どちらが有利? 社会福祉法人と株式会社

どちらが有利? 社会福祉法人と株式会社

保育園には、社会福祉法人が運営する保育園と株式会社が運営する保育園があります。両者で大きく違うのは、もらえる補助金です。今回は社会福祉法人と株式会社法人の補助金の違いを詳しく解説します。

保育園の運営形態について

まず、社会福祉法人運営の保育園、株式会社運営の保育園のそれぞれの特徴を解説します。

社会福祉法人運営の保育園

社会福祉法人とは、保育・介護・医療などの社会福祉事業を行うために設立された非営利団体「社会福祉法人」のことです。
社会福祉法人を設立するには、所轄庁(原則として法人の事務所が所在する都道府県や政府が指定する都市など)による認可が必要で、設立までにやや時間がかかることもあります。
しかし、資金源は補助金や寄付金のため、比較的安定した運営を実現できます。

株式会社運営の保育園

株式会社は営利を目的としているものですから、株式会社が運営する保育園は、利益を獲得するために多くのサービスを提供しているのが一般的です。
例えば開園時間が長かったり、ほかの保育園にはないユニークなプログラムを用意したりするなど、「利用者に何らかの良質のサービスを提供している」という特徴があります。
社会福祉法人とは異なり、株式会社は最短2週間~1カ月で設立できるので、中には設立して間もない保育園もあるでしょう。
主な資金源は株式や営業による利益ですが、特定の条件を満たせば補助金や助成金を受けられるケースがあります。

社会福祉法人運営の保育園がもらえる補助金

ここからは社会福祉法人・株式会社がもらえる補助金について紹介します。
まずは株式会社よりも支援が手厚いと言われる、社会福祉法人の補助金についてみていきましょう。

社会福祉法人運営の保育園がもらえる補助金
社会福祉施設整備補助金

社会福祉法人運営の保育園(そのほか福祉施設)がもらえる補助金の一つに、社会福祉施設の整備費を補助する「社会福祉施設整備補助金」というものがあります。
この補助金は、施設整備に必要な費用の一部を補助して、施設入所者(今回の場合は園児)の福祉の向上を図ることが目的です。

社会福祉施設整備補助金の費用負担

社会福祉法人などが施設を整備する場合、国は原則としてその整備費の1/2を補助し、都道府県(指定都市・中核市を含む)は、施設設置者に対して整備費の1/4を補助します。
社会福祉施設整備補助金を受けて、施設を整備する場合の費用負担は以下の通りです。

費用負担者/設置主体 社会福祉法人など
1月2日
都道府県、指定都市、中核市 1月4日
市町村
社会福祉法人など 1月4日

ちなみに、費用の「1/4」は社会福祉法人の自己負担となります。
ただ、この部分については独立行政法人福祉医療機構の融資制度を利用できるので、施設設置者である社会福祉法人の負担が抑えられるでしょう。
この融資制度のついてはあとで詳しく解説します。

参考 厚生労働省「社会福祉施設の整備・運営」

社会福祉法人運営の保育園がもらえる補助金
保育所等整備交付金

「保育所等整備交付金」とは、保育園などの新設、修理、改造・整備に要する経費、防音壁の整備や防犯対策の強化にかかわる整備に必要な費用の一部を補助する交付金です。
この交付金の目的は、保育園の待機児童の解消を図ることです。

【補助割合】 国:1/2、市区町村:1/4、設置主体:1/4

参考 厚生労働省「保育所等整備交付金」

社会福祉法人向けの融資制度とは?

社会福祉施設を整備するときの自己負担分(1/4)については、独立行政法人福祉医療機構の融資制度(福祉貸付事業)を利用できます。
この融資制度が一体どんなものか、また融資の計算方法や償還期間・据置期間をチェックしていきましょう。

「福祉貸付事業」とは

福祉貸付事業とは、特別養護老人ホーム、保育所や障害のある方を支援する施設などの「社会福祉施設」を整備する際に、必要となる建築資金を「長期・固定・低利」で融資するというものです。
社会福祉法人や学校法人、日本赤十字社などを対象に、待機児童解消のための保育園の整備をはじめ、様々なニーズに対応する融資メニューを提供しています。

福祉貸付の計算方法

融資限度額は、次の(1)もしくは(2)で算出した額の「いずれか低い額」です。
ただ、償還財源(収支差額)の見込みによっては、この融資限度額での融資ができない場合があるので要注意です。

(1)(基準事業費 - 法的・制度的補助金)× 融資率
(2)担保評価額 × 70%

基準事業費は、独立行政法人福祉医療機構が定める「定員1人(1施設)あたりの基準単価」(機構基準費)の合計額・および「実際事業費の合計額」で算出した額の「いずれか低い額」です。

