保育士は、「一人前」になるまでに何年かかるでしょうか。保育園は若手が活躍できる現場ですから、いつ一人前になれるのか気になる保育士さんも多いと思います。今回は保育士の平均勤続年数や、働き続けやすい保育園の選び方を紹介します。
何年経験すれば「一人前の保育士」と言えるか
「保育士を続ける人が少ない」。
現場ではそのような声がよく聞かれます。実際に保育士として働き続けている人はどれぐらいいるのでしょうか。
そこで保育士の平均勤続年数をチェックし、何年経験したら一人前の保育士と言えるのかということを考えてみましょう。
保育士の平均勤続年数は7.8年
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和元年以前)」では、全国の保育士の勤続年数は男女合わせて平均7.8年でした。
また、「社会福祉施設等調査(平成27年)」でも、経験年数が低い保育士が多く、8年未満の保育士が約半分という結果となっています。
このデータによると、勤続年数14年以上(30%)が一番多いものの、2番目に勤続年数2未満(15.5%)、3番目に2~4年未満(13.3%)となっています。
全体として見ると勤続年数8年未満で30%以上を占め、中でも2年未満~4年未満で辞める保育士が多いことがわかりますね。
こうした実態から、入社して2~4年を超えると一人前と認識される保育現場が多いと思われます。
もちろん、経験だけではなく個人のスキルの差、活躍の度合いによって一人前とされるタイミングは異なります。
ただ、「鬼門」とも言える勤続年数8年を超えると、「ベテラン」と認められるようになるでしょう。
「保育士が一人前として認められるのは2~4年、ベテランと認められるのは8年経ってから」。そう覚えておくよいでしょう。
一般の人の平均勤続年数は12.4年。ただし女性は…
上記したように保育士の勤続年数は平均7.8年ですが、これは保育士ではない一般の人と比べて短いのでしょうか、長いのでしょうか。
同じく「賃金構造基本統計調査(令和元年)」によると、一般労働者(男女)の勤続年数は、平均12.4年でした。
つまり、保育士より4~5年長い勤続年数ということになります。
ただ、これは男女合計の数で、男女別に勤続年数を見ると、男性は平均13.3年なのに対して、女性は平均9.8年となっています。
ちなみに業種別の継続年数は以下の通りです。
- 情報通信業……男性 平均14.2年、女性 平均9.9年
- 宿泊業、飲食サービス業……男性 平均10.2年、女性 平均7.8年
- 生活関連サービス業、娯楽業……男性 平均10.9年、女性 平均8.3年
保育士は女性が多いわけですから、他業種の女性の継続年数と保育士の継続年数は、そんなに大きな差がないとも言えます。
保育士の勤続年数はなぜ短いのか?
一般労働者の女性が男性より勤続年数が短いということは、保育士の勤続年数が短い理由も、「女性が多く就く職業だから」なのかもしれません。
東京都福祉保健局の「東京都保育士実態調査報告書」を見ると、「妊娠・出産」が退職理由だった保育士の割合は22.3%。ちなみに「結婚」は18.4%、「子育て・家事」は13.5%でした。
ただ、それら以外の理由で保育士が退職することもあります。
中でも多いのは、以下の理由です。
- 職場の人間関係……33.5%
- 給料が安い……29.2%
- 仕事量が多い……27.7%
- 労働時間が長い……24.9%
「人間関係の悩み」は、どの仕事でもあると言えますが、「給料の安さ」や「仕事量の多さ」や「残業・持ち帰りの作業の多さ」は、保育士ならではと言えるかもしれません。
もちろん、すべての保育園でこのような問題が起こるわけではありません。
労働環境の良い保育園を見つけることが、保育士が長く勤めるうえでのポイントとなるでしょう。
参考
厚生労働省 保育士の現状と主な取組
厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査の概況
保育園での役職
さて、入社して2~4年を超え、「一人前」と呼ばれるようになった先には、どんなキャリアステージが待っているでしょうか。
