「保育園の「気になるあの子」 ~保護者への伝え方や記録方法など対応ポイントまとめ」という記事にも書きましたが、それ以外にも、「嘘をつく」「ほかの子どもとのトラブルが多い」といった問題行動を起こす子どもは保育園に珍しくありません。
なぜそのような問題行動を起こしてしまうのか、また保育士として、そのような子どもにはどのような対応をすればいいのでしょうか。
そこで今回は、保育園で子どもが問題行動を起こす原因、事例や対応方法についてを解説していきます。これらをチェックして、子どもとの信頼関係を築いていきましょう。
この記事のもくじ
そもそも問題行動の定義は何か?
まず、「問題行動」とはどのようなものを指すのでしょうか。
最初に押さえておくべきなのは、「誰にとっての“問題”か」ということです。
大人の視点だけで「問題」と決めつけてしまうことは、本質的な部分を見逃してしまうことにつながりかねません。
例えば、活動に参加せず一人遊びしている子どもは、保育士の視点では「問題」とみなされてしまいますが、その子どもにとっては一人遊びが心地よい状態なのであり、それによって周りの子どもに迷惑をかけているわけではありません。保護者も「子どもの意思を尊重したい」という姿勢に立つケースがあります。
つまり、立場や視点によって「問題行動」の定義は異なるのです。
問題行動か否かを決める場合は、以下のポイントをチェックして判断するのがいいでしょう。
- 子どもの身体・健康に危険をもたらす
- ほかの子どもの身体・健康に危険をもたらす
- 子ども本人・ほかの子どもに精神的な負担を与える行為
- 学習や活動への参加を妨げる
保育園での子どもの問題行動の事例とは
保育園でよく見られる子どもの問題行動の事例をまとめてみました。
- 保育士や周りの子どもに暴言を吐く
- ほかの子どもに手をあげる
- 活動に参加しない&妨害する
- 給食を食べない
- 自傷行為
それぞれの事例における子どもの心理、隠されたメッセージを考えていきましょう。
問題行動の事例① 保育士や周りの子どもに暴言を吐く
問題行動を起こす子どもの中には、保育士や周りの子どもに「バカ」「ウンチ」などの罵声や汚い言葉を浴びせる子がいます。
そのような行動の理由は「相手が嫌いだから」ということではなく、相手の気を引こうとしているケースがほとんどです。
過剰に反応せず聞き流すか、原因と思われる要素を取り除きましょう。
問題行動の事例② ほかの子どもに手をあげる
「ほかの子どもに手をあげる」行為は、多くの保育士が悩まされている問題行動です。
保育活動中や、遊びの中で、ほかの子どもといざこざを起こし、叩く・蹴る・噛みつくなどといった問題行動を起こす子どもは少なくありません。
子どもがケンカの際に手をあげてしまう理由は、
「言葉でのコミュニケーションが苦手」
「感情のコントロールが苦手」
のどちらかであると考えられます。
子どもが手をあげそうになった場合はすぐに仲介に入り、子どもの感情を代弁して共感しましょう。
問題行動の事例③ 活動に参加せず、妨害する
活動に参加しないばかりか、その活動を妨害する、困った子どももいます。
例えば、机に座って絵を描く活動を促している際に、椅子に座ろうとせず、机をひっくり返そうとするといった行動を起こします。
そのような場合は、
「座って作業するのが苦手」
「強制的に指示されるのが嫌」
といった背景が考えられます。
問題行動の事例④ 給食を食べない
保育園の給食時間に、給食を食べない子どもがよく見られます。
食べ物の好き嫌いが関連することがほとんどですが、
「気分が悪い」
「おなかが痛い」
といった原因も考えられます。
問題行動の事例⑤ 自傷行為
納得のいかないことがあると、
「自分の顔をひっかく」
「頭を壁にぶつける」
といった問題行動を起こす子どもがいます。
子どもが自傷行為を始めた際は、子どもがけがをしないように配慮しながら、落ち着くまで
見守ってあげることがポイントです。
頭を壁にぶつける場合は、壁にタオルを挟んだりクッションを与えたりしましょう。
保育園で子どもが問題行動を起こす原因
前項で紹介したような問題行動を保育園で起こす子どもには、どのような原因があるのかということについて、ピックアップしてみました。
- 成長途中の証である可能性
- 言葉によるコミュニケーションが苦手
- 家庭環境
- 試し行動
- 何か気付いてほしいことがある
それぞれの原因における子どもの「悩み」をひも解いていきましょう。
問題行動の原因① 成長途中の証である可能性
子どもが「たまに」問題行動を見せる場合には、それは成長途中の証とも言えます。
例えば、子どもが以前よりも嘘をつくようになった場合、それは、その子どもが「先のことを見越す力」を身に着けたというサインかもしれません。
保身行為は年齢を重ねるごとに上達していくものです。
問題行動を見分ける場合は、子どもの年齢や発達度合いを踏まえて分析しましょう。
問題行動の原因② 言葉によるコミュニケーションが苦手