法的・制度的補助金は以下の通りです。

  • 社会福祉施設等施設整備費補助金(都道府県などの負担分を含む)
  • 施設開設準備経費等支援事業補助金(設備備品資金分)
  • 都道府県・市町村が交付する補助金など(地域医療介護総合確保基金、地域介護・福祉空間整備等交付金、安心こども基金、 保育対策総合支援事業費補助金、次世代育成支援対策交付金、保育所等整備交付金など)

保育園の場合は融資率95%の優遇あ り

区分 優遇融資 通常
融資率 95% 75・80%
貸付利率 0.9%(据置期間中無利子) 0.90%
償還期間 30年以内 20年以内
据置期間 3年以内 2年以内
※2022年年12月時点:償還期間20年完全固定金利制度の場合

保育園の場合、融資率は通常75・80%ですが、2022年からは、待機児童解消のために保育園、小規模保育園、幼保連携型認定こども園、企業主導型保育園などは優遇されており、優遇融資率が95%となっています。貸付利率は通常・優遇融資ともに基準金利同率ですが、優遇融資により据置期間中は無利で利用できます。
また、償還(返済)期間は通常20年以内ですが、優遇融資の場合は30年以内なので、余裕を持って返済できるでしょう。
ただし優遇融資の取扱期間は2025年3月31日までなので、優遇融資を受けたい場合は期間を過ぎる前に申請しましょう。

参考 独立行政法人 福祉医療機構「福祉貸付事業 融資のごあんない」

株式会社運営の保育園がもらえる補助金

株式会社運営の保育園であっても、補助金や助成金を受けられるケースがあります。
具体的にどんな補助金・助成金がもらえるのか解説します。

株式会社運営の保育園がもらえる補助金
保育所等改修費等支援事業

「保育所等改修費等支援事業」は、賃貸物件を活用して保育園を設置する際や、幼稚園で長時間預かり保育を実施する際、認可外保育施設が認可保育園の設備運営基準を満たすために必要な改修費の一部を補助するというものです。

【補助割合】国:1/2、市区町村:1/4、設置主体:1/4

この補助金の対象は市町村・市町村が認めた者(委託先) なので、社会福祉法人・株式会社どちらも利用できます。

参考 厚生労働省「令和4年度 保育関係予算概算要求の概要」

株式会社運営の保育園がもらえる補助金
都市部における保育所への賃借料支援事業

都市部にある保育園のうち、賃借料が公定価格の賃借料加算の3倍を超える施設に対して賃料の一部を補助するというものです。
また、土地の確保が難しい都市部での保育園整備を促進するため、施設整備補助を受けずに保育園の整備を行う法人に対して、土地借料の一部を支援します。

・賃借料の補助 1施設あたり 220万円
・土地借料の補助 1施設あたり 212万円
・補助割合   国:1/2、市区町村:1/4、事業者:1/4

保育所等改修費等支援事業と同じく、この補助金の対象は市町村・市町村が認めた者(委託先) なので、社会福祉法人・株式会社どちらも利用できます。

参考 厚生労働省「令和4年度 保育関係予算概算要求の概要」
 

株式会社運営の保育園がもらえる補助金
事業所内保育園・企業主導型保育園向けの助成金

事業所内保育(認可保育園)・企業主導型保育園(無認可保育園)は、助成金を受けられます。
それぞれの助成額の割合をまとめてみました。

事業所内保育園 企業主導型保育園
設置費
(設備費)
大企業:全体の1/3(上限1,500万円)
中小企業:全体の2/3(上限2,300万円)
定額(工事費用の3/4相当分)
増築費 大企業:全体の1/3
(上限は増築750万円、建て替え1,500万円)
中小企業:全体の2/3
(上限は増築1,150万円、建て替え2,300万円)
なし※支給されるケースあり
運営費 大企業:職員1人当たり年額34万円(上限1,360万円)
中小企業:職員1人当たり年額45万円(上限1,800万円)
全体運営費の50~95%

上記のように、助成金の上限額が多い企業主導型保育事業の方が費用を抑えられます。

参考
内閣府「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金のご案内」
内閣府 「企業主導型保育事業パンフレット」

社会福祉法人・株式会社の補助金の違いを知って準備しよう

社会福祉法人は、株式会社では受けられないような補助金をもらえたり、融資をもらえたりするので、安定した保育園の運営を目指す経営者におすすめです。
ただ、株式会社であっても補助金や助成金をもらえるケースもあるので、施設の規模や設備の状態に合わせて賢く使っていくのがベターです。
保育園設立の際は、社会福祉法人・株式会社の補助金の違いを把握してから、準備してみていきましょう。

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