保育所保育指針は、保育士現場でも活用されている「保育のガイドライン」ですが、範囲が広く覚えることも多いので「読み解くのが難しい」と悩む保育士さんもいるでしょう。そこで今回は、保育所保育指針をより理解するために役立つ解説本も紹介し、読み解き方を解説します。
保育士のバイブル「保育所保育指針」
保育所保育指針は保育の質を保つための基準として、保育所での保育内容や運営に関する事項を定めたものです。
保育に携わる人であれば必ず理解しておくべきガイドラインとして重要視されています。
そんな保育所保育指針の重要なポイント、そして現場でどのように役立つのかを最初にチェックしてきましょう。
保育所保育指針の重要なポイント
保育所保育指針には保育実践のヒントがたくさん盛り込まれています。
中でも「3つの視点」「5領域」「10の姿」の3点は、現場で保育計画を立てるときの参考となる重要な部分です。
3つの視点 |
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乳児期の保育のねらいや内容を示すもの。身体的・社会的・精神的発達の基盤を培うことを目的としている。 | 5領域 |
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幼児期の発達や成長を支えるための指標として分類された5つの領域。 | 10の姿 |
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「幼児期までの終わりに育って欲しい姿」としてあげられる10の項目 |
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「3つの視点」「5領域」「10の姿」は保育のねらいや内容、保育の方向性を示すものなので、保育を展開する際の大きな指針となります。
「3つの視点」「5領域」「10の姿」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
●保育所保育指針は現場でどんな風に役立つ?
「3つの視点」「5領域」「10の姿」などは保育現場でどのように役立つでしょうか?
例として「3つの視点」の一部を挙げて紹介していきます。
【ねらい】
- 身体感覚が育ち、快適な環境に心地よさを感じる。
- 伸び伸びと体を動かし、はう、歩くなどの運動をしようとする。
- 食事、睡眠等の生活のリズムの感覚が芽生える。
【内容】
- 保育士等の愛情豊かな受容の下で、生理的・心理的欲求を満たし、心地よく生活をする。
- 一人一人の発育に応じて、はう、立つ、歩くなど、十分に体を動かす。
- 個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めていく中で、様々な食品に少しずつ慣れ、食べることを楽しむ。
- 一人一人の生活のリズムに応じて、安全な環境の下で十分に午睡をする。
- おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じる。
上記は「3つの視点」の1つ、「健やかに伸び伸びと育つ」の視点に関するねらいと内容です。
ここでは乳児の健康な心と体を育て、健康で安全な生活をつくり出す力の基盤を培うことを目的とした援助について記載されています。
また、保育所保育指針の「3つの視点」「5領域」の記載部分には内容の取扱いという項目があり、そこにはそれぞれのねらい・内容に沿って保育を進める中で、保育士が留意すべき点が書かれています。
保育士は乳時期の発達・発育の特徴を踏まえながら、このねらいと内容、内容の取扱いに沿って「子どもの興味を引くおもちゃを用意して、はう、手を伸ばす、つかむ……の動きを促そう」「お米のおかゆに慣れてきたから、次はおいもやかぼちゃにチャレンジしてみよう」など保育計画を立て、実践していきます。
これならわかりやすい!保育所保育指針を理解するコツ
保育所保育指針の原文は要点を抑えたシンプルな構成になっていますが、あまり文字を読むのが得意ではない人にとっては、やや複雑で難しい印象かもしれません。
保育所保育指針の解説文書は、保育指針の内容を深く掘り下げたものですが、原文と同じく文字だけの文書で、かなりボリュームもあるので抵抗感を覚える人もいるでしょう。
そこで今回は、保育所保育指針をより理解する3つの方法を紹介します。
保育所保育指針の解説本を読む
保育系の学校や、保育士資格取得のためのスクールでは、厚生労働省による保育所保育指針の公式解説本を教材として扱うことがあります。
現役保育士さんの中には、この解説本を持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実は厚生労働省の解説書以外にも保育所保育指針の解説本はたくさんあります。
イラストや漫画、図やグラフを使ってわかりやすく内容を解説したものや、実践例を交えながら援助のポイントを示したものなど、保育所保育指針を読み解く工夫が施された本もさまざまな出版社から出ています。
こうした本は、「文字だけだと、あまり保育のイメージが湧かない」という人にぴったりでしょう。
保育所保育指針の解説動画を見る
「文章やイラストなどの目(視覚)だけの情報だと、内容が頭に入りにくい」という人は動画がおすすめです。
YouTubeをはじめとする動画配信サイトには、専門家が保育所保育指針の内容を解説する動画があります。
こうした動画はテキスト、アニメーション、画像を使用しているほか、音声でも解説しているがポイントです。
目からも耳からも情報が入ってくるので、より頭に入りやすいという声も少なくありません。
保育所保育指針のセミナーを受ける
日本保育協会や保育系スクールでは、保育所保育指針に関するセミナーが定期的に行われています。
専門家の講師を招いて、保育所保育指針を読み解いたり、実際の保育を振り返って評価したりと、保育の質の向上を目的として実施されるセミナーです。
オンラインでも開催されることもあるので、忙しい現役保育士さんでも気軽に受講できます。
おすすめの保育所保育指針の解説本3選
おすすめの保育所保育指針の解説本を3冊紹介します。
わかりやすいだけでなく、保育実践のヒントが盛り込まれた本も取り上げているので、保育計画の参考にしてみてください。
『マンガでわかる!保育所保育指針2017年告示対応版』
イラストと漫画を取り入れ、2017年に改定された保育所保育指針のポイントをわかりやすく紹介した本です。「第1章 総則」「第2章 保育の内容」「第3章 健康及び安全」「第4章 子育て支援」「第5章 職員の資質向上」など保育所保育指針の構成に沿ったショートストーリー、そして文章での解説の両方を掲載しており、絵でも文章でも理解を深められます。
コラムも書かれているので、さらに学びが広がりそうです。
『現場に活かす 保育所保育指針実践ガイドブック』
保育の充実と発展を目的として、セミナーや研修、保育士登録、保育に関する研究などを行う日本保育協会が監修した、保育所保育指針の実践ガイドブックです。主に文章とイメージ図を用いて、原文に沿って内容を掘り下げています。
保育所保育指針の改定の背景・ポイントに加えて、幼保連携型認定こども園教育・保育要領改正についても解説しているので、両方合わせて知りたい人にはおすすめです。
『保育所保育指針ハンドブック イラストたっぷり やさしく読み解く』
イラストを用いた優しい解説と実践例を盛り込んだ、現場ですぐに役立つハンドブックです。2017年の改定で新たに加わった乳児と1歳以上3歳未満児の「ねらいと内容」に関するページでは、原文とともに「読み解くポイント」も記載されており、両方を照らし合わせながら理解を深められます。
イラストや図が多いほか、重要な部分が太字で強調されていたり、下線が引かれていたりするので、ポイントを押さえながら学べるでしょう。
保育所保育指針を理解する「ファーストステップ」
保育所保育指針の原文を読むことにハードルを感じる人は、ファーストステップとして、本や動画、セミナーなどを活用するのがおすすめです。
原文をあまり読んだことがない人、一部しか読んだことがない人でも、こうした「きっかけ」を通じて、まずは“内容を知ってみる”ことからスタートしてきましょう。
こうした解説コンテンツを経て、原文を読むと以前はあまりイメージできなかった点がクリアになるはずですよ。