保育業界でも、他業界と同じように人材派遣や有料職業紹介を通じて保育士を雇用することが増えています。人材派遣の方がポピュラーで、有料職業紹介についてはあまり知らない保育園経営者もいるようです。そこで今回は、保育士を雇う場合の人材派遣と有料職業紹介の特徴や違い、メリットや料金を説明します。
この記事のもくじ
保育士の人材派遣の仕組み
ご存じの通り、人材派遣はさまざまな業界で利用されています。
保育業界でも同じ仕組みになりますが、あらためて保育士の人材派遣の仕組みや種類を説明していきます。
派遣される保育士は派遣会社の所属
人材派遣とは、派遣元である「派遣会社」に所属する人材(ここでは保育士)を、派遣先(ここでは保育園)に派遣するサービスです。
つまり、保育士と雇用関係を結ぶのは派遣先の保育園ではなく、派遣会社ということになります。
したがって、給与を支払ったり、社会保険の手続きをしたり、有給休暇をの付与したりするのも、すべて派遣会社です。
一方、派遣先である保育園は、派遣された保育士に業務を教えたり、派遣会社に派遣料金を支払ったりします。
派遣の形態にもよりますが、派遣の契約は数カ月おきに更新され、最長3年まで契約を継続できます。
人材派遣の種類
人材派遣は、主に「登録型派遣」「紹介予定派遣」「常用型派遣」 の3種類があります。
登録型派遣 | 一般的な派遣スタイル。最長3年、派遣先の保育園に就業できる。 |
---|---|
派遣期間終了後に保育士本人と保育園の合意のもと、正社員もしくは契約社員に切り替えられる派遣スタイル。 | |
常用型派遣 | 派遣会社の正社員である保育士が、保育園に派遣される派遣スタイル。 |
登録型派遣は「一般派遣」とも呼ばれ、最長3年間、」派遣先の保育園に就業できます。
紹介予定派遣は、派遣期間終了後にその保育士を正社員・契約社員として雇用できます。つまり、「お試し期間としてその人の実力を吟味してから、直接雇用したい」という場合におすすめです。
常用型派遣は、派遣会社の正社員です。信頼度の高い保育士を派遣してもらえることが保育園側にとっての利点です。
人材派遣を利用した場合の料金
人材派遣を利用した場合、保育園側が支払う料金は、派遣会社が決めたその保育士の時給や契約内容によって異なりますが、目安としては、1日に保育園が支払う金額は2~3万円程度です。
ちなみに、派遣会社は保育園が支払った料金のうち、全体の70〜80%を派遣した保育士の給料として支給し、残りの20~30%を派遣会社の取り分とすることが多いようです。
たとえば、保育園に週5回、派遣スタッフを呼んだ場合は、次のようになります。
- 保育士の時給:1700円
- 1日の労働時間:8時間
- 派遣日数:週5回/1カ月
- 保育士の日給:1万3600円
- 保育園が1日に支払う料金:2万円(保育士へ1万3600円、派遣会社に6400円)
- 保育園が1カ月に支払う料金:40万円程度(保育士に27万2000円、派遣会社に12万8000円)
- 保育園が1年で支払う料金:480万円程度(保育士に326万4000円、派遣会社に73万6000円)
もちろん、時給や条件は派遣会社と交渉して決めるので、上記より安く抑えることもできるかもしれません。
あくまでも有料職業紹介と比較する際の目安として、押さえておきましょう。
保育士の有料職業紹介とは
有料職業紹介は求職者と、人材を募集している企業(今回の場合、保育園)をマッチングさせるサービスで、「人材バンク」「転職エージェント」などと呼ばれることもあります。
近年、保育業界でも保育士を有料職業紹介で雇用することが増えています。
特徴や種類、料金を人材派遣と比較してみましょう。
有料職業紹介なら保育士を直接雇用できる
人材を募集している保育園が人材紹介会社と契約し、人材紹介会社に登録している保育士を紹介してもらうという流れになります。
人材派遣の流れと似ていますが、有料職業紹介の場合は、保育園がその保育士を直接正社員として雇用することになります。
人材派遣会社がスタッフを派遣しているのとは異なり、人材紹介会社はスタッフを紹介し、あくまでも仲介しているという役割です。
有料職業紹介の種類
有料職業紹介は主に「登録型」「サーチ型」の2種類に分けられます。
登録型 | 一般的な職業紹介スタイル。人材紹介会社に登録された求職者と求人企業(保育園)のマッチングをおこなう。 |
---|---|
人材紹介会社がほかの人材紹介会社のデータベースやSNS、人脈を活用して、広範囲で人材をサーチして紹介するスタイル。 |
登録型は、人材紹介会社に登録された保育士と保育園をマッチングする、一般的な紹介スタイルです。幅広い職種を取り扱う「総合型」と、特定の職種に特化した「専門型」の2パターンがあります。
サーチ型は人材紹介会社が自社のデータベースを超え、他社データやSNS、人脈から保育士をサーチして紹介するスタイルです。
ヘッドハンティングやスカウトとも呼ばれています。
有料職業紹介で保育士を雇う場合の料金
有料職業紹介を利用した場合、保育園側は、その保育士が入社後に受け取る予定の年収の10~30%程度の金額を紹介手数料として支払います。
保育士の仮年収が300万円なら、保育園側が支払うのは30~90万円程度です。
ちょっと高いなと思うかもしれませんが、確実に保育園とマッチした保育士を確保できると考えれば、意外とリーズナブルかもしれません。
保育士を雇うなら人材派遣?有料職業紹介?
