保育所保育指針を読む保育士はココが違う!

保育所保育指針を読む保育士はココが違う!

保育士試験の勉強や保育学校の授業では保育所保育指針を読んだことはあるものの、現場ではあまり開いたことがない、という保育士さんも少なくないはず。しかし、保育指針には保育実践のヒントが盛りだくさんです。今回は保育指針の内容と活用方法についてご紹介します。

保育所保育指針とは?

保育所保育指針の具体的な内容に入る前に、まずは保育所保育指針がどんなものか、おさらいしていきましょう。

保育の基本的なガイドライン

保育指針は、保育所や幼稚園、認定こども園などの保育施設における保育の基本的な考え方や保育内容、運営に関する事項を定めた指針です。
保育の質を保ち、園運営の向上を図るための拠り所として、全国の保育施設で共有されています。
また保育養成施設の授業でも使用されており、保育士試験では毎年、保育所保育指針から多くの問題が出題されています。
そんな保育所保育指針は、保育に携わる人であれば必ず理解しておくべきガイドラインとして重要視されている存在です。

保育所保育指針の構成

それでは次に、保育所保育指針の全体像をみていきましょう。
保育所保育指針は5つの章で構成されています。

保育所保育指針の構成

第1章 総則
第2章 保育の内容
第3章 健康及び安全
第4章 子育て支援
第5章 職員の資質向上

第1章の総則には、保育所の役割や目標、社会的責任をはじめ、養護の理念、保育の計画・評価にまつわる事項など、保育所保育の前提となる部分が記載されています。
第2章は、後述する「3つの視点」「5領域」「10の姿」といった保育のねらい・内容、保育を実施する上での配慮事項など、より実践的な内容です。
第3章は子どもの健康支援や食育の推進、環境・衛生・安全管理、災害対策に関する内容、そして第4章には、保育所を利用する保護者への子育て支援、地域の保護者などへの子育て支援についての事項が記されています。
最後の5章には、職員の資質向上に関する基本的な内容、職場における研修といった内容を記載しています。

「遵守すべきもの」と「実情に応じて創意工夫を許容するもの」

保育所保育指針は厚生労働大臣告示として定められた「規範性を有する基準」ですが、規定されている事項は内容によって以下の3つに区別されます。

① 遵守しなければならないもの
② 努力義務が課されるもの
③ 基本原則にとどめ、各保育所の創意や裁量を許容するもの、又は各保育所での取組が奨励されることや保育の実施上の配慮にとどまるもの など

保育所はこれらを踏まえて、それぞれの実情に応じて創意工夫を図り、保育を行うと同時に、保育所の機能・質の向上に努めることが求められます。

押さえておきたい保育所保育指針のポイント

先ほど触れたとおり、保育所保育指針の第2章には「3つの視点」「5領域」「10の姿」についての記載があります。
この3つは保育のねらい・内容といった非常に実践的なものなので、多くの現役保育士さんが日々の保育の参考にしています。
ここでは、そんな重要な「3つの視点」「5領域」「10の姿」について解説します。

3つの視点

2017年の保育所保育指針の改定(施行は2018年)で新たに追加された「3つの視点」は、乳児期の保育のねらいや内容を示すもので、身体的・社会的・精神的発達の基盤を培うことを目的としています。

3つの視点

  • 身体的発達に関する視点「健やかに伸び伸びと育つ」
  • 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」
  • 精神的発達に関する視点「身近なものと関わり感性が育つ」

快適な環境で運動・食事・睡眠など生活習慣の基盤を作ったり、保育士との触れ合いの中で愛着関係を築いたり、身の回りのものに触れて興味関心を持ったりといった、ねらい・内容が含まれています。
この乳児期の「3つの視点」を経て、幼児期の保育のねらい・内容を示す「5領域」へと広がっていくイメージですね。

5領域

保育所保育指針では、幼児教育で育みたい子どもの資質・能力として「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」の3つをあげています。
これら3つの資質・能力を育むために必要となる5つの領域が「5領域」です。

5領域

  • 健康
  • 人間関係
  • 環境
  • 言葉
  • 表現

この「5領域」は、1歳~3歳未満児・3歳以上の子どもの成長を支える重要な指標として、保育計画や指導案の作成の際に欠かせない要素です。
保育士は子どもの年齢や発達の特徴を踏まえ、5領域を意識して保育計画を作成することで、子どもの総合的な心身の発達を促すことが求められています。