前項でも説明しましたが、「言葉によるコミュニケーションが苦手」という理由から、ほかの子どもに手をあげたり、暴言を吐いたりする子どもがいます。
そのような子どもは、自分の気持ちを言葉でうまく表現できないことから、叩く・蹴る・噛みつくなどの問題行動を起こしてしまうのです。
また、相手の立場に立って考える力が足りないということも、一つの理由かもしれません。
問題行動の原因③ 家庭環境
家庭環境が問題行動を起こす大きな原因になっていることもあります。
「保護者から十分な愛情を注がれていない」
「両親の不仲」
といった家庭環境が、子どもに精神的な負担をかけ、それが問題行動として表れてしまうのです。
家庭環境からのストレスを、暴力や暴言、ヒステリーなどで発散させているケースもあります。
問題行動の原因④ 試し行動
新年度のクラス替え直後や、その保育園に勤めはじめたばかりの時期に、まだ保育士との関係の浅い子どもが問題行動を起こす場合は、それは「試し行動」かもしれません。
「試し行動」とは、子どもが「自分のことをどこまで受け止めてくれるのか」を試すために、保育士に物を投げたり、わざと「嫌い」と言ったりするなどのネガティブな行動をとることです。
ほかの保育士の前では問題行動を見せないのに、自分の前だけ問題行動を見せる場合は、試し行動である可能性が高いでしょう。
試し行動は、その子どもと信頼関係を築くための第一歩と言えます。叱るべき部分とほめるべき部分をしっかりと分けて、メリハリのある関わり方を実践してきましょう。
問題行動の原因⑤ 何か気づいてほしいことがある
頻繁に問題行動を起こす子どもには、保育士に何か気づいてほしいことがあるのかもしれません。
例えば環境の変化によるストレスや家庭環境に関する悩みや、友だちとの関係など、さまざまなことが考えられます。
日々の子どもの様子を観察しつつ、保護者に家での様子を聞きながら、適切な支援を心がけていきましょう。
保育園で子どもが問題行動を起こしたときの対応方法
保育園で子どもが問題行動を起こしたときの対応方法は、次の3つです。
- 行動のABCを把握する
- 愛情をしっかりと伝える
- 環境・状況を変えて予防する
子ども一人ひとりに合った対応方法を実践しましょう。
問題行動への対応方法① 行動のABCを把握する
問題行動を起こす子どもを対応するときは、まず「行動のABC」を把握しましょう。
「行動のABC」とは、「子どもがなぜ、その行動をとるのか」を3つの段階に分けて考えることです。
B(Behavior):行動…子どもの言動・行動
C(Consequences):結果事象…行動の後の事象
次の事例で「行動のABC」をチェックしてみましょう。
B:Kちゃんが保育士Sに「バカ」「アホ」と言う
C:Kちゃんが保育士Sに注意を受ける
Kちゃんは、自ら近づいていますので、保育士Sに「かまってほしい」「自分に興味を持ってほしい」と思っていると仮定できます。
その仮定通りなら、上記の「C」の保育士Sの対応が、Kちゃんの問題行動を誘発していることになります。
「C」の部分で保育士Sが過剰に反応しないことで、Kちゃんの問題行動を抑えることができるでしょう。
このように、子どもの行動を3段階に分け、子どもの心の動きや対応方法をつかんでいきましょう。
問題行動への対応方法② 愛情をしっかりと伝える
問題行動を起こす子どもをついつい叱りすぎてしまう保育士もいるでしょう。
しかし、叱りすぎてしまうと、子どもが「自分のことを分かってくれない」「先生に嫌われているんだ」と孤独感を覚えてしまいます。
注意すべきことは注意しなければなりませんが、同時に良い部分を見つけて褒めてあげることも大切です。
「○○ちゃんは~が上手だね」
「○○ちゃんが笑ってると先生も元気になれるよ」
といったポジティブな言葉をかけて、愛情を伝えましょう。
問題行動への対応方法③ 環境・状況を変えて予防する
環境・状況を変えて予防することも大切です。
例えば、製作や絵画などの活動に参加できず、すぐに立ち歩いてしまう子どもがいる場合は、次のような工夫で、集中しやすい環境を作りましょう。
- 机に必要最低限のものだけ置く
- 壁の装飾をはずす、もしくはカーテンで隠す
- 周りの子どもと離れた席に座るように促す
- タイマーを設置して休みながら活動させる
子どもの行動の原因を考えて、適切な環境設定を実践しましょう。
問題行動は「ヘルプ」のサイン!適切な対応で子どもと向き合おう
子どもの問題行動の背景には、家庭環境や「試し行動」など、さまざまな要因が隠れていることがあります。
行動の奥に隠された子どものメッセージをくみ取って、適切に対応することが、信頼関係を築くことにつながります。
「行動のABC」を把握して、愛情をしっかりと伝え、環境設定を考慮しながら子どもと向き合っていきましょう。
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