保育園が子どもの成長を手助けする上で、「保護者との連携」は不可欠ですが、ときとしてその必要性が忘れられてしまうことがあります。今回は保護者との連携が大切な理由、連携が必要な場面や具体的な連携方法を解説します。保育士が保護者と連携するときのポイントも紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
保育園と保護者の連携が大切な理由
保育現場では「保護者との連携は大切!」とよく言われます。その理由を理解して、保護者とより建設的な関係を築きましょう。
保育園と保護者の連携が大切な理由は、次の3つです。
保護者との連携が必要な理由①
子育ての責任は「家庭」と「保育施設」の両方にあるため
子育ての責任は、家庭と保育施設の両方にあります。
お互いが「保育者」としての意識を持つことで、より質の高い「子育て(保育)」が実現できます。
「子育ての基盤は家庭にあるのだから、保育園に任せないでほしい」
このような状況は、理想的な子育て(保育)環境とはいえません。
子どもの成長のためには、家庭と保育施設が協力し合うことが大切です。
責任を押し付け合うのではなく、「子どものために」という共通意識を持って助け合うことで、気持ちにゆとりが生まれます。
また、密接に連携することで、子どもの成長のつまずきや体調の変化にも対応しやすくなるでしょう。
保護者との連携が必要な理由➁
親子が触れ合う時間を作るため
子どもを保育施設に預けると、どうしても子どもと過ごす時間帯に偏りが生まれます。
基本的に、保育士の方が日中に子どもと過ごす時間が多いので、保護者は日中に子どもと触れ合う時間が少なくなくなってしまいます。
そこで保育士が「家庭との連携」として、親子で参加できるイベントを実施すれば、親子が触れ合う時間が増えます。
子どもと保護者の愛着形成の場としても、保護者と保育士のコミュニケーションの場としても有効です。
保護者との連携が必要な理由③
情報交換をして子育て・保育に生かすため
保育士が「家庭との連携」として、子どもの日中の様子を保護者に伝えることで、保護者が子どもの成長を感じ取れます。
保護者が子どもの発達の度合いや体調などを把握できれば、子育ての「指針」も決めやすくなるでしょう。
逆に、保育士が保護者から家庭での子どもの様子を教えてもらうことで、
「○○ちゃんは昨晩あまり寝ていなかったから、お昼寝の時間を伸ばそう」
というように、日中の保育に生かすことができます。
保育園で保護者との連携が必要な場面とは?
保育園で保護者との連携が必要な場面は主に3つあります。
- 日々の保育
- 保育園の行事・イベント
- 感染症対策
日々の保育はもちろん、お遊戯会や運動会などの行事やイベントでも、保護者との連携が必要です。
連携が必要になる例
お遊戯会の場合:保護者に子どもの衣装づくりを保護者に依頼する
運動会の場合:保護者に子どものお弁当作りや大人の競技への出場を依頼する
また、インフルエンザやRSウイルス 症状など、保育園で感染症が流行した場合も、「家での手洗い・うがいの徹底」「湿度の調整」などを家庭に呼びかけて連携を図ることもあります。
保育士が保護者と連携する具体的な方法5つ
それでは、具体的に保育士が保護者と連携する方法を5つご紹介します。
- 送迎時のコミュニケーション
- 連絡帳やおたより
- 個人面談
- 保育参観
- クラス懇談会
連携を図るメリットやコツも一緒にチェックしていきましょう。
保護者との連携方法①
送迎時のコミュニケーション
送迎時に保護者とコミュニケーションをとるのは、家庭との基本的な連携方法です。
- 子どもの体調・機嫌
- 昨夜の睡眠時間
- 家での食事・遊びの様子
朝の受け入れの際に、保護者から上記のような内容を聞けば、子どもの健康状態をしっかりと把握できます。
また、保護者との何気ない会話を交わすことで、徐々に信頼が生まれます。
保育士が頻繁に保護者へ話しかければ、保護者も心を開くようになり、子育ての相談もしやすくなるでしょう。
保護者との連携方法➁
連絡帳やおたより
保育士は保護者対応以外にも、書類の記入や保育の準備、子どもの見守りなど、さまざまな業務を抱えています。
そのため、送迎時に保護者全員とコミュニケーションが取れるとは限りません。
しかし、連絡帳やおたよりを活用すれば、間接的に保護者とコミュニケーションが取れます。
- 子どもの保育園での様子
- 排便の回数
- 午睡時間
- 食事内容
- ちょっとしたケガの報告
連絡帳では上記のような、子どもの健康や成長に関する内容が記載できます。
日中、子どものそばにいられない保護者にとって、大きな安心材料となるでしょう。
また、おたよりではクラスの様子や保育園行事にまつわる連絡、感染症対策の呼びかけなど、保護者全員に伝えたい内容を知らせることができます。
「個人への連絡」「全体への連絡」と使い方を分けて、連携を図っていきましょう。
保護者との連携方法③
個人面談
定期的な個人面談も、家庭との連携方法として欠かせません。
個人面談は、普段の送迎時と違って、プライベートな空間の中で保護者一人ひとりと話せる場です。
子どもの家での詳しい様子はもちろん、ここでしか話せないような子育ての悩み事なども聞けるでしょう。
個人面談は子育て(保育)の課題点を洗い出したり、保護者との信頼関係を構築したりできる有意義な時間です。
定期的に実施して、家庭とより密接に連携していきましょう。
保護者との連携方法④
保育参観
保育参観は、保護者にとって日中に子どもの様子が見られるチャンスです。
定期的に保育参観を実施している保育園もあれば、希望があればいつでも保育参観を実施する保育園もあります。
頻度は保育園によって異なるとは多いますが、できるだけ定期的に実施して、保護者に安心感を与え、信頼度を高めていきましょう。
保護者との連携方法➄
クラス懇談会
クラス懇親会は、個人面談とは違い、クラスの保護者達と保育士が同じ空間で団らんする場です。
保護者同士がコミュニケーションを取れるので、子育てに行き詰まった保護者や、孤独を抱えている保護者にとっては、非常に大切なものです。
保育士は写真や動画で子どもたちの日々の様子を見せたり、子どもたちが作った作品を展示したりして、保護者たちと情報を共有します。
保護者同士が話しやすいよう、テーマを投げかけることもあります。
「私流!子育てのコツ」「子どもがこんなとき、どうするの?」など、テーマ案を事前にアンケートで集めるのもおすすめです。
保育士が保護者と連携するときのポイント
保育士が保護者と連携するときのポイントを3つピックアップしてみました。
- こまめな情報共有を心がける
- 「提案」する姿勢で話す
- きちんと事実を伝える
保護者と連携する際には、この3点を心がけてみてください。
連携のポイント①
こまめな情報共有を心がける
子どもは日々、目まぐるしく成長していきます。
小さな成長だとしても、子どもや保護者にとっては「大きな変化」となりうるので、できるだけ些細なことも保護者と共有しましょう。
連携のポイント2
「提案」する姿勢で話す
保護者とコミュニケーションを取る中で、どうしても保護者の保育観や子育ての方針に共感できない場合もあるでしょう。
そんなときは「○○してください」と命令するのではなく、「~してみてはいかがですか?」と提案する姿勢で話すのがポイントです。
保護者の自尊心を傷つけず、前向きな気持ちで子育てできるように、アドバイスするときは
「~すると○○なのでおすすめなんですよ!」
とポジティブなニュアンスで伝えましょう。
連携のポイント③
きちんと事実を伝える
保育士の主観だけで語ったり、保護者に気を遣いすぎた言い回しで伝えたりすると、家庭との認知の齟齬が生まれてしまいます。
家庭が事実を正しく受け止めて、適切に子どもをサポートできるように、家庭との連携の際は必ず事実を伝えましょう。
保護者と連携して子どもの成長を見守ろう!
子育ての責任は「家庭」と「保育施設」の両方にあります。
責任を押し付け合うのではなく、「子どものために」という共通意識を持って助け合うことで、子どもの成長のつまずきや体調の変化にも対応しやすくなるでしょう。
また、連携の一環として個人面談や懇親会などを定期的に開催するのもおすすめです。
家庭と連携する際は、こまめな連絡と「提案」する姿勢を忘れずに心がけましょう。
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