5領域の「表現」については、この記事で詳しく解説しています。

保育5領域のひとつ「表現」の年齢別実践例

10の姿

保育所保育指針の第1章「総則」では、「幼児期までの終わりに育って欲しい姿」として10の項目をあげています。
これを「10の姿」といいます。
「3つの視点」と同じく、保育所保育指針の改定で新たに追加された部分です。

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿

  • 健康な心と体
  • 自立心
  • 協同性
  • 道徳性・規範意識の芽生え
  • 社会生活との関わり
  • 思考力の芽生え
  • 自然との関わり・生命尊重
  • 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
  • 言葉による伝え合い
  • 豊かな感性と表現

上記の姿は、「幼児教育で育みたい子どもの資質・能力が、5領域のねらい・内容に基づく保育活動を通じて育まれていったとき、幼児期の終わりにはどんな姿になるか」を明確化したものです。
とはいえ、「10の姿」は小学校入学前に必ず実現すべきもの、というわけではありません。
あくまであくまで方向性・指針として捉え、それぞれの保育所の子どもたちが発達の各時期にふさわしい生活を送れるように、指導計画を作成することが重要です。

デキる保育士が保育所保育指針を読む理由!

保育所保育指針には、子どもたちの発育のために必要な関わり方や、現代の保育に求められている役割がしっかりと明記されていて、読み込んだぶん保育の知識やスキルが身に付きます。
そのため、優秀な保育士さんの中には、保育指針を「保育実践のバイブル」として頻繁に活用している優秀な保育士さんがたくさんいます。
保育所保育指針を読み込むと、具体的にどんなメリットがあるのか、一緒にみていきましょう。

「育ってほしい姿」を明確に意識できる

保育所保育指針委は、「保育の目標」をより具体化した「ねらい」、そして「ねらい」を達成するために子どもの生活やその状況に応じて保育士が行う「内容」などが記載されています。
そのため、乳児期は「3つの視点」、幼児期には「5領域」を参考に、ねらいに沿ったカリキュラムや保育計画を立てるといった活用方法ができます。
「10の姿」を振り返り、育ってほしい姿を意識すると、「そのために今必要な支援」も見えてくるはずです。

子どもの課題が見えてくる

保育現場で悩んでいることを保育所保育指針に沿って考えることで、支援の課題がクリアになります。
「3つの視点」や「5領域」のねらい・内容を読んで、実際の保育と照らし合わせると、今実践している保育で足りない部分に気付くことができます。
「子ども同士の関わり合いの場をもっと増やしてもいいかも」「木の葉とか虫とか、自然と触れ合う機会を増やそう」など、保育のヒントが見つかるでしょう。

多面的に子どもの成長を捉えられる

子どもを保育する中で、気になるところが出てきたとき、「ここの援助が足りない、何とかしなければ」と焦ってしまうこともありますよね。
こんなときこそ、保育所保育指針の出番です。
子どもの気になる部分だけを見ているだけでは気付かない、子どものよい部分を発見できます。
「できていないこと」にばかり目が行きがちですが、保育指針を見ると「できていること」もたくさんあった、ということにも気付くはずです。

保育士の資質の向上につながる

保育所保育指針には保育で役立つ実践的な内容だけでなく、「保育所職員に求められる専門性」「保育の質の向上に向けた組織的な取組」「施設長の責務」なども書かれています。
一人の保育士としてはもちろん、主任や園長などのリーダーとしての指針も学べます。
この部分をしっかりと読み込むことで、保育の資質の向上や、保育士が働きやすい環境づくりにつながるでしょう。

イマの保育に求められている役割が分かる

保育所保育指針は、1965年8月に策定されて以来1990年、1999年、2008年、そして直近では2017年に改訂 されています。
改定には、時代によって保育園利用が増加していること、子育てニーズが多様化していることなど、さまざまな背景があります。
つまり、その時代の社会状況の変化に合わせて改定されているのです。
保育所保育指針を読みこむことで、「現代の保育に求められている役割」が分かり、保育者としての意識も高まります。

今からでも遅くない!保育所保育指針を読んでみよう

保育所保育指針には「各保育所では、保育所保育指針を日常の保育に活用し、社会的責任を果たしていくとともに、保育の内容の充実や職員の資質・専門性の向上を図ることが求められる」と記載されています。
保育所保育指針は保育の基本的な在り方を示すガイドラインであるとともに、保育士の資質・専門性の向上に欠かせない存在と言えるでしょう。
日々の保育の参考としてはもちろん、保育の知識・スキルの向上に向けて、今一度手に取って読んでみてはいかがでしょうか?

参考 厚生労働省「保育所保育指針解説」

 

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