い保育園など、労働条件のいい保育園を転職サイトで見つけてみましょう。
年収が高い保育園に転職するのも1つの選択肢
保育士の給与は全国の平均年収と比べて低い傾向がありますが、保育士の年収は年々改善されつつあります。
特に最近は政府による処遇改善をはじめ、保育士の給与をアップさせようという動きが活発化しているので、今後保育業界全体の給与アップが期待できるかもしれません。
ただ、現在の年収が低いと悩んでいる保育士の方は、スキルアップ研修を受けたり、転職を視野に入れたりするなど、今からできることを実践して年収アップをねらってみましょう。
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