施設によって異なりますが、保育園では基本的に一般保育士、職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任、主任、園長といった役職が設けられています。
職務分野別リーダー
職務分野別リーダーは保育士として業務を行いながら、ほかの保育士に指導やアドバイスをする役職です。
経験年数3年以上で、担当する職務分野の研修を修了した人が就けます。
専門リーダー
専門リーダーは、高い専門性に基づいて専門分野でリーダー的な役割を担う役職です。
経験年数7年以上、職務分野別リーダーの経験を積んだうえで、4つ以上の分野の専門研修を修了した人がなれます。
副主任
副主任は、園長や主任をサポートしつつ、ほかの保育士の声を上に届けるパイプ役です。
経験年数7年以上で、職務分野別リーダーとしての経験やマネジメント+3つ以上の分野の専門研修を修了した人がなれます。
主任
主任保育士は、保育園で園長をサポートしたり、現場保育士をまとめたりするリーダー職です。
基本的に勤続年数21年ほどの保育士が就ける役職です。
管理職・リーダーとしての知見・スキルのほか、保育の知識・スキル、組織のマネジメント力などが求められます。
園長
園長は、保育園の運営・経営を担う責任者です。
平均勤続年数24年で、保育士をはじめとする職員の採用や指導はもちろん、クレーム処理や地域や行政などの外部との連携など、幅広い業務を担当します。
公立保育園の場合は、保育士として勤務した実績と昇進試験への合格が条件となります。
一方、私立保育園の場合は、園長になる際に保育士資格の取得は義務付けられていません。
長く働き続けられる保育園の選び方
「一人前の保育士」と認められた後も、長く働き続けるためには、労働環境がしっかりと整った保育園を見つけることが大切です。
長く働き続けられる保育園の選び方を3つ紹介します。
結婚・出産を経て復帰している保育士がいる保育園
結婚・出産を経て復帰している保育士がいますか?
どの保育園でも産休・育休制度はありますが、その制度をちゃんと利用できる環境があるか、利用した後に復帰しやすいか、ということは保育園によって異なります。
人手が足りなかったり、保育士一人ひとりの負担が多かったりする現場では、産休・育休を使えないままに退職してしまう確率が高いでしょう。
逆に、結婚・出産を経て復帰している保育士がいる施設は、労働環境が良く、産休・育休を使いやすい施設と言えるでしょう。
頻繁に求人していない保育園
求人を頻繁に出していない保育園は、働き続けやすい環境が整っている可能性があります。
なぜかというと、辞める人が少なかったり、必要となる補填人数が少なかったりすることが多いからです。
逆に、いつ見ても転職サイトに求人を出しているような保育園は、人手不足が常態化しているのか、辞める人が多いのか、どちらかである可能性が高いでしょう。
転職サイトで保育園を探している場合は、あまり見かけない保育園や、エージェントが教えてくれる非公開の保育園が狙い目になるかもしれません。
経験・能力を評価してくれる保育園
保育士としてキャリアアップを目指すなら、経験・能力を評価してもらいたいですよね。
定期的に評価の機会を設けて、しっかり役職手当やベネフィットを提供する保育園なら、働き続けるモチベーションも保てます。
転職の際には、評価制度や役職にまつわるベネフィットなどを、面談や説明会で確認してみてください。
研修を開催したり、キャリアアップ支援をしたりしているかということも聞いてみましょう。
働き続けやすい保育園を見つけてキャリアプランを考えよう!
保育士は8年未満、中でも2年未満~4年未満で辞めてしまう人が多いことから、保育士として一人前と言えるのは、「2~4年」という壁を越えた人です。
一人前の保育士として認められた後も、長く働き続けるためには、働き続けやすい保育園を見つけることが重要です。
今後のキャリアを考えるなら、結婚・出産を経て復帰している保育士がいる保育園や、経験・能力を評価してくれる保育園を選びましょう。
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