認可保育園は、法律により自園に調理室を設けることが義務づけられています。給食には厚生労働省の「保育所における食事の提供のガイドライン」がありますが、給食室については自営(直営)している保育園と、外部の給食委託会社に任せている保育園があると思います。自営と外部委託、どちらがいいのでしょうか?
保育園の給食室は自営・委託の2パターン
保育園の給食室運営には、自営・委託の2パターンがあります。
それぞれの形態については次のようなものです。
保育園が自営する給食室
保育園が施設内に調理スペースを確保して、給食スタッフを配置し、子どもや職員に給食を提供するパターンです。
給食スタッフのメインになるのは、直接調理に携わる「調理師」や給食の献立を決める「栄養士」です。
ただ、保育園によっては栄養士が献立を決めるだけでなく、調理を担当することもあります。
保育園の委託で外部会社が運営する給食室
保育園の給食提供にかかわる業務を、外部の給食委託会社に依頼するパターンです。
保育園は委託費(もしくは食単価費)を支払い、給食委託会社に給食スタッフの用意から献立の作成、調理までを任せます。
給食の委託は、保育園の調理スペースに給食委託会社の調理スタッフを配置して、給食を作ってもらう方式と、給食委託会社が所有する調理施設で作ったものを保育園に届けてもらう方式の2つがあります。
保育園が給食室を自営するメリット
保育園が給食室を自営するメリットは主に3つ挙げられます。
- 食材やメニューにこだわった給食を提供できる
- 子どもや保護者とのコミュニケーションがスムーズ
- 行事・イベントに合わせたメニューを提案できる
自営ならではの魅力をひとつずつ解説していきましょう。
保育園が給食室を自営するメリット①
食材やメニューにこだわった給食を提供できる
給食室を自営する場合、食材やメニューにこだわった給食を提供できます。
中には、地域の野菜・果物を選んだり、調理スタッフが自ら食材の質を確認して選んでいる保育園もあります。
また、旬の食材も使用したメニューの作成や、子ども一人ひとりに合わせた調理など、融通が利きやすいことも魅力の一つと言えるでしょう。
保育園が給食室を自営するメリット②
子どもや保護者とのコミュニケーションがスムーズ
給食室を自営する保育園では、給食スタッフが給食の時間に保育室で子どもたちの様子を見守ったり、ときには介助したりすることがあります。
このため、子ども一人ひとりの食への関心の度合いや食の好みなども、すぐに把握できます。
また給食スタッフが保育園内にいるために、保育士や保護者とコミュニケーションをとる機会も多くなります。
量の調整やアレルギー対応など、細やかな要望を反映しやすいでしょう。
保育園が給食室を自営するメリット③
行事・イベントに合わせたメニューを提案できる
行事・イベントに合わせたメニューを提案できることも、給食室を自営するメリットです。
子どもの日や七夕、クリスマスやお正月など、季節の行事・イベントに合ったメニューに柔軟に対応できます。
給食はもちろん、おやつメニューなどもこだわることができるので「行事・イベントをさらに盛り上げたたい」「より季節感を感じさせるメニューを提案したい」という園に最適でしょう。
保育園が給食室を自営するデメリット
前項で解説したように、給食室を自営すると、柔軟にメニューを提案できたり、コミュニケーションがとりやすくなったりしますが、デメリットがないわけではありません。
- 保育園側の業務量が増える
- 人員コストがかかる
自営する際の注意点として、チェックしていきましょう。
保育園が給食室を自営するデメリット①
保育園側の業務量が増える
給食室まで自営するとなると、当然、保育園側の業務量は増えます。
さしあたって必要なのは、給食を調理する「調理師」や給食の献立を決める「栄養士」ですから、これらの人を採用しなければなりません。
求人や面接などの採用業務は、それなりの負担になります。
また、それらの人の管理や、食事の衛生管理・品質管理の責任を負うことになるので、体制が整っていない保育園では給食室の自営は難しいでしょう。
保育園が給食室を自営するデメリット②
人員コストがかかる
調理師・栄養士を採用すると、人件費もそれだけかかります。
毎月の給与はもちろん、福利厚生やボーナスなども支給しますから、経営が安定していない保育園では何人も給食スタッフを雇用するのは困難でしょう。
保育園が給食室を委託するメリット
次に、給食室を委託するメリットについて解説します。
- 給食のクオリティが安定している
- 安全・衛生管理体制が整っている
- 保育園側の業務負担を軽減
自営との違いに注目しながら、委託の魅力についてチェックしていきましょう。
保育園が給食室を委託するメリット①
給食のクオリティが安定している
給食委託会社は、保育園だけでなくそのほか福祉施設や病院など、さまざまな施設で給食を提供している給食のプロフェッショナルです。
しっかりしたマニュアルをもとに調理を進めるので、給食のクオリティが安定しています。
保育園が給食室を委託するメリット②
安全・衛生管理体制が整っている
安全・衛生管理体制が整っていることも、給食委託会社ならではです。
この管理体制には、2021年6月から義務化された、食品等事業者を対象とした管理手法「HACCP(ハサップ)」が関係しています。
HACCPとは、食品等事業者が食材の仕入れ~出荷など、食中毒菌汚染・異物混入などが起こり得そうな工程の中で、安全性を確保する衛生管理の手法です。
HACCPは国際的に認められた手法で、子どもの安全を守るという意味では非常に心強いものです。
保育園が給食室を委託するメリット①
保育園側の業務負担を軽減
給食を外部に委託すれば、保育園側が調理師・栄養士を直接雇用したり、人材育成・安全・衛生管理などに時間を割いたりする必要はありません。
また、給食委託会社では食材の仕入れや給食の調理だけでなく、配膳までを担当するので、保育士は子どもの食事介助に集中できます。
給食委託会社の中には食育指導に力を入れている会社もあり、箸の持ち方の練習になるような食事を提供してくれるところもあります。
保育園が給食室を委託するデメリット
安全・衛生管理体制の整備、保育園側の業務負担の軽減といったメリットがある給食委託会社ですが、以下のような注意点もあります。
- 保育園・給食委託会社でコミュニケーションがとりづらい
- 委託会社によっては柔軟な対応が難しい
それでは、詳しくチェックしていきましょう。
保育園が給食室を委託するデメリット①
保育園・給食委託会社でコミュニケーションがとりづらい
給食室を自営する場合は、給食スタッフが施設内にいるので、保育士や保護者ともコミュニケーションがとりやすく、子どもとも距離が近いですが、給食を委託する場合、特に給食委託会社が所有する調理施設で給食を作る場合は、自営ほど現場とのコミュニケーションがとりやすくありません。
そのため、指示や伝達が上手く伝わらなかったり、コミュニケーションで齟齬が生まれてしまったりすることがあります。
保育園が給食室を委託するデメリット②
委託会社によっては柔軟な対応が難しい
委託する場合は、現場の意見が反映されるまでに時間がかかってしまいます。
給食委託会社では基本的にマニュアルや厳選なチェックをもとに、給食を提供しているので、保育園の要望がすべて通るとは限らないのです。
保育園側からの急な変更や細やかな指示などが通らないこともあるでしょう。
特に、給食委託会社が所有する調理施設で給食を作る場合は、保育園の子どもたちの様子を把握しにくく、子ども一人ひとりに合わせたて対応するのが難しいというのが現状です。
保育園が給食室を委託するときの会社の選び方
給食委託会社を選ぶときのポイントは、以下の2つです。
- アレルギーに対応しているか
- 食育指導に対応しているか
ポイントを押さえて、保育園に合った委託先を選んでくださいね。
給食委託会社の選び方①
アレルギーに対応しているか
保育園に通う子どもの中には、食物アレルギーを持つ子どもがいます。
給食を委託する場合は、以下の項目に対応している会社を選びましょう。
- 献立にアレルゲン表示がある
- アレルゲンを除いた場合、代替の食事を用意できる
- ほかの子どもの容器とは別に、アレルギー持ちの子どもの容器を用意できる
また、誤配を防止する対策を徹底しているかどうかということも重要なポイントです。
給食委託会社の選び方②
食育指導に対応しているか
子どもの発達段階に合ったメニューや、箸の持ち方の練習になるようなメニューを提供するといった食育指導に力を入れているかどうかも、委託先を選ぶ際のポイントです。
中には、親子クッキングや菜園活動といったイベントを保育園と協力して実施する給食委託会社もあるので、その点も踏まえて委託先を決めましょう。
給食室の自営・委託両方のメリット・デメリットを知ろう
保育園が給食室を自営するパターンでは、柔軟なメニュー提案、コミュニケーションのとりやすさといったメリットがあります。
一方、委託するパターンでは安全・衛生管理体制の整備、保育園側の業務負担の軽減などの魅力があります。
それぞれの魅力や注意点を配慮した上で、自園に合った運営方法を選びましょう。
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