人材派遣と有料職業紹介の違いをまとめてみました。
人材派遣 | 有料職業紹介 | |
---|---|---|
雇用主 | 派遣会社 | 保育園 |
派遣・紹介の方法 | 派遣会社に所属する人材を派遣 |
|
契約・雇用期間 |
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料金 |
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人材派遣と有料職業紹介とでは、派遣・紹介の方法や、雇用形態などが異なりますが、利用料金は会社によって差があるものの、年間換算ではそこまで大きな差はないようです。
人材派遣・有料職業紹介で保育士を雇うメリット
人材派遣と有料職業紹介、それぞれの特徴や利点を踏まえて、どちらを利用するか決めましょう。
人材派遣で保育士を雇うメリット
人材派遣で保育士を雇うメリットは以下の通りです。
- 選考の手間が省ける
- 雇用期間を定めて依頼できる
- より自園に合った人材を確保できる
人材派遣は、派遣会社であらかじめ選考を行い、保育園に合う保育士をピックアップするので、保育園側が時間をかけて選考する必要がありません。
また、登録型派遣の場合は「最長3年」という期間の中で、数カ月おきに契約継続の有無を選択できますので、もしその保育士が保育園と合わないと思ったら、契約を継続せず、新たな保育士の派遣を依頼できます。
紹介予定派遣の場合は、契約終了後にその保育士を正社員・契約社員として雇用できます。
最初の数年を「長い試用期間」として捉えれば、保育士と保育園との相性をじっくり見きわめ、本当に自園と合った保育士を採用できるでしょう。
有料職業紹介で保育士を雇うメリット
有料職業紹介で保育士を雇うメリットは以下の通りです。
- スキルの高い人材を確保できる
- 通常の雇用ルートとは違う雇用が可能
- 長期的な雇用が期待できる
特定職種に特化した「専門型」の有料職業紹介会社なら、保育業界に精通したスタッフが、スキルの高い保育士や、よりその保育園にマッチした保育士を紹介してくれるはずです。
また、その会社が保有している人材データ以外にも、他社データやSNS、人脈を活用して、さまざまな角度から優秀な保育士を探してくれるため、通常の雇用ルートでは出会えないような保育士と出会えるかもしれません。
また、有料職業紹介は、基本的に正社員となる保育士を紹介するので、長期的な雇用が期待できます。
何度も求人をかける必要がなくなりますし、人の入れ替わりによるチームや子どもへの影響も防げるでしょう。
人材派遣・有料職業紹介、選ぶならどっち?
保育士を雇用するなら、人材派遣と有料職業紹介のどちらがいいのでしょうか?
それは「何を優先するか」ということによって異なります。
人材派遣と有料職業紹介の利用料金は、年間で換算すると大きな差はありません。
ただ、人材派遣の場合、契約期間が短ければ、保育園が支払う金額は当然少なくなります。
つまり「短期間の雇用でいい」「すぐに欠員を埋めたい」というような場合には、人材派遣がおすすめということになります。
一方、「長く働いてほしい」「保育士がしょっちゅう入れ替わるのは避けたい」という保育園には、有料職業紹介が向いているでしょう。
重視するポイントに合わせて人材派遣・有料職業紹介を選ぼう
保育士の人材派遣は、雇用期間を定めて依頼でき、より自園に合った保育士を確保できるメリットがあります。
保育士の有料職業紹介は、長期的な雇用が期待でき、スキルの高い保育士を確保できるメリットがあります。
雇用期間だけでなく、保育士と園の相性など、重視するポイントに合わせて、自園に合ったサービスを選んでくださいね。
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