良質な保育を実現するためには、「語り合える風土づくり」が必要だと言われます。しかし、具体的にどんな風土のことを指しているのかわかりづらいかもしれませんね。今回は「語り合える風土」のつくり方やポイントを解説していきます。より良い保育環境を目指す経営者、リーダーはぜひチェックしてください!
この記事のもくじ
厚生労働省が唱える「保育の質」とは?
まず、「保育の質」ということから考えていきましょう。
この言葉がとりわけ注目されるようになったのは、2018年に厚生労働省が発表した「保育所等における保育の質の確保・向上に係る関連資料」がきっかけです。
この資料が発表されてから、多くの施設が「保育の質」の向上を目指して積極的に取り組むようになったのです。
ということで、厚生労働省が唱えた「保育の質」とはどんなものなのか、ということをチェックしてみましょう。
参考 厚生労働省 保育所等における保育の質の確保・向上に係る関連資料
子どもたちが豊かに生きる環境・経験
厚生労働省は、「保育の質」の概念として以下の言葉をあげています。
- 社会・文化における保育の機能や方向性の捉え方や価値づけに依存する相対的・多元的なもの
- 一元的に定義することができない
一方、欧米諸国・アメリカ・日本などが加盟している国際機関「OECD(経済協力開発機構)」では、「保育の質を」次のように定義しています。
- 子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくことを支える環境や経験
※この定義は、厚生労働省の資料でも取り上げられています
こうしたことから、「保育の質」とは、「子どもが豊かに生きれるような環境・経験をつくること」という広い概念であることがわかります。
「保育の質」の3つの観点
厚生労働省は「保育の質」を、内容・環境・人材の3つの観点で考えています。
内容 |
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環境 |
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人材 |
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この各観点ごとに基準やガイドラインが定められており、保育園はそれをもとに、「保育の質」の向上に向けてさまざまな取り組みを進めています。
内容・環境・人材のどれも「保育の質」を向上させるためには欠かせませんが、今回のテーマである「語り合える風土づくり」を考えるうえで、特に注目したいのが、「内容」の「自己評価」です。
それでは次に、「自己評価」がどんなものなのかを深堀しましょう。
ポイントになるのが「自己評価」
「自己評価」と聞くと、「自分で自分を評価する」という単純なものだと思ってしまうかもしれませんが、保育園における「自己評価」とは、保育士が自身の保育を振り返る自己評価を踏まえ、園長のリーダーシップのもと、組織全体で保育の計画・実践を評価・検証して、保育の改善につなげることを指します。
これを図にすると、こんなサイクルになります。
このうち、「評価や課題の共有」の場になるのは、研修やミーティング、カンファレンスといったものです。
そのような保育士同士で意見を交換する機会を設けるで、「語り合える風土」を作ることができます。
「語り合える風土づくり」はなぜ重要なのか
次に、保育園の「語り合える風土づくり」がなぜ重要なのかということを説明します。
「語り合える風土づくり」はなぜ重要なのか①
保育士の「学び」の機会になるから
保育士同士が自身の保育を振り返り、気づきや課題を共有することは、言うまでもなく、保育士自身の学びにつながります。
保育の方法は人によって異なりますが、子どもの身の回りのお世話や行事の準備などの追われている毎日では、その違いがなかなか見えにくいものです。
定期的に語り合う場を設けることで、自分とは違った保育観やアプローチ方法を知ることができ、視野がぐんと広がるでしょう。
多角的な保育方法を実践することで、質の高い保育を実現できるようになります。
「語り合える風土づくり」はなぜ重要なのか➁
保育士同士の協働性が高まるから
定期的に語り合う機会を設け、保育の方針や課題について共通の認識を深めれば、職保育士同士の協働性も自然に高まります。
保育士一人ひとりの目を向ける方向が違うと、チームでの連携がうまく取れなかったり、意見が割れて衝突したりすることになるかもしれません。
語り合う風土をつくれば、保育士全員が同じ方向を向いて、チーム一丸となって保育を進められます。
「語り合える風土づくり」はなぜ重要なのか③
保護者に共有することで信頼性が高まるから
この保育園ではどんなことに取り組んでいるのかということを保護者に共有すると、保育園に対する信頼性が高まります。
「具体的に何をしているのかわからない」と思っていた保護者も、保育園の取り組みが見えれば、安心して子どもを預けることができ、保育により関心をもつようになるでしょう。
保育園から保護者に情報を共有するだけでなく、保護者からも家庭での育児について話してくれるようになれば、子ども自身や保育に関しての相互理解を深めることになります。
保育士同士の語り合うときのポイント
次に、保育士同士で語り合うときの、より実践的なポイントについて説明しましょう。
「語り合える風土づくり」のポイント①
記録は「読み手」を意識してまとめる
保育士同士で語り合う前に記録をまとめると、より具体的にイメージしやすくなり、伝わりやすくなります。
記録を作成する際は、それを読む人を意識して、「誰が・どこで・何をした」という事実、そこで自分が気付いたこと、考えられる課題などを明確に書き分けましょう。
「語り合える風土づくり」のポイント➁
誰もが率直に語りやすい雰囲気をつくる
「語り合える風土づくり」に欠かせないのは、誰もが率直に語りやすい雰囲気をつくることです。
評価の場などで、後輩保育士が先輩保育士に遠慮して言いたいことが言えなかったり、周囲の目を気にして自身のミスや課題をあげられなかったりすることは往々にしてあると思います。
新たな気付きや学びのためには、遠慮せずに率直に考えを述べることが大切です。
誰もが率直に語れるように「相手の意見を否定しない」「発言者が偏らないようにする」といった対策を講じましょう。
「語り合える風土づくり」のポイント③
「子どもにとって何が最善か」の視点を持つ
評価や意見交換を行う目的は保育の質の向上です。そのため、「これこそが良い保育だ」という結論に安易に飛びついてしまいがちです。
しかし、語り合いの場はあくまでもより良い保育のための「プロセス」です。簡単に結論を導くことができない場合もあるでしょう。
結論を出すことに気を奪われず、「子どもにとって何が最善なのか」という視点で、思考を重ねていきましょう。
保育園での「語り合える風土」のつくり方
保育園での「語り合える風土」のつくるためには、勉強会や研修といった場を設けることが重要です。
最後に、勉強会や研修の具体的な内容をチェックしていきましょう。
参考 厚生労働省 保育をもっと楽しく 保育所における自己評価ガイドライン ハンドブック
「語り合える風土づくり」のつくり方 ①
勉強会・園内研修を実施する
保育士たちが自身の保育を振り返り、発表をする場としては、勉強会・園内研修などがあります。
これらの進め方は保育園によってさまざまですが、ポピュラーなのは、資料をホワイトボードやプロジェクターに映し、保育士一人ひとりが発表する進め方です。
保育士の発表を受け、課題解決に向けグループでディスカッションをしたり意見を交換したりするといいでしょう。
「語り合える風土づくり」のつくり方 ➁
外部研修に参加する
保育園によっては、同じ系列の保育園の保育を学べる外部研修に保育士を参加させることもあります。
あるいは、外部の教育機関や知名度のある保育の専門家が開く研修や講演会に参加させることもあるでしょう。
そのような外部研修を通じて、自園や自分自身の保育との違いを学ぶことで、保育の視野が広がります。
外部研修後に、保育士同士で気付いたことを語り合えば、さらなる発見につながるでしょう。
ICTシステムを導入して共有するのもおすすめ!
今回は保育の質の向上、語り合える風土のつくり方やそのポイントを解説しました。
語り合える風土づくりの一環として勉強会や研修の機会をせっかく作ったのはいいけれども、毎日忙しい保育現場では「勉強会や研修の時間をつくるのもひと苦労」「準備や実施に手間がかかる」という課題があります。
そのような課題の打開策として、最近ではICTシステムを導入する保育園が増えています。
ICTシステムを活用すれば、たとえばビデオ会議システムを使ったり、クラウドで資料を簡単に共有したりということができます。
資料をつくる時間がない場合は、保育の様子をビデオ録画してクラウドにアップする、ということもできるでしょう。
ICTシステムを活用して、気軽に語り合える風土づくりを目指してみてください。
ICTシステムについて詳しく知りたい人は、こちらの記事もチェックしてみてください